この記事でわかること


  • 標的型攻撃メールの定義:機密情報の窃取や業務妨害などを目的に、特定の企業や組織を狙う攻撃メールのこと。
  • 注意点や被害リスク:巧妙な手口が使われるため、メール受信者が攻撃を受けていることに気づきにくく、企業の機密情報の窃取や漏えいなどの被害リスクがある。
  • 対策のポイント:社員教育による「人的対策」と、システムやツールによる「技術的対策」で多層防御を行うことが重要。

変化する脅威に備えるためのセキュリティ対策ガイド

サイバー攻撃の手口が巧妙化するなか、従来の境界型防御だけでは十分とはいえません。本資料では、ゼロトラストの基本概念や生成AI利用時のリスク管理など、現代の企業に求められるセキュリティ対策のポイントを解説しています。

標的型攻撃メールとは、機密情報の窃取などを目的に、特定の企業や組織を狙って送信される攻撃メールのことです。
攻撃者は取引先や公的機関などになりすまし、メールの受信者が疑いにくいような巧妙な手口で攻撃を仕掛けてきます。

被害を防ぐには、システムやツールによる技術的対策に加えて、社員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることが重要です。

本記事では、標的型攻撃メールの基本情報や実際の事件事例をはじめ、見分け方や具体的な対策方法までわかりやすく解説します。

標的型攻撃メールとは?

標的型攻撃メールとは、機密情報の窃取やマルウェア感染、業務妨害などを目的に、特定の企業や組織を狙って送信する攻撃手法です。

攻撃者は、メールの添付ファイルや本文中のリンクにウイルスを仕込みます。近年では、大企業や官公庁に限らず、中小企業や自治体、各種団体が標的となるケースも発生しています。

このような標的型攻撃メールによる被害は、システム侵害や情報漏えいにとどまらず、情報窃取を起点とした金銭的被害へと発展するリスクもあります。

ひとたび攻撃を受けると、事業の継続に支障をきたすだけでなく、企業や組織の社会的信用に大きな影響を及ぼす可能性がある点に注意しなければなりません。

IPA(情報処理推進機構)が公表している「情報セキュリティ10大脅威 2025」では、「機密情報等を狙った標的型攻撃」が第5位にランクインしています。
このことからも、標的型攻撃メールは企業や組織が特に注視すべき脅威だと言えるでしょう。

標的型攻撃メールの手口

標的型攻撃メールの代表的な手口は以下のとおりです。

標的型攻撃メールの手口詳細
取引先を装う手口・実在する取引先や担当者になりすます
・契約内容の確認、請求書の送付、支払いなどに関する連絡を装う
・添付ファイルやリンクを開かせ、情報窃取やマルウェア感染を狙う
顧客を装う手口・見込み客や既存顧客を名乗る
・「資料を確認したい」「詳細を教えてほしい」といった自然な文面で、商材やサービスに関する問い合わせをする
・添付ファイルやURLにマルウェアが仕込まれている場合がある
上司や同僚を装う手口・社内の上司や同僚になりすます
・業務連絡を装う
・「至急確認してほしい」「会議前に見ておいてほしい」など、緊急性を強調する
・マルウェアを仕込んだ添付ファイルやURLを開かせることが目的
政府・公的機関を装う手口・官公庁や公的機関になりすます
・手続きや制度変更に関する連絡を装う
・税金、助成金、申請期限などを理由に対応を急がせる
・不正サイトへの誘導や情報入力を狙うケースが一般的

標的型攻撃メールの攻撃者は、無差別にメールを送るのではなく、あらかじめ明確な標的を定めています。
そのうえで、標的となる企業や社員について事前に情報収集を行い、実在する企業名や取引内容、業務のやり取りを巧みに利用して、正規の連絡であるかのように偽装してきます。

また、攻撃は一度きりではなく、複数回にわたってメールのやり取りを重ね、相手に安心感や信頼感を持たせてから攻撃を仕掛けるケースもあることに注意が必要です。

標的型攻撃メールは、一般的に次のような流れで行われます。

  1. 攻撃メールの送信
    攻撃者が、標的とする企業の社員に向けて標的型攻撃メールを送信します。
  2. マルウェア感染
    社員がメールに添付された悪意のあるファイルや本文中のURLを開き、端末がマルウェアに感染します。
  3. 情報の窃取
    攻撃者はマルウェアを経由して社内システムに侵入し、企業の機密情報を窃取します。

社員自身が攻撃の被害に遭っていることに気づきにくく、早期発見も難しいため、結果として被害が拡大しやすくなります。

ランサムウェアとの違い

標的型攻撃メールと同様に、特定の組織を狙う攻撃手法のひとつに「ランサムウェア」が挙げられますが、両者は目的や特徴に違いがあります。

ランサムウェアはマルウェアの一種で、端末やサーバー内のデータを暗号化したり、システムをロックしたりすることで業務を停止させ、データの復旧やロック解除と引き換えに身代金を要求する点が大きな特徴です。

また、ランサムウェアの感染経路はメールに限らず、USBや悪意ある広告、ネットワーク機器の脆弱性など多岐にわたる点も、標的型攻撃メールとの違いです。

ランサムウェアの詳細や近年の動向についてはこちらの記事をご覧ください。

標的型攻撃メールの見分け方・社員教育のポイント

標的型攻撃メールは巧妙に作成されるため、社員一人ひとりが当事者意識を持ち、通常の業務メールとの違いを見分けられるようにしておくことが重要です。

ここでは、標的型攻撃メールの例とあわせて、見分ける際のポイントを紹介します。
社員への教育やセキュリティ意識の向上にお役立てください。

社員教育用:標的型攻撃メールの例

標的型攻撃メールの例は以下のとおりです。

標的型攻撃メールの例

標的型攻撃メールは、実在する取引先を装って送られてくる場合も多く、一見すると正規の業務メールとの区別がつきにくい特徴があります。
そのため、たとえ正規のメールに見えたとしても安易に信用せず、次に挙げるポイントを一つひとつ確認することが大切です。

差出人が不自然

差出人が以下に当てはまる場合は、特に注意が必要です。

  • 差出人に見覚えがない
  • 差出人をインターネットで検索しても、実在が確認できない
  • 差出人が実在していても、メールに記載されている住所や電話番号が公式サイトの情報と異なる

また、しばらくやり取りのなかった取引先から突然届いたメールや、公的機関を名乗る連絡についても、安易に信用せず警戒することを推奨します。

送信元のアドレスが詐称されている/フリーメールアドレス

送信元のメールアドレスを確認して見分ける方法もあります。
ただし、表示されている差出人名やドメインが正規のものであっても、実際にはメールアドレスが詐称されているケースがあるため、見た目だけで安全だと判断するのは危険です。

そのような場合には、メールが正規の送信元から送られてきたものかを判別する「送信ドメイン認証(SPF:Sender Policy Framework)」の活用が有効です。
認証の結果が、なりすましメールかどうかを判断する手がかりになります。

また、送信元がフリーメールアドレスの場合にも注意が必要です。
通常、企業や公的機関が使用するメールアドレスは独自ドメインで運用されており、業務連絡にフリーメールが使われるケースは多くありません。

こうした点も踏まえ、送信元アドレスの信頼性を慎重に確認しましょう。

件名や本文に違和感がある

メールの件名や本文に違和感がある場合も、標的型攻撃メールを見分ける重要な手がかりとなります。
件名に「緊急」「至急」といった文言が含まれている、本文の日本語表現が不自然、文字化けが見られるといった場合は特に注意しましょう。

また、業務連絡や各種手続きに関する内容だとしても、本来の業務フローと異なるタイミングで送られてきたり、宛先が不自然であったりする場合は、安易に信用すべきではありません。
ウイルスを仕込んだ添付ファイルやURLを開かせることを目的に、受信者の判断を急かすような表現が使われているケースも考えられるため、冷静に内容を確認することが重要です。

不審な添付ファイルがある

添付ファイルの種類にも注目しましょう。「.exe」や「.scr」といった実行形式のファイルをはじめ、圧縮形式のファイル「.zip」やショートカットファイル「.lnk」には、ウイルスが仕込まれている可能性があります。
業務上見慣れない形式のファイルが添付されている場合は、安易に開封しないようにしましょう。

あわせて、ファイルサイズが不自然に大きすぎないか、アイコンと実際の拡張子が一致しているかなども確認することが重要です。
拡張子やアイコンを偽装し、正規のファイルに見せかけているケースもあるため、細かな点まで注意を払うことが被害防止につながります。

URLが偽装されている

HTMLメールは、表示されている文字列を装飾し、URLをテキストやボタンに置き換えることが可能です。
その結果、画面上に表示されているURLと、実際にクリックした際のリンク先URLが異なるケースも少なくありません。

また、URL短縮サービスが利用されている場合も、遷移先を一目で判断することが難しくなります。
リンクをクリックする前に、URLをコピーして遷移先を確認し、ドメイン名やリンク先が正規のものかを見極めることが重要です。

標的型攻撃メールの事件事例

ここでは、実際に発生した標的型攻撃メールの事件事例を2つ紹介します。
いずれも、日常的な業務メールをきっかけに被害が拡大したケースであり、どの企業・組織にとっても他人事ではない事例です。

マルウェア感染による情報窃取・情報漏えい

団体Aでは、標的型攻撃メールを契機とする情報セキュリティ事案が発生しました。
専門家による調査の結果、2022年7月に在宅勤務中の職員が受信した標的型攻撃メールを起点としてマルウェアに感染していたことが判明。
2023年5月にはパソコン内で情報窃取の痕跡が確認されました。

この攻撃により、団体Aが保有していた個人情報や内部データなど、合計数千件の情報が外部に流出した可能性があります。
団体Aは、謝罪および経緯の説明などの対応を行っており、重大なセキュリティインシデントとなりました。

メールアカウント乗っ取りによる標的型攻撃メール送信

国内企業A社では、社員のメールアカウントが乗っ取られ、当該アカウントを踏み台として外部に標的型攻撃メールが送信される事案が発生しました。
2024年9月、A社の社員が取引先を装った標的型攻撃メールに含まれるURLをクリックし、遷移先でIDとパスワードを入力したことが発端です。
このフィッシング行為により、攻撃者に社員のサインイン情報が窃取されたことが確認されています。

当該アカウントは2024年10月に不正利用され、約900通以上の標的型攻撃メールがA社の顧客宛てに送信されたことが判明しました。
これらのメールは、攻撃者が窃取したアカウントを悪用して送信されたもので、外部に対して標的型攻撃が拡散した形となっています。

企業が取るべき標的型攻撃メールへの人的・技術的対策

標的型攻撃メールへの対策では、セキュリティ製品の導入といった「技術的対策」だけでなく、社員教育をはじめとする「人的対策」をあわせて実施することが重要です。

こうした事前対策を十分に行っておくことで、万が一攻撃を受けた際に、被害を最小限に抑えることにつながります。
ここでは、人的対策と技術的対策の観点から、標的型攻撃メールに対する具体的な対策ポイントをわかりやすく解説します。

標的型攻撃メールへの人的対策

人的対策においては、社員を含め社内全体のセキュリティ意識を高めることが大切です。

セキュリティルールの策定・徹底

業務でメールを扱う際のセキュリティルールを定めておくことで、標的型攻撃メールによる被害の防止につながります。
ただし、ルールを策定するだけでは不十分なため、社員が日常業務の中で確実に実践できる仕組みを構築しましょう。

標的型攻撃メールに対応するための、セキュリティルールの例は以下のとおりです。

  1. メール受信時の確認ルール(チェックリスト)
    – 差出人情報(表示名・メールアドレス・ドメイン)に不自然な点がないか確認する
    – 件名に違和感があるなど、疑わしい場合は開封しない
    – 原則.exe などの不審なファイルは開かない
    – URLの確認を徹底し、短縮URLや不審なボタンはクリックしない
  2. 疑わしいメールの取り扱いルール
    – 疑わしいメールを受信した際は、速やかに情報システム部門・セキュリティ担当者に連絡する
    – 上司や同僚を装った連絡の場合は、当事者本人にメール以外(電話など)の別手段で再確認する
  3. 疑わしいメールの添付ファイル・URLを開いてしまった時の対処法
    – 社員は速やかに情報システム部門・セキュリティ担当者に連絡する
    – セキュリティ担当者はネットワーク遮断などの指示を行う

社員への教育・訓練の実施

技術的な対策を講じていたとしても、社員一人ひとりに知識や見分ける力が備わっていなければ、標的型攻撃メールによる被害を防ぐことは困難と言えます。
そのため、標的型攻撃メールに関する教育や訓練を定期的に実施することが重要です。

研修では、標的型攻撃メールの概要をはじめ、実際の事件事例や代表的な手口、見分け方などを体系的に扱うと良いでしょう。
こうした訓練は、社員の当事者意識を高めるだけでなく、万が一の際に適切に対処する力も身に付きやすくなります。

また、社内での対応が難しい場合は、eラーニングなどの外部サービスを活用することも手段のひとつです。

最新動向の情報収集

サイバー攻撃は進化し続けているため、情報システム部門やセキュリティ担当者は、標的型攻撃メールの最新動向の把握に向け、継続的に情報収集を行うことが不可欠です。

新たな手口や被害事例が公表された際には、その内容を社内のセキュリティルールや社員教育に速やかに反映させることで、組織全体の対策レベルの維持・向上につながります。

標的型攻撃メールへの技術的対策

標的型攻撃メールは、サイバー攻撃において、あくまで侵入の入口に過ぎないため、被害を防ぐには技術的対策を組み合わせた多層防御が欠かせません。

メールセキュリティ基盤の強化

メールを悪用した攻撃を防ぐためには、メールの仕組み自体を安全にする対策が有効です。

例えば、HTMLメールをテキスト表示に設定することで、不審なリンクや偽装に気づきやすくなります。
また、前述した送信ドメイン認証を活用すれば、なりすましメールを判別しやすくなります。

このような基本的な対策を取り入れることで、標的型攻撃メールのリスク低減に寄与します。

OS/アプリケーション更新による脆弱性対策

OSやアプリケーションは定期的に更新し、常に最新の状態を保ちましょう。
これにより、既知の脆弱性を解消でき、最新の脅威にも対応しやすくなります。

製品活用によるマルウェア対策

アンチウイルスソフトやマルウェア対策ソフトを導入・活用することも、有効な対策のひとつです。
これらの製品の中には、端末の状態を常時監視し、ウイルスやマルウェアの検知だけでなく、駆除まで自動で行えるものもあります。

こうしたツールを適切に運用することで、被害の拡大防止につながります。

技術的対策にはEDRも有効

標的型攻撃メールやマルウェア被害への対策は重要だとわかっていても、「何から始めれば良いかわからない」「運用まで手が回らない」といった課題を抱えるケースもあるでしょう。

こうした課題に対しては、ウイルス対策やメール対策に加え、侵入後の不審な挙動の検知・対応ができるEDR(Endpoint Detection and Response)を技術的対策のひとつとして導入することが有効です。

EDRの活用により、標的型攻撃メールを起点とした被害の早期検知や被害拡大の防止につながります。

TD SYNNEXが取り扱うセキュリティソリューション

TD SYNNEXでは、エンドポイントセキュリティ分野で高い実績を持つSymantecの製品を取り扱っており、マルウェア対策からEDRによる高度な脅威対策まで、企業のセキュリティ強化を幅広く支援しています。

Symantecのソリューションは、既知・未知の脅威への対応を目的とした機能を備えており、巧妙化する標的型攻撃メールへの対策として活用が期待できます。

また、TD SYNNEXは製品の提供にとどまらず、導入前の検討段階から運用フェーズまでを支援するサポート体制を整えています。
自社に適したセキュリティ対策がわからない場合でも気軽に相談できるため、無理のない形でセキュリティ強化を進めることが可能です。

これからのセキュリティ強化に役立つ資料を公開中

標的型攻撃メール対策を含むセキュリティ対策の考え方や、Symantec製品の特長をより詳しく知りたい担当者様は、対策のポイントと製品概要をまとめた資料をご活用ください。

まとめ

標的型攻撃メールは、取引先や公的機関などを装い、ウイルスを仕込んだ添付ファイルやURLをきっかけに侵入して、企業の機密情報の窃取や漏えいを狙う攻撃です。
被害の内容や影響範囲によっては、企業の信頼回復に相応の費用と時間を要する場合があります。

日頃から対策ができるよう、メールの差出人や件名、添付ファイル・URLの確認を徹底し、教育・訓練と社内ルールで対応を標準化しましょう。

人的対策と技術的対策の多層防御により、標的型攻撃メールのリスク軽減につながります。