SD-WANベンダーの比較と自社に合った製品を見つけるコツ

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SD-WANは、クラウドシフトの増加やコロナ禍による在宅・リモートワークが増加するに従ってますます注目されています。現在、SD-WANは多くのソリューションが乱立しているため、具合的な製品の比較を行う前に、自社が求める機能、要件をまず整理し、ビジネスに合うWANを構築するために課題面を正しく整理することが重要です。本稿では、SD-WANのベンダー別の大まかな特徴と主要メーカーの製品を簡単に整理していきます。また、後半では、自社が求める機能と要件を整理するポイントをお伝えします。

SD-WAN製品とソリューションの3つの流れ

SD-WAN製品とソリューションは市場の流れから、大きく3つのカテゴリーに分類することができます。各ベンダーは合併や買収を盛んに行い、日々機能開発を行っているため、必ずしもすべてに当てはまるわけではありませんが、考え方のひとつとして分類しています。

また、メーカー各社のポジション(総合的にさまざまな製品を提供しているメーカー、セキュリティ対策製品を中心としているメーカー、WAN高速化製品を中心としているメーカー)によって強みが異なりますので、提供しているメーカーの開発経緯や製品を見て検討することをおすすめいたします。

SD-WAN製品の3つのポジション

(1)当初よりSD-WANを主眼に開発されたもの

初めからSD-WAN機能を実現するために開発された製品群がこれにあたります。WANが抱える課題を解決するために焦点を当てて開発されており、WAN内の機器の設定自動化や一元管理(運用設置コストの削減につながる)や複数回線を束ねて使ったり、1つの回線を複数のセグメントに分割して使うといったことが可能です。これらにより安価な回線を複数契約して利用する等のコストダウンが可能になるケースもあります。その反面、十分なサポート体制が国内にないケースもあり、自社の求めるサポートレベルが提供できるかどうかの確認が必要です。

(2)SD-LANもしくはSDNベースとして開発されたもの

SD-WANの登場以前から主にデータセンター事業者で採用されてきた製品群がこれにあたります。      

SD-LANとは、データセンター事業者内のコアネットワークを想定して開発された製品で、高性能なことが多く、エンドユーザーにとっては様々な設定が可能ですが、SD-WANを主眼に開発された製品と比較すると個別の設定が必要になるため、運用が複雑になることが多く結果的に運用コストが高額になってしまうケースや、十分に活用しきれず費用対効果に見合わないケースが発生しまうため、自社がデータセンター事業者向けの製品でも問題ない要件なのか、検討が必要です。

(3)WAN高速化製品をベースとして開発されたもの(SD-WAN機能を付加したもの)

もともと、アプリケーションの転送効率や帯域を制御して最適化することを目的に開発されてきた製品群がこれにあたります。例えばメールの通信に対して優先制御をかけたり、特定のアプリケーションの通信を最適化させたりと、様々な制御がおこなえます。しかし、WANネットワークに追加して、ネットワークスピードの高速化に使う目的で開発されてきた経緯上、WANルーターとしての機能や性能の実装に重きをおいていないケースが多いため、セグメンテーション機能が十分でないケース(回線を束ねることができない等)があるため、要件の検討が必要です。

SD-WANベンダー各社の紹介

※本稿記載の情報は、2021年8月時点での情報に基づいて記載しております。内容には細心の注意を払っておりますが、本内容に基づくご判断はご自身での責任においてお願いします。

Aryaka:サブスクリプションベースでの提供、自社ネットワークを保有

Aryakaは中堅中小企業に特に有用なサブスクリプションベースでの製品提供を行っている会社です。最大の特徴は自社でグローバルネットワークを保有しており、回線の運用が不要になるだけではなく拠点ごとに回線契約から開通後の運用まで含めたオールインワンでのマネージドサービス利用が可能で、導入や管理の容易性に特徴を持ちます。

出典:https://www.aryaka.com/blog/sd-wan-internet-new-corporate-network/ より

Aruba Networks / Silver Peak:WAN高速化ソリューションに実績

Silver Peak はもともとWAN高速化ソリューションに実績のあるメーカーで、Hewlett Packard Enterpriseのネットワーク部門であるAruba Networksが2020年に買収し、現在はArubaの一部門としてSD-WAN製品が提供されています。WAN技術の専業メーカーとして創業後、数多くの特許技術を開発し、アクセス時の最初のパケットからインターネットブレイクアウトを行う技術や、複数WAN回線のアグリゲーションといった、豊富かつきめ細やかなSD-WANを提供できることに強みを持ちます。

出典:https://ja.silver-peak.com/sd-wan/sd-wan-explained より

Slilvar Peakの製品について詳しくはこちら

VMware:自社ポートフォリオとの連携に強み

VMware社はNSXファミリーとしてネットワークポートフォリオ製品を急速に拡大してきました。もともとは仮想化基盤製品、VDIをはじめとするデジタルワークスペースを中心に製品を提供していたVMware社ですが、NSXをはじめとするネットワーク製品のポートフォリオを急速に拡大させています。SD-WAN製品については、2017年にSD-WANの専業ベンダーとして市場をリードしていたVeloCloud Networksを、VMwareが2017年に買収したことでVMware社のポートフォリオ製品として提供されています。大企業から中小企業向けの幅広い領域に適用できるので、既存でVMware製品を仮想化基盤やVDIの基盤として採用している場合、検討すべきベンダーの1つとなります。

出典:https://blogs.vmware.com/vmware-japan/2020/09/sdwan-cloud2.html より

Citrix:VDIとの連携に強み

もともとNetscaler ADC の名称で負荷分散、WAN高速化およびセキュリティ対策を組み込んだアプライアンス製品を提供しており、古くからの実績を持ちます。自社のデスクトップ仮想化製品と連携しHDXの可視性と最適化やTeamsの通信最適化といった、マイクロソフト製品との連携に強みを持ちます。

出典:https://docs.citrix.com/ja-jp/tech-zone/learn/tech-briefs/sdwan-workspace.html より

Fortinet:セキュリティアプライアンスとの統合

Forinetは主に中堅中小企業向けのセキュリティ製品を提供しているベンダーですが、アプライアンスの機能としてSD-WAN機能を提供しています。既存のUTMアプライアンスと統合されているため、同じアーキテクチャーでUTMとSD-WAN機能を兼ねることが可能となり、低コストでSD-WAN機能を導入することが可能です。

出典:https://www.fortinet.com/content/dam/fortinet/assets/white-papers/ja_jp/WP-Secure-SD-WAN-Reference-Architecture.pdf より

Fortinetの製品について詳しくはこちら

Cisco Systems:全方位にソリューションを提供

ネットワークソリューションの総合メーカーとして、さまざまな製品を提供しています。SD-WAN機能については、既存のCiscoルーター機能にSD-WAN機能を付加したIWAN、UTM機能をベースにSD-WAN機能を提供するMerakiと旧Viptera社を買収してエンタープライズ向け機能を持つCisco SD-WANの2つの製品ラインを提供しています。既存でCisco社の機器を大規模に利用している場合は統合管理の面から強みを持ちます。IWANとCisco SD-WANは主に大企業向け、Merakiは主に中小企業向けをターゲットとしています。

出典:https://www.cisco.com/c/ja_jp/solutions/collateral/enterprise-networks/sd-wan/nb-06-sd-wan-sol-overview-cte-en.html より

自社に合った要件の整理方法

自社の要件に合うか合わないかの判断軸があると、よりベンダーや製品を比較しやすくなります。下記に企業規模別の要件整理表を作成しましたので、ご参考になさってください。

<企業規模別の要件整理表>

他にも、下記の要素がベンダー選定時に考えるべきポイントとして挙げられます。

<ベンダー選択時に考えるべきポイント>

■スケーラビリティ:

十分な拡張性があるか?(導入後の拡張や設定変更もスムーズに行うことができるかどうかがポイント)

■製品ポジション:

大規模環境を必要とする大企業向けか?中堅中小向けの製品か?

■セキュリティ:

柔軟な設定が可能か?

■導入およびサポート:

自社に合ったサポートが提供可能か?(日本語でのサポートが必要となる場合、日本国内に高いスキルを持った代理店もしくはメーカーサポート体制があるかが重要です)

まとめ

各社の成り立ちと特徴を把握してみましょう。本稿に記載したベンダー以外にも多くのベンダーがSD-WAN機能を提供しています。自社のIT環境や求める要件に基づいての選択が必要となるため、まず最初に自社要件の把握を行うことが最も重要となります。最適な環境を構築するために本記事が参考になれば幸いです。

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