この記事でわかること
- シャドーITの定義:シャドーITとは、企業や管理部門が把握していない、従業員が独自に業務に活用するIT機器・サービス・システムのこと。
- 潜むリスク:セキュリティ面や法規制の面でリスクがあり、実際に国内での被害事例もある。
- 有効な対策:社内IT環境の整備、ルール策定、従業員教育、ソリューション活用などが有効。
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急速に進むDXや生成AIの登場によって複雑化する企業のIT環境を踏まえ、近年重要性が増すセキュリティトレンド「ゼロトラスト」の基本と「生成AIとそのリスク」を中心に、今の時代に必要なセキュリティ対策をわかりやすくまとめています。
「シャドーIT」とは、企業や管理部門の許可を得ずに、従業員が独自にIT機器やクラウドサービス・システムを業務に利用する行為を指します。
近年デバイスやクラウドサービスが普及したことなどを背景に、多くの企業でシャドーITが発生しています。
企業や管理部門が把握できないシャドーITは、情報漏えいなどの深刻なセキュリティリスクにつながる恐れがあることに注意しなければなりません。
本記事では、シャドーITの定義を整理したうえで、企業が直面するリスクや実際の被害事例、さらに実務に活かせる具体的な対策方法についてわかりやすく解説します。
シャドーITとは?

「シャドーIT」とは、企業や管理部門(情報システム部門やセキュリティ部門)の管轄外で、従業員が独断で業務に利用するIT機器やクラウドサービス・システムのことです。
従業員個人の判断で利用しているものだけでなく、部門やチーム単位で独自に採用されているITツールなどもシャドーITに含まれます。
通常であれば、IT機器やクラウドサービス・システムは、企業や管理部門が認可したものが業務に利用されます。
業務利用のIT機器やクラウドサービス・システムは、セキュリティポリシーに基づき、企業や管理部門が利用状況を把握したうえで管理すべき対象だからです。
しかし、現場のニーズの高まりやクラウドサービス導入の手軽さなどにより、シャドーITが常態化している企業も少なくありません。
シャドーITの厄介な点は、「リモートワークをするために個人のクラウドストレージで資料を共有する」など、従業員が悪意なく利用してしまうケースがあることです。
従業員個人やチームにとっては些細な工夫のつもりでも、企業の管理から外れている時点でシャドーITによるセキュリティリスクが高まります。
反対に、企業や管理部門が利用を許可しているIT機器やクラウドサービス・システムは「サンクションIT」と呼ばれます。
シャドーITとBYODの違い
シャドーITと混同を招きやすい用語に「BYOD:Bring Your Own Device」があります。
どちらも「従業員が私物のIT機器やクラウドサービスを業務で利用する」という点では共通する部分もありますが、大きな違いは企業や管理部門がその利用を把握・承認しているかどうかです。
BYODは、従業員が所有するスマートフォンやノートパソコンといった私物デバイスの業務利用を、企業や管理部門が正式に認めている運用形態です。
多くの場合、利用ルールやセキュリティポリシーが定められ、MDM(Mobile Device Management)などの管理ツールによって、端末管理や情報漏えいを防ぐためのセキュリティ対策がされています。
一方シャドーITは、従業員が個人の判断で利用しているものであり、企業や管理部門に把握・承認されていないことが特徴です。
たとえBYODとして私物端末の業務利用が許可されていても、その端末上で未承認のアプリケーションやクラウドサービスを使えば、それはシャドーITに該当してしまいます。
シャドーITの具体例
シャドーITの具体例は以下のとおりです。
- 従業員個人が保有するデバイス
パソコン、スマートフォン、タブレット、USBメモリ など - 個人向けまたは企業が未承認のチャットコミュニケーションツール
LINE、Facebook Messenger、WhatsApp 、Chatwork、Slackなど - 企業が未承認のWeb会議ツール
Zoom、Google Meet、Teams[個人契約] など - 企業が未承認の業務効率化ツール・アプリケーション
タスク管理ツール、メモアプリ、オンラインホワイトボード など - 個人アカウントで利用するSaaS・業務システム
CRM、MAツール、フォーム作成サービスなど - 企業が未承認のファイル共有・転送サービス
オンラインファイル転送サービス、URL共有型ストレージ など - 個人向けクラウドストレージ
Dropbox、Google Drive、OneDrive[個人用] など - 未承認のネットワーク
カフェ・ホテル・空港などのフリーWi-Fiへの接続 - 生成AI・AIツール
業務データを入力したAIチャット、文章生成ツール など
具体例を見ると、シャドーITは特別なITスキルがなくても、日常業務の延長で利用しやすい傾向にあることがわかるでしょう。
また、近年では、従業員が企業や管理部門の許可を得ずに生成AIやAIツールを導入し、業務に活用する「シャドーAI」という言葉も出てきています。
これは、主に企業の生成AIツール導入の遅れなどが原因で発生します。
企業や管理部門の管轄外で、十分な知識のない従業員が生成AIやAIツールを利用すると、企業情報や機密情報がAIに学習されてしまうリスクがあることに注意しなければなりません。
シャドーITが発生する要因
シャドーITが発生する要因は、IT環境や働き方の変化、企業側の方針など複数あります。
主な要因は以下の3つです。
デバイスやクラウドサービスの普及
スマートフォンやタブレットなどのデバイスに加え、SaaSをはじめとするクラウドサービスの普及により、従来と比べて誰でも容易にIT機器やクラウドサービスを導入・利用できるようになりました。
その結果、企業や管理部門の承認を得ずにクラウドサービスなどを使い始めてしまうケースが増えています。
企業のIT環境・運用体制の整備不足
シャドーITは、従業員だけの問題ではなく、企業のITの提供スピードや柔軟性が追いついていない結果として発生している側面もあります。
業務効率化に必要なIT機器やクラウドサービス、各種システムが社内に用意されていない、利用申請に時間や工数がかかるといったケースでは、企業と従業員の間にギャップが生まれやすくなるのです。
リモートワークなど働き方の多様化
近年リモートワークやフレックスタイム制などが普及し、働き方が多様化したことも要因のひとつです。
従業員が自宅や社外で働く際に「働きやすさの追求の一環」として、独自な判断でクラウドサービスやシステムを導入しやすくなりました。
中には、従業員自身に十分なリテラシーがないまま導入してしまうケースも見受けられます。
シャドーITが企業に与えるリスク

シャドーITは、セキュリティ対策や運用ルールが施されていないため、セキュリティ面などのリスクが高まります。
また、企業や管理部門が管理・把握できていないことから、万が一シャドーITによるインシデントが発生した場合、原因特定や初動対応が遅れてしまう可能性もあるでしょう。
ここでは、シャドーITが企業に与える代表的なリスクを4つ見ていきます。
機密情報の漏えいリスク
シャドーITには、企業の機密情報や個人情報が外部に漏えいするリスクがあります。
企業や管理部門が把握していないIT機器やクラウドサービス・システムは、企業の定めるセキュリティポリシーに適合していない可能性があるためです。
例えば、従業員が業務ファイルを個人契約のクラウドストレージにアップロードしている場合、そのサービスから情報漏えいが発生しても、企業は状況を把握できません。
また、従業員の退職後も放置され、外部にデータが残り続けてしまうケースも考えられます。
不正アクセスのリスク
シャドーITは、第三者による不正アクセスを受けやすく、企業情報が不正に閲覧・改ざん・持ち出されるリスクがあります。
理由は、企業や管理部門が把握していないクラウドサービスやアプリケーションでは、セキュリティ対策が不十分な恐れがあるためです。
仮に従業員が多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)やアクセス制御、ログ監視などの認証・管理機能が十分に設定されていないサービスを利用していた場合、アカウントの乗っ取りで、悪意のある第三者に企業情報が窃取されてしまうかもしれません。
マルウェアの感染・拡大のリスク
シャドーITは、マルウェアに感染するだけでなく、社内ネットワーク全体へ被害を拡大させるリスクもはらんでいます。
企業や管理部門が把握していないITアプリケーションやクラウドサービス、私物のIT機器では、ウイルス対策ソフトの導入状況やセキュリティアップデートの適用状況が不明確になりがちです。
特に無料アプリケーションや非公式なサービスには、最初からマルウェアが仕込まれているケースも存在します。
こうした危険なアプリケーションやサービスだと知らずにインストールし、従業員の業務パソコンや私物のIT機器がマルウェアに感染する可能性に注意が必要です。
マルウェアは、社内LANやVPN経由で社内ネットワークにまで侵入・拡散する恐れがあります。
コンプライアンス違反のリスク
シャドーITを放置すると、従業員が企業の意図しない形で法令や社内規定に違反し、コンプライアンス上の問題に発展するリスクがあります。
前述のとおり、シャドーITは企業や管理部門の管轄外で利用されることから、使い方が適切かどうかを企業が確認できません。
そのため、従業員が業務を効率化するつもりでとった行動が、結果的に法令や社内ルール違反になってしまうケースがあるのです。
身近な例では、業務を効率化しようとして生成AIサービスに個人情報や社外秘データを入力してしまうケースが挙げられます。
生成AIは入力データを学習に利用することがあるので利用には十分な注意が必要です。
安易に個人情報や機密情報を入力してしまうと情報の二次利用や第三者提供につながり、コンプライアンス違反と判断されるでしょう。
こうしたインシデントは、直接的な被害だけでなく、企業の信頼低下やブランド価値の毀損にもつながります。
シャドーITの被害事例
シャドーITはすでに国内でも被害が発生しています。
ここでは、報道などで明らかになっている事例の中から、シャドーITが原因と考えられるケースを2つ紹介します。
フリーメールアドレス利用によるデータへの不正アクセス
国内のある自治体(以下、団体A)では、職員が業務で個人のフリーメールアドレスを使用していたことをきっかけに、不正アクセスによる情報漏えいが発生しました。
団体Aの職員が、業務関連のデータを個人のフリーメールアカウントでやり取りしていたところ、警告メールにより被害が発覚。
アクセスログによってそのメールアカウントが第三者に不正ログインされていることがわかり、メールに保存されていた業務データや添付ファイルなどから、氏名や住所などの個人情報が漏えいした可能性があると公表されました。
団体Aは対象者への事情説明や謝罪、再発防止策の策定などを行いましたが、組織としてのガバナンスが疑問視される事象となりました。
クラウドサービス上の重要データの情報漏えい
国内のある大学病院(以下、医療機関A)では、管理部門が把握していないクラウドサービス上で患者情報が取り扱われ、個人情報が流出しています。
医療機関Aでは、医師が学外のクラウドサービスを利用して診療関連データを保存・共有していました。
しかし、フィッシング詐欺によってそのクラウドサービスのIDとパスワードが窃取され、医師がアクセスできなくなり、攻撃者にはデータの参照が可能になってしまったのです。
漏えいした可能性がある情報には、患者の氏名や診療に関する情報といった機微な個人情報が含まれており、医療機関Aは対象者への説明や謝罪、再発防止策を約束することとなりました。
【企業向け】シャドーITの対策方法

シャドーITは、単一かつ万能な解決方法が存在しないため、完全になくそうとするのではなく、「把握したうえで適切に管理する」という発想に切り替えて対策することが重要です。
また、組織の状況やIT成熟度に応じて、複数の対策を組み合わせて実施することも求められます。
ここからは、企業が取り組みやすく、効果の高い対策を解説します。
社内のIT環境の最適化
従業員の業務ニーズを踏まえて社内のIT環境を最適化すれば、シャドーITの抑制につながります。
シャドーITは「社内で使えるツールが不十分」「業務を進めにくい」といった不満をきっかけに生まれることもあるため、従業員が安全かつ快適に業務を進められるIT環境を事前に用意すること自体が、効果的なシャドーIT対策となるのです。
例えば、従業員に定期的な社内アンケートやヒアリングを実施し、「業務で不便に感じている点」や「現場で使用したいツール」などの情報を集めたうえで、適切な業務ツールやクラウドサービスを選定・導入する方法が挙げられます。
こうした取り組みにより、シャドーIT対策だけでなく、従業員に「会社に相談すれば、必要なツールやサービスを用意してもらえる」という安心感も与えられるでしょう。
社内ルールの策定
IT利用に関する社内ルールやガイドラインを明確に策定することも有効です。
新たなサービスやシステムを導入する際の判断基準や手続きが曖昧だと、従業員は「使って良いかわからないが、とりあえず使う」という行動をとる可能性があるためです。
あらかじめ利用可否や承認フローを明確にしておくことで、シャドーITの発生を未然に防ぎやすくなるでしょう。
効果的な取り組みとして、以下の施策が挙げられます。
- 新しいITツールを導入する際の申請・承認プロセスを明確化する
- 業務で利用可能な推奨ツール一覧やガイドラインを整備する
- ログ管理機能やアクセス制御など、セキュリティ要件を満たすツールのみを利用可とする
従業員への周知
シャドーIT対策では、従業員一人ひとりにシャドーITのリスクを正しく理解してもらうことが欠かせません。
多くの場合、シャドーITは、従業員の「業務を効率化したい」という善意を背景に自然に増えていきます。
そのため「なぜ危険なのか」「どのような影響が企業全体に及ぶのか」を従業員に理解してもらうことが、シャドーIT対策につながるのです。
具体的な取り組みとしては、以下がおすすめです。
- 定期的なセキュリティ研修や勉強会を実施する
- シャドーITが原因で発生した実際の事件・事故の事例を共有する
- 生成AIやクラウドサービス利用時の注意点をわかりやすく説明する
セキュリティソリューションによる利用状況管理
セキュリティソリューションの活用により、シャドーITの利用状況を可視化・管理しやすくなり、リスクを早期に把握・対処することにつながります。
ここでは、特に有効なソリューションをピックアップしてご紹介します。
IT資産管理ツール
IT資産管理ツールは、社内ネットワークに接続されているパソコンやサーバー、周辺機器などのIT資産を一元的に管理するためのツールです。
主な機能として、端末情報(OSやソフトウェア、利用状況)の把握、操作ログの取得、ソフトウェアのインストール状況管理などが挙げられます。
IT資産管理ツールの活用により、企業や管理部門の管理対象外のデバイスや未承認ソフトウェアの利用状況を把握しやすくなります。
<シャドーIT対策として期待できる効果>
- 操作ログや通信ログを確認できる
- 私物端末や未登録端末の社内ネットワークへの接続を検知できる
MDM(Mobile Device Management)
MDM(Mobile Device Management)は、業務用のスマートフォンやタブレットといったモバイル端末を、一括して管理・制御するためのソリューションです。
端末の登録・設定管理に加え、アプリケーションのインストールなどの制御、端末の利用制限、リモートロックやデータ消去といった機能を備えています。
<シャドーIT対策として期待できる効果>
- 許可していないアプリケーションのダウンロードや利用を制限できる
- モバイル端末を起点としたシャドーITの発生を防ぎやすくなる
- モバイル端末経由での情報漏えいや不正利用リスクを低減できる
CASB(Cloud Access Security Broker)
CASB(Cloud Access Security Broker)は、従業員が業務利用するクラウドサービスへのアクセスを可視化し、セキュリティポリシーに基づいて制御・監視するためのソリューションです。
利用状況の可視化をはじめ、コンプライアンス監視やデータセキュリティ、脅威の検知・防御などの機能が備えられており、クラウドサービスの利用状況を把握しながら、データの扱いやアクセス方法を管理できます。
<シャドーIT対策として期待できる効果>
- クラウドサービス(シャドーIT)の利用を検知・可視化できる
- 情報漏えいや不正利用といったクラウド特有のリスクを抑制できる
エンドポイントセキュリティ
エンドポイントセキュリティは、パソコンやスマートフォンなど、利用者が直接操作するデバイス(エンドポイント)を保護するためのセキュリティソリューションです。
代表的な仕組みとして、EPP(Endpoint Protection Platform)とEDR(Endpoint Detection and Response)があります。
EPPは、ウイルス対策や不正プログラムのブロックなど、脅威を事前に防御することを主な役割としています。
一方EDRは、端末上の挙動を継続的に監視し不審な動きを検知・分析したうえで、感染端末の隔離や脅威の駆除まで対応できることが特徴です。
シャドーITでは、管理外の端末やアプリケーションが攻撃の起点となりやすく、完全に利用を防ぐことも困難です。
そのため、エンドポイントセキュリティを導入しておけば、シャドーITによるマルウェア感染などの脅威からの最後の砦として、被害を最小限に抑えられるでしょう。
<シャドーIT対策として期待できる効果>
- マルウェア感染を検知してサイバー攻撃の被害を最小化できる
EPP/EDRは数多く存在し、製品によって機能などが異なります。エンドポイントセキュリティ製品の比較をしたい方は、以下の記事もご覧ください。
■関連記事:エンドポイントセキュリティ製品の比較9選(EPP/EDR)
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シャドーIT対策にはTD SYNNEXが取り扱う「Symantec CloudSOC」も有効
シャドーIT対策を実効性のあるものにするには、クラウドサービスの利用実態を把握し、安全に管理できる仕組みが欠かせません。
その有力な選択肢のひとつが、TD SYNNEXが取り扱う「Symantec CloudSOC」です。
Symantec CloudSOCは、Broadcomが提供するCASB(Cloud Access Security Broker)ソリューションであり、以下の機能を備えています。
- 従業員が利用しているクラウドアプリケーションの可視化(シャドーITの検知)
- 機密データの偶発的な損失や内部者の盗難防止
- リアルタイムでのポリシー違反検出と制御
TD SYNNEXでは、Symantec CloudSOCのライセンス提供だけでなく、導入支援や運用設計を含めたサポートを提供しています。
組織の規模や業務内容にあわせて最適な提案で、シャドーIT対策をサポートすることが可能です。詳細は下記ページをご覧ください。
まとめ

シャドーITは、業務効率化を目的とした従業員の善意の行動から生まれるケースもある一方で、情報漏えいや不正アクセス、コンプライアンス違反など企業にとって深刻なリスクになります。
対策としては、社内IT環境の整備やルール策定、従業員への周知徹底などが取り組みやすく効果的です。
さらに、IT資産管理やCASBなどのセキュリティソリューションを組み合わせることで多重防御を構築できるでしょう。
この機会に、社内でのシャドーIT対策を見直してみてはいかがでしょうか?もし、専門家のサポートが必要な場合は、お気軽にTD SYNNEXにご相談ください。