VDI導入時に試算すべきコストと社内稟議の通し方を解説

VDI導入にかかる費用の概算

多くのお客様にとって、VDI導入時のコストと稟議(社内承認)は避けて通れない問題です。

一般論として、端末台数の条件にも左右されますが、物理PCの場合、PC端末1台当たりを、おおよそ10万程度の費用に対して、VDIもしくはDaaSを導入するとその2倍から3倍である20万円から30万円の費用が掛かるといわれています。このため、VDIを導入する際には単なる費用比較によるコストダウン・・・ではなく、導入にあたって得られるメリットを定性、定量、可視化できる部分とそうでない部分等、さまざまな軸で考えていく必要があります。各項目ごとに見ていきましょう。

VDI導入時に試算すべきコスト

目に見えるコスト:設備コスト(ハードウェア・ソフトウェアなど)、セキュリティ対策コスト(アプライアンス費用など)、運用コスト

VDIにかかわらず、仮想化基盤を導入する際には、基盤を構築するハードウェア、ソフトウェア等の初期導入に必要な設備コストに加え、導入作業に発生するコスト、利用期間に応じた運用費用(保守費用、運用エンジニアの人件費など)がかかります。これはクライアント端末でも同じく初期費用、導入作業(パッチ適用等)、運用費用がかかります。この部分については従来のPC導入時と基本的な考えは変わることはあまりなく、必要なリソースに基づいて必要な費用を見積もっていくことが基本的な考え方になります。

<仮想化基盤にかかるコスト>

■初期導入に必要な設備コスト(ハードウェア・ソフトウェアなど)

■導入作業に発生するコスト(設計および構築作業費用)

■利用期間に応じた運用費用(保守費用、運用エンジニアの人件費など)

【ハードウェア関連】

ハードウェアはサーバーおよびストレージ、ネットワークの各機器費用が主な費用となります。主にサーバーとストレージ機器の費用が多くをしめます。HCIのようなコンバージドインフラを利用する際は必要リソースによって異なります。

【ソフトウェア関連】

大きく、仮想化基盤に必要な仮想化ソフトウェア、VDIを構築するためのソフトウェア、OS、各VDIに必要なクライアント端末分のOS費用などが掛かります。他にもセキュリティ対策のためのソフトウェア費用が必要になります。仮想化ソフトウェアおよびVDIを構築するためのソフトウェアが主な費用です。

<クライアント端末にかかるコスト>

■初期費用(ハードウェア・ソフトウェアなど)

■導入作業(ソフトウェアの導入費用、オンサイトへの設置・配送費用)

■運用費用(保守費用、運用エンジニアの費用、問い合わせ対応の費用)

VDI環境において、クライアント端末に「シンクライアント端末」を利用するか、「汎用PC端末」を利用するかによって費用は異なりますが、VDI環境でもクライアント端末は必要になりますのでその費用はなくなりません。端末のヘルプデスク費用についても同様に見ておく必要があります。

<導入および運用費用の詳細>

<導入規模が小さいほど割高になる>

VDI導入時の注意点として、ユーザーの規模によって1台当たり単価が異なってくるという点があります。理由として、ユーザー数にかかわらずVDIを管理する管理コンポーネント部分は必要となるため、どうしても初期導入の台数が少ないと1台当たりに賦課される費用が高くなり、結果的に割高になります。逆に初期に多くの台数を導入する場合、1台当たりに賦課される台数が少なくなるため、費用が下がります。

<コストと台数の相関イメージ>

目に見えないコスト:VDIを導入しないことで発生しうるコスト

VDI導入においては、「VDIを導入しないことで発生しうるコスト」も考える必要があります。例えば、次のような項目があげられます。

<VDIを導入しないことで発生しうるコスト>

■自然災害など有事の際の業務継続性

■セキュリティインシデント発生時の業務停止に伴う損害

業務継続性の観点では、VDIが導入されていれば自然災害発生時においては仮にオフィスや主要事務所が被災したとしても、別の拠点において速やかに業務復旧に着手することが可能ですが、VDIではなく通常のPC端末を使用している場合、事務所が被災してしまった場合は業務復旧に着手することさえ困難になってしまうケースが考えられます。(内部のデータをバックアップしていない場合には、上記に加えてデータロストとなり、事業継続そのものも怪しくなるケースも)

セキュリティインシデント発生時の観点では、直接的な対応コストに加えて業務停止による逸失利益、さらには社外に情報が流出してしまった際の対応コスト(個人情報関係であればその対応費用等も)も莫大なものになる可能性があります。通常、これらのコストは一見見落としがちな領域となりますが、起きたときの損害は大きなものになるためVDIを導入しないことで発生しうるコストとして考えておく必要があります。

VDI導入時に予測すべき人事面でのメリット

VDI導入においては、人事面におけるメリットも予測しておく必要があります。VDI導入時のメリットとしては、たとえばコロナ禍において、「よりセキュアな環境でリモートワークを促進できる」以外にも、次のようなメリットがあります。

■ポストコロナを見据えた働き方改革の促進

■就労環境改善による離職率低下によってもたらされる様々なメリット(人材採用コストにかかるコスト減など)

特にこれからのVDI導入においては、ポストコロナを見据えた働き方改革(リモートワークとオフィス業務を組み合わせたハイブリッドな働き方)に対する対応や再燃が予想される人材不足(採用難)に対応するためにも人事戦略に合わせた、導入効果を見積もっていくことが重要となってきます。

VDIと物理PCのコスト比較

従来のPC端末をそのまま更新するケースとの比較を考えてみます。機器費用やソフトウェア費用についてはどちらでも発生しますが、VDIを導入すると、下記の項目が物理PC運用時と比較して削減されます。

  1. 情報システム担当者の対応費用(ヘルプデスク対応費用)、特にオンサイトでの対応費用が大きく削減されます(外部委託している場合はその委託費用)
  2. 障害対応費用(VDIはデータセンター側に集約されているため、素早い対応が可能になり、障害対応の稼働工数が削減されます)
  3. その他(組織変更の際の配備費用、インストールおよび初回配備費用等)

ただし、事業所の拠点数や環境(単純なオフィス端末なのか、デザイン業務等の高性能端末なのか)によっても変化するため、注意が必要です。

<VDIと物理PCとのコスト比較>     

オンプレミスVDIとDaaS/フルクラウドVDIのコスト比較

実装形式によっても比較すべき観点は異なります。オンプレミスVDIであれば一般的に初期投資は高額なものになりますが、償却が働くため利用期間が長いケースや規模が大きいケースになると、費用面で割安になる傾向があります。その反面台数の細やかな変化に対応しにくい、保守運用費用が一定程度かかることが見込まれます。

それに対して、DaaS/フルクラウドVDIなどサービス形式の場合、一般的に初期投資は安価に済むケースが多いですが、利用期間が長くなると(一般的には3年程度で)コスト的にはオンプレミス環境での費用を超えてしまい、結果的に割高になるケースもあるため注意が必要です。

<オンプレミスVDIとDaas/フルクラウドVDIのコスト比較>

上申時にうまくいかない4つのパターン

これまで多くのお客様で導入時に社内稟議が通らなかったケースは、多くの場合、次の4パターンに分類できます。

  1. コスト面の問題(単純にPC更改の費用と比較してしまう)
  2. 社内の賛同を得られない(部分最適と判断されてしまう)
  3. 運用ルール(外部に端末が持ち出されることで、残業が拡大してしまうのではないかといった問題)
  4. 以前、実験的に導入したが、うまくいかなかった

上記4つのパターンのどれか、もしくは複数の理由によって上申がうまくいかなかったケースがほとんどです。この場合、オススメなのは、最初に、現場、IT部門、経営、人事とVDI導入にかかわるすべての人にメリットがでるような論点整理を行うことです。

例えば人事部門に対しては、VDI導入による離職率改善効果や働き方改革、直近であればポストコロナを見据えた働き方改革等の観点を整理して伝える、経営層に対しては離職率の低下にともなう全社利益の最大化等を伝えるなどが効果的です。

コスト見直しに有効な3つのポイント

上申時の課題として、コスト面でNGが出た場合は、サイジングと要件を見直すという方法が第一に考えられます。ほとんどの場合、VDIのコストは、5年間で必要な最大のリソース数(利用人数)をもとに算出するケースが多いです。通常、サイジングを行う際には一定の余裕を持たせることがセオリーとされていますが、ことVDIの導入については余裕を過剰に持たせてしまうと、費用に与えるインパクトが大きいため、注意が必要です。

<コスト見直しの主なポイント>

中でもストレージ領域に関しては注意が必要です。VDIは多くのユーザーが仮想化領域にアクセスすると、ストレージに負荷がかかりやすいという特性上、ストレージへの性能要求がどうしても高くなり、最高性能を前提に計算してサイジングを行うと、おのずと高価格なモデルを選択することになり、それが費用を押し上げている場合があります。ストレージ構成をオールフラッシュモデルにするのではなく、一部ハイブリッド構成にする、もしくはソフトウェアデファインドストレージを利用するなどして、高性能な専用ストレージの費用削減につながる場合があります。

その他、HCIのような、柔軟にリソースを追加できる基盤を前提として見積ることで、初期一括導入ではなく、段階的な導入や必要リソースに合わせた導入プランに変更したり、一部クラウドを併用するハイブリッドVDI形式でのコストを見積るのも有効です。

また、運用の費用に関しても見直すことができます。これまでの物理PCと同じ運用費用をそのまま積むのではなく、VDIに変化したことで削減される内容(PCヘルプデスクの運用費用等)が反映されているか等を確認し、コストの前提条件を見直すことも有効です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?VDIにおいて実際にかかるコストはお客様の環境や条件によって異なるため、一概に語ることはできませんが、本稿に挙げたような観点で社内稟議の起案をされる際に、記載すべき内容や効果についてご検討いただくと、よりスムーズに導入を進められるかもしれません。

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