仮想サーバーとは?物理サーバーとの違いや仕組み、メリットを比較してご紹介

昨今、注目されているサーバーの仮想化。2020年にNTTデータがヴイエムウェアとタッグを組みコンテナ型を導入したほか、2021年にはNTTコミュニケーションズが仮想サーバーを災害及び地震対策に取り入れました。果たして、物理サーバーよりも仮想サーバーを使うべきなのか。今さら聞けない物理サーバーと仮想サーバーの違いや仕組み、メリットを比較しながら解説します。近年仮想サーバーを導入したNTTデータやNTTコミュニケーションズの事例について取り上げますので、ぜひ参考にしてください。

物理サーバーと仮想サーバーの違いとは?

物理サーバー:物理的な1台のサーバー
仮想サーバー:1台のハードウェア上に複数のサーバー環境を保有しているサーバー

さまざまなアプリケーションを動かし、インターネットを通してサービスを提供しているサーバーですが、近年は2種類の使い方が主流となっています。それは「物理サーバー」として使うか、それとも「仮想サーバー」として使うかです。まずは、この物理サーバーと仮想サーバーの使い方について違いを確認しましょう。

物理という名前の通り、物理サーバーにはシャーシという実体があり、サーバーの筐体を見たり触ったりできます。サーバーを購入後、にOSをインストールしてアプリケーションを構築し、その後に専用サーバーとして運用する基本的な使い方をするのが物理サーバーです。

これに対して仮想サーバーは、実体がないので見たり触ったりすることはできません。最初に物理サーバーにOSをインストール。その上に仮想化用のソフトウェアをインストールし、1台のシャーシに何台ものアプリケーションを構築して数台のサーバーとして運用します。

物理サーバーはCPUとメモリ、ストレージを1つのアプリケーションが独占して使用しますが、仮想サーバーはこれらのリソースをシェアしながら使用するものです。

物理サーバーと仮想サーバーの仕組みとは?

実態のある物理サーバーと、1台のサーバーを複数のサーバーとして利用する仮想サーバー。それぞれより詳しい仕組みについて解説しましょう。

物理サーバーの仕組みについて

物理サーバーの抑えて置きたい基本的なルール、そして基礎的な使い方についてご紹介します。

  • IU(1.75インチ)ラックマウントの標準規格について

一般的に広く使われている物理サーバーは「ラックマウントサーバー」と呼び、サーバーラックと呼ばれる専用の棚に取り付けて運用します。なお、このラックは米国電子工業会(Electronic Industries Alliance)によって19インチと標準化されています。これは、データセンターのラックのサイズが実はどれも同じで、常に整列されているのはこの規格によるためです。

ラックに取り付けるサーバーの高さも、米国電子工業会によって標準化されています。1.75インチの高さを「1U」と呼び、サーバーのサイズは1Uのものから2U、4U…などU単位で増えます。サーバーラックは19インチなので、1Uのサーバーであれば計算上は42U、42台のサーバーが収容可能です。ただしサーバーを密着して設置し過ぎると、温度上昇の問題が発生してしまうかもしれません。また、各ラックの電源使用量は予め決められているので、必ずしも42台のサーバーが設置できるわけではありません。

  • 「専用サーバー」と「共用サーバー」について

物理サーバーは「専用サーバー」として使うか、「共用サーバー」として使うかという2種類の方法があります。専用サーバーは1ユーザーがサーバーを貸切って使うのに対し、共用サーバーは複数のユーザーで1台のサーバーを共有して使用。共用サーバーはレンタルして使用するケースが多いので、共用サーバー=レンタルサーバーのイメージが強い方も多いでしょう。1台の物理サーバーを複数のユーザーがシェアするという点で、仮想サーバーと同じと勘違いしているかもしれません。しかし実際のところ、物理サーバーの「共用サーバー」と「仮想サーバー」は異なります。

仮想サーバーはホストOSごとにゲストOSがあるのに対し、共用サーバーは一つのOSしかありません。CPUやメモリなどもそれぞれのユーザーに割り当てられているわけではないので、共用サーバーは他のユーザーが障害などを起こした場合、その影響を受けて動作が重くなってしまいます。シンプルに言えば、共用サーバーは一昔前の使い方、仮想サーバーは共用サーバーの悪いところを改善した新しい使い方なのです。

仮想サーバーの仕組みについて

昨今、サーバーは物理サーバーとしてではなく、仮想サーバーとして使用する企業が圧倒的に増えています。なぜサーバーを仮想化したがるのか、仮想サーバーの仕組みについてご紹介しましょう。

仮想サーバーは1台の物理サーバー上で複数のOSを動かし、複数のサーバーとして動かす技術のこと。CPUやメモリは作った複数の仮想サーバーでシェアします。仮想サーバーの技術は1960年代から使われ始め、クラウドサービスの人気が普及すると供に再度脚光を浴びるようになりました。

仮想サーバーはオンプレミスで物理サーバー上に構築したり、クラウドサービスと抱き合わせで企業と契約したりする方法があります。仮想サーバーを導入すれば、ハードウェアの台数を増やすことなく新しいサーバーの構築が可能です。

物理サーバーを仮想化する技術には、「ホストOS型」「ハイパーバイザー型」「コンテナ型」という3つの方法があります。ここで、それぞれの特徴についてご紹介しましょう。

  • ホストOS型

WindowsやLinuxなどのOSがインストールされた物理サーバー上に仮想化ソフトウェアをインストールして、複数のサーバーを構築する方法がホストOS型です。物理サーバーにインストールされたOSを「ホストOS」、仮想サーバー上で動くOSを「ゲストOS」と呼びます。アプリケーションのような手軽さで仮想サーバーを構築したり運用したりできるのがメリット、ただし、2つのOSが同時に動くため、処理速度が出にくい特徴があります。

  • ハイパーバイザー型

ハードウェアに直接仮想化ソフトウェアをインストールし、仮想マシンを動作させる方法をハイパーバイザー型と呼びます。物理サーバーにインストールしたOSではなく、ソフトウェアのOSを直接使うのが特徴。ハイパーバイザー型は2種類のOSを同時に動かさないため、高速処理が可能です。しかし、ハイパーバイザー型はハイパーバイザー型対応のサーバーを使用する必要があります。そのため、既存のサーバーに設置できないケースがある点に注意してください。

  • コンテナ型

仮想サーバーの普及が進むにつれて、ホストOS型やハイパーバイザー型に続き、第三の方法が人気を集めるようになっていきました。それが「コンテナ型」です。コンテナ型は物理サーバーにコンテナエンジンという仮想化ソフトウェアをインストールし、そこにコンテナと呼ばれるスペースを構築する方法。ホストOS型やハイパーバイザー型とは大きく仕組みが異なります。

コンテナ型は仮想化ソフトウェアをインストールし、コンテナという箱(アプリケーション実行環境)を作成します。コンテナにはホストOSが存在しますが、ホストOS型のようなゲストOSという概念はありません。各コンテナでゲストOSを操作せずに済むので起動時間や処理速度が速く、1台のサーバーで多くのコンテナが構築できる使いやすさが魅力です。

近年、大企業がインフラを再整備する際に、このコンテナ型を導入する事例が増えてきました。コンテナ型とクラウドやエッジなどを組み合わせて、それぞれの環境に合ったやり方をカスタマイズしながら仮想サーバーを導入しています。

物理サーバーをなぜ仮想化して使うようになったのか?

そもそも、なぜ物理サーバーを仮想サーバーとして使うようになったのでしょうか。最初はサーバーに余っている使い切れていないリソースを有効活用できないかということで、仮想サーバーが使われるようになったといわれています。しかし、実際に物理サーバーを仮想サーバーとして運用してみると、予想以上にさまざまなメリットが出てきました。

物理サーバーと仮想サーバーそれぞれのメリットとは?

物理サーバーと仮想サーバーで比べると、近年は圧倒的に仮想サーバーの数が増えています。とはいえ、企業の環境によってどちらが合うかは比較すべき要素です。それぞれのメリットを比較してみましょう。

物理サーバーのメリット

  • 処理が高速

物理サーバーはOSを二重にしたり、間に余計な処理を挟んだりしないため、サーバー内の各処理は仮想サーバーよりもスムーズです。CPUやメモリへのアクセス速度、パフォーマンスは仮想サーバーよりも物理サーバーの方が有利といえるでしょう。ただし、サーバーの性能によっては影響がない場合もあります。

  • 障害が起きた時に影響箇所を特定しやすい

障害が発生した場合、物理サーバーは問題箇所の特定や影響範囲が切り分けしやすいメリットがあります。仮想サーバーだと、どこに問題があるのか確認するポイントが多いのですが、物理サーバーは障害アラームを検知した時点でどこに問題があるか発見できます。

  • 障害をおこした時の影響範囲が狭い

サーバーに障害が起きた際、物理サーバーなら1つのアプリケーションだけ影響が及びます。しかし仮想サーバーの場合は、複数のサーバーやアプリケーションに影響が出てしまう可能性があるでしょう。物理サーバーは、影響範囲を限定できるというメリットがあるのです。

仮想サーバーのメリット

サーバーを仮想化する技術は、1960年代から始まりました。しかし、仮想サーバーが本格的に使われ始めたのは、クラウドやIOTが普及しオンプレミス以外の選択肢が増えてからでしょう。今ではすっかり主流になりつつある仮想サーバー。導入するなら自社で仮想サーバーを構築するのか、それとも仮想サーバーとクラウドを組み合わせてベンダーに構築と運用を任せるのがいいのか、仮想サーバーを使うメリットについてご紹介します。

  • サーバー台数の集約

物理サーバーを仮想化すると、1台のシャーシの中に複数のサーバーを構築可能です。仮想化すればサーバーの台数を集約できるので、購入するサーバーの台数が減らせる上、ラックの場所が節約できるメリットがあります。

  • 運用の効率化

物理サーバーを一つの用途で使うと、どうしてもリソースが余りやすくなってしまうでしょう。しかし仮想サーバーなら複数のサーバーでリソースがシェアできるため、リソースを余すことなく有効利用できます。また、仮想サーバーにすると複数のサーバーを1台のシャーシで管理できるので、保守運用の手間やコストが抑えられます。

  • 最新のサーバーで既存アプリケーションを稼働

サーバーをリプレイスする再、確認しなければならないのが新しいサーバーでも既存のアプリケーションが動くかどうかです。しかし、仮想サーバーなら複数のOSを並行して運用できるので、古いOSでしか動作しないアプリケーションを使っていても問題なく移行できます。このように、サーバーとアプリケーションの相性を気にせず移行作業できるのは大きなメリットです。

  • 災害発生時、遠隔地に素早くレプリケーションできる

昨今、地震や自然災害の多い日本では「BCP(Business Continuity Plan)」対策も注目を集めています。いつ、何が起きるか分からない事態のために準備しておくこと。仮想サーバーならバックアップではなく、万が一稼働系に障害が発生したときにも、待機系に切り替えるだけで業務が継続できるレプリケーションが可能です。

仮想サーバーはOSやメモリ、CPUを含むすべてのデータをファイルで管理できます。非常事態が発生した場合には、このファイルを活用して短時間で復旧できるのです。仮想サーバーには、運用や障害が発生したときの対応が難しいというイメージをお持ちの方が多いかもしれません。」しかし、実際にはオートメーション化が進んだことで扱いやすく、問題が起きた際にも即時に復旧できるようになっています。

このようにメリットの多い仮想サーバーですが、実際にはどんな企業が導入しているのでしょうか。ここでは、2020年9月にNTTデータが行った仮想化の例をご紹介します。

2020年9月、NTTデータは1万2000人が使う社内システムをKubernetesコンテナ基盤に移行したことを発表

NTTデータとヴイエムウェアは2020年9月7日、NTTデータがヴイエムウェアのKubernetesコンテナ管理基盤「VMware Tanzu Kubernetes Grid Integrated Edition(VMware TKGI)」を導入したことを発表しました。同時に、NTTデータは約14万人いる社員の社内システム及びモバイルデスクトップをクラウドネイティブに移行したと公表しています。

※139,700人(NTTデータグループ全体の社員数/2021年3月末現在)

※NTTデータ社員数の引用元:https://www.nttdata.com/jp/ja/about-us/profile/

仮想サーバー導入前のNTTデータでは、約14万人が利用していた社内システムがアクセスピーク時にスピードが落ちるなどの問題を抱えていました。解決できる手立てはないかと探していたところ、維持コストやメンテナンス性に優れていたKubernetesの導入と、アプリケーションのコンテナ化を選択したのです。

NTTデータはヴイエムウェアと移行方法について話し合う中で、既存のアプリケーションをコンテナ化する際にはマイクロサービスアーキテクチャに基づく再設計を行うこと、アプリケーションの各要素を細かく分けることによって運用と保守がしやすい体制を整えました。その結果、処理が高速になっただけでなく、今後のニーズに対応しやすい環境を手に入れたのです。

  • 2021年4月28日、NTTコミュニケーションズは仮想サーバーを災害及び地震対策に取り入れていることを紹介

2021年4月28日、NTTコミュニケーションズは「インフラ仮想化への取り組みと課題等について」というプレゼンを行い、既にインフラの仮想化が進んでいること、地震や災害発生時のサービス提供の維持・安定化を実現するための環境づくりに着手していることなどを紹介しました。NTTコミュニケーションズは近年、クラウドと組み合わせて仮想サーバーを導入し、各クラウドの位置を国・エリアごとに分散することで有事のリスクを軽減する設計に変更。仮想化やクラウドに加えてエッジを採用し、コストや処理性能をさらに向上させています。

そして自然災害対策を強化し、有事発生時には物理作業を伴わなくてもできる限り自動で復旧できる環境を整えたり、将来を見据えた需要や環境に合わせた運用の自動化、災害が発生する予兆を検知する仕組みを導入したりしています。

NTTコミュニケーションズのような素晴らしい取り組みを実現するには、サーバーの仮想化、クラウド、エッジ、オンプレミスというすべての要素を上手く組み合わせることが重要です。物理サーバーだけ、あるいは仮想サーバーだけの時代は、すでに終わりを迎えているのかもしれません。

近年、NTTコミュニケーションズが実際に直面した自然災害による被害は次の通りです。いつ、どんなことが起きるか分からない日本。仮想サーバー導入による素早いレプリケーションは、用意しておくに越したことはないのでしょう。

(画像引用元:https://www.soumu.go.jp/main_content/000747868.pdf

まとめ

物理サーバーは処理能力の高さ、障害発生時の切り分けのし易さという点で、確かに魅力的なものと言えるでしょう。しかしオンプレミスや仮想サーバー、クラウド、エッジを上手く使い分け、それぞれの会社に合ったベストな方法を選択すれば、より鬼に金棒なのかもしれません。最新のサーバーを購入して仮想サーバーを導入する、有事が起きる前に環境を整えておくことが、企業の将来性に繋がりそうです。

[筆者プロフィール]

山本綾香|フリーランスライター

東京都世田谷生まれ、世田谷育ち。NTTデータ東京SMS・JCOMにてシステムエンジニアを約6年間経験。その後、日本学術振興会にてノーベル賞を受賞した諸先生方の秘書を経て、SymantecソウルにてQA(課長)を約1年11ヶ月経験。現在はフリーランス(ライター)として、ソウル・シンガポール・東京を行き来する生活を送りながら活動しています。趣味は年数回の旅行。愛犬はミニチュアダックスフンド。

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