Wi-Fi 7とは?速度や機能など旧規格との違いを解説
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2023年12月末、総務省が電波法施行規則を改正し、Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)の利用を正式に認可しました。この次世代Wi-Fi規格は、従来の規格を大きく上回る通信速度と安定性を誇ります。
しかし、新しい技術が利用可能になったからといって、すべての企業がすぐに導入すべきというわけではありません。本記事では、Wi-Fi 7の主な特徴を解説するとともに、どのような企業や組織にとって早期導入が効果的なのかを解説します。
Wi-Fi 7とは?
Wi-Fi 7とは、Wi-Fi 6/6Eに続く次世代のWi-Fi規格です。正式名称はIEEE 802.11be Extremely High Throughput(EHT)で、2024年9月現在では暫定規格(Draft)となっており、正式な規格としての手続きは2024年中に完了する予定です。
Wi-Fi 7の最大の特徴は、2.4GHz・5GHz・6GHzの3つの周波数帯をすべて利用できることに加え、新たに導入されたマルチリンク操作(MLO:Multi-Link Operation)技術により、これらの帯域を同時に使用できるようになったことです。
この新技術により、Wi-Fi 7では理論上の最大速度は46Gbpsに達し、Wi-Fi 6の約4.8倍の高速化を実現します(実際の速度は環境やデバイスによって異なることがあります)。また、複数の帯域を同時に利用することで、通信の遅延を最小限に抑えます。
これらの進化により、Wi-Fi 7は4K/8K動画のストリーミングや、VR/AR技術を用いた没入型エンターテインメント、さらには産業用IoTや遠隔医療など、高速かつ安定した通信を必要とする次世代のアプリケーションをサポートすることが期待されています。
Wi-Fi 7を支える新技術
Wi-Fi 7は、新技術がいくつも使用されています。ここではWi-Fi7の新技術について解説します。
320MHz帯域幅の活用
Wi-Fi 7では、チャネル帯域幅が最大320MHzまで拡張されました。Wi-Fi 6の帯域幅は160MHzであるため、2倍に拡張されました。より広い帯域幅を利用することで、一度に送受信できるデータ量が大幅に増加します。
4096QAMによる高効率通信
Wi-Fi 7では、変調方式が4096QAM(Quadrature Amplitude Modulation)に進化しました。これは、Wi-Fi 6の1024QAMから大きく向上しています。4096QAMでは、1シンボルあたり12ビットの情報を伝送できるため、同じ時間でより多くのデータを送ることが可能になります。
マルチリンク操作(MLO)の仕組み
マルチリンク操作(MLO)は、Wi-Fi 7から導入された新技術です。MLOを使うことで、デバイスは2.4GHz、5GHz、6GHzの複数の周波数帯を同時に利用できるようになります。
MLOは、通信状況に応じて最適な帯域を動的に選択し、データを分散して送信することができます。そのため、通信速度の向上だけでなく、干渉の回避や遅延の低減が見込め、より安定した通信ができるようになります。
進化したMU-MIMO技術
Wi-Fi 7では、マルチユーザーMIMO(MU-MIMO)技術がさらに進化しています。Wi-Fi 6の8×8 MU-MIMOから、Wi-Fi 7では16×16 MU-MIMOに拡張されました。これにより、同時に通信できるデバイスの数が増加し、より多くのユーザーが高速で安定した通信をできるようになります。
Wi-Fi 7で何が変わる?
Wi-Fi 7は、前世代のWi-Fi 6/6Eと比較して、様々な面で大幅な改善を実現しています。
通信速度はどれくらい速くなる?
Wi-Fi 7の理論上の最大通信速度は46Gbpsです。そのため、Wi-Fi 6の9.6Gbpsと比較して約4.8倍の高速化を実現しています。
実際の使用環境では、この理論値に達することは稀ですが、それでも日常的な使用において速度向上を体感できるでしょう。例えば、4K/8K動画のストリーミングがより滑らかになり、大容量ファイルの転送時間が大幅に短縮されます。
低遅延性能の向上
Wi-Fi 7では、マルチリンク操作(MLO)技術の導入により、通信の遅延が大幅に改善されました。
低遅延性能の向上によって、オンラインゲームやビデオ会議、VR/ARアプリケーションなど、リアルタイム性が求められる用途で特に効果を発揮します。
ネットワーク容量の拡大
Wi-Fi 7では、320MHz帯域幅の活用とMLO技術の組み合わせにより、ネットワーク全体の容量が大幅に拡大しました。これにより、一つのネットワーク内でより多くのデータをより効率的に処理することが可能になります。
特に混雑した環境や多数のデバイスが接続されている状況下で、実感しやすいかもしれません。例えば、混雑した駅などでは一時的に通信がしにくくなる場面がありますが、Wi-Fi7で接続していれば大容量通信ができるため、安定して通信ができるでしょう。
同時接続デバイス数の増加
Wi-Fi 7では、MU-MIMO技術が16×16まで拡張されたことで、同時に通信可能なデバイス数が大幅に増加しました。そのため、多数のIoTデバイスやスマート家電がある環境に適したネットワーク環境を構築することができます。
Wi-Fi 6E/Wi-Fi 6/Wi-Fi 5との違い
特徴 | Wi-Fi 7 | Wi-Fi 6E | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 5 |
---|---|---|---|---|
IEEE規格 | 802.11be | 802.11ax | 802.11ax | 802.11ac |
最大理論速度 | 46 Gbps | 9.6 Gbps | 9.6 Gbps | 3.5 Gbps |
周波数帯 | 2.4/5/6 GHz | 2.4/5/6 GHz | 2.4/5 GHz | 5 GHz |
最大チャネル幅 | 320 MHz | 160 MHz | 160 MHz | 160 MHz |
変調方式 | 4096-QAM | 1024-QAM | 1024-QAM | 256-QAM |
MIMO | 16×16 | 8×8 | 8×8 | 4×4 |
マルチリンク操作 | 対応 | 非対応 | 非対応 | 非対応 |
Wi-Fi 7は、前世代の規格と比較して大幅な性能向上がされています。最大理論速度は46Gbpsと、Wi-Fi 6/6Eの約5倍に達しています。また、新たに導入されたマルチリンク操作(MLO)により、複数の周波数帯を同時に利用できるようになりました。
さらに、変調方式の進化や最大チャネル幅の拡大により、より効率的なデータ転送が可能になっています。
Wi-Fi 7はいつから使える?
2023年12月末、日本の総務省が電波法施行規則を改正し、Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)の利用を正式に認可しました。これにより、日本国内でのWi-Fi 7の利用に向けた法的な問題はなくなっています。
技術面では、現状のWi-Fi 7は暫定規格(Draft)で、2024年末までに正式規格とする手続きが終わる見通しです。一部のメーカーはすでに先行して製品の開発と販売を開始しています。例えば、2023年9月にはTP-Linkが「Deco BE85」を発売し、2024年2月にはバッファローが「WXR18000BE10P」を市場に投入しました。現状で発売されているWi-Fi 7対応機器は暫定規格に基づくものということになりますが、もし正式規格と差分が生じてもファームウェアアップデートで対応する見込みです。
ただし、Wi-Fi 7の本格的な普及には、デバイス側の対応が必要です。2024年9月時点では、Wi-Fi 7に完全対応したスマートフォンやPCなどの端末はまだ一部にとどまっています。そのため、一般消費者がWi-Fi 7の恩恵を十分に受けられるようになるのは、もう少し先になりそうです。
Wi-Fi 7の活用シーン
Wi-Fi 7の高速・大容量・低遅延という特徴は、ビジネスや家庭での様々な場面で活用が期待されています。以下に、具体的な利用シーンを紹介します。
ビジネスでの利用例
Wi-Fi 7の主なビジネス活用シーンは以下の通りです。
- 大規模IoT環境(工場、倉庫など)
- スマートオフィス
- 医療分野
- 教育機関
その中でも、大規模IoT環境での活用は、Wi-Fi 7の特性を最大限に活かせる分野として注目を集めています。
従来の工場では、生産ラインの各所に設置されたセンサーやデバイスは、有線接続や限られた無線接続で運用されることが多く、リアルタイムでの全体把握が難しいケースがありました。しかし、Wi-Fi 7の登場により、工場内のあらゆる機器をワイヤレスで接続し、一元管理することが可能になります。
例えば、生産ラインの各工程に取り付けられた高精度センサーが、製品の品質データをリアルタイムで送信。そのデータを分析システムが即座に処理し、品質のばらつきや異常を瞬時に検出することで、不良品の発生を最小限に抑えることができます。
また、工場内で使用する無人搬送車(AGV)などの通信も、Wi-Fi 7の高速・低遅延特性により、よりスムーズになります。
家庭でのエンターテインメント
Wi-Fi 7があれば、家庭で楽しめることも変わってきます。次のようなエンターテインメントに変化があります。
- 4K/8Kストリーミング
- クラウドゲーミング
- スマートホームデバイスの統合
- 没入型VR/AR体験
4K/8Kストリーミングへの影響は強くなると考えられます。高画質大容量コンテンツがWi-Fi 7によってストレスなく楽しめるようになります。
例えば、家族全員が同時に異なる部屋で、それぞれ4K映画を視聴するといったシーンが現実のものとなるでしょう。Wi-Fi 7の高速・大容量通信により、バッファリングや画質の低下を気にすることなく、臨場感あふれる映像を楽しむことができます。
Wi-Fi 7の早期導入をおすすめする人
Wi-Fi7の早期導入をおすすめできるのは、アクセスポイントへ大量のデバイスを接続している環境の方です。
2024年9月現在、Wi-Fi 7対応のアクセスポイントは市場に出回り始めていますが、対応するPCやスマートフォンなどの端末はまだ一部にとどまっています。そのため、一般的な家庭やオフィスでWi-Fi 7を導入しても、その性能を十分に活かせない可能性が高いです。
しかし、Wi-Fi 7を中継機として活用する場合には効果を発揮します。Wi-Fi 7の大きな特徴の一つである同時接続デバイス数の大幅な増加は、中継機としての役割で既存のネットワーク環境を大幅に改善できる可能性があります。
Wi-Fi 7以降の展望
Wi-Fi 7が本格的な普及を迎える前から、すでに次世代規格であるWi-Fi 8(IEEE 802.11be)の研究開発が進んでいます。Wi-Fi 8は、Wi-Fi 7の特徴をさらに進化させつつ、新たな技術革新を取り入れることで、さらなる改善を図っています。
Wi-Fi 8の主な焦点は、通信の信頼性向上です。具体的には、低遅延性、高スループット、そして電力効率の大幅な改善が目指されています。Wi-Fi 8は次のような特徴を持つと言われています。
- 高信頼性通信
- 効率的なスペクトル利用
- AIの統合による自動最適化
- 100Gbpsを超える高速化
- 1ミリ秒未満の超低遅延
これらの特徴によって、次世代のIoT、AR/VR、そして産業用アプリケーションに技術革新をもたらす可能性があります。Wi-Fi 8の標準化は2024年から本格化し、2028年頃に完了すると予想されています。
Wi-Fi 7の対応ルーターや端末
Wi-Fi 7を利用するには、Wi-Fi 7に対応した無線ルーターやデバイスを用意する必要があります。しかし現状、Wi-Fi 7に対応していない製品もありますので、検討の際は注意が必要です。
TD SYNNEXでは各メーカーの法人向けWi-Fi 7対応の無線アクセスポイントや対応デバイスのラインナップを順次増やしてまいります。Wi-Fi 7 の導入にご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
https://jp.tdsynnex.com/inquiry
[筆者プロフィール]
佐々木
テクニカルサポート出身のITライター。Windows Server OS、NAS、UPS、生体認証、証明書管理などの製品サポートを担当。現在は記事制作だけでなく、セキュリティ企業の集客代行を行う。