SSDの規格や種類、用途に合わせた容量の選び方を解説
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SDDは、種類が豊富で用途に合わせてインターフェースや筐体仕様など、いくつかの規格を勘案して製品選択する必要があります。その規格や、種類と用途に合わせた選び方について解説します。
SSDとは?
SSDとは、Solid State Drive(ソリッドステートドライブ)の略称で、HDDすなわちHard Disk Drive(ハードディスクドライブ)と同様に、コンピュータに接続し、プログラムやデータを保存することができる外部記憶装置(ストレージ)のひとつです。HDDのハードディスクは、「硬い円盤」という意味で、platter(プラッタ)と呼ばれる円盤型の記憶媒体を高速で回転させ、磁気ヘッド(盤上を移動する読み書き装置)によって磁気的にデータを書き込んだり、読み取ったりすることができる駆動型の装置であるのに対して、SSDは、記憶媒体にフラッシュメモリを用いて電気的に読み書きする装置です。
SSDは、HDDと置き換え可能な形式で、つまり、HDDと同じ接続仕様(インターフェース)、同じ寸法(物理的な形状)で登場した後、接続仕様や寸法の種類を増やしながら、容量をアップし、伝送速度を向上させてきました。出荷台数も増え続けています。2020年には、遂にSSDがHDDの出荷台数を超え、外部記憶装置の主役の座がHDDからSDDへと交代しました。
SSDの規格と種類
現在、SSDには、コンピュータに接続するインターフェースと、搭載する物理的な形状によって、いくつかの規格や種類があります。内蔵型の他に外付けタイプもありますが、本稿では、内蔵型について解説します。
SSDのインターフェース(接続)規格
SSDのインターフェースには、大きく次の2種類があります。ひとつは、HDDと同じインターフェース仕様である「SATA」と、コンピュータの拡張バスおよび拡張スロットのインターフェースから派生して誕生した「PCI-e」です。それぞれの規格について説明します。
SATA
SATAとは、Serial ATA(シリアルATA)の略称で、パソコンやサーバーなどの内蔵ストレージ装置(SDD、HDD、光学ドライブなど)の接続方式として広く浸透しているインターフェースで、表1に示す規格が策定されています。
年 | 規格 | 伝送速度 | 実行レート |
---|---|---|---|
2000年 | SATA1(Serial ATA 1.0) | 1.5Gbps | 150MB/s |
2004年 | SATA2(Serial ATA 2.0) | 3Gbps | 300MB/s |
2009年 | SATA3(Serial ATA 3.0) | 6Gbps | 600MB/s |
コネクタ形状などは同一で、新しい機器に古い機器を接続すると古い規格で動作する後方互換性があります。SATAには、デスクトップパソコンやサーバーなどで用いられる7ピンの平たいケーブルおよびコネクタの他に、次の表に示すように、さまざまな目的で接続するのに適したコネクタ仕様があります。
コネクタ仕様 | 目的・用途 |
---|---|
Slimline SATA(スリムラインSATA) | ノートパソコンなどに用いるために小型化 薄型光学ドライブなどの接続に用いられる |
Micro SATA(マイクロSATA/μSATA) | ノートパソコンなどに用いるために小型化 1.8インチのHDDやSDDなどの接続に適する |
mSATA(Mini SATA/ミニSATA) | Micro SATAを更に小型化 小型ノートパソコンにカード型のSSDなどを装着するのに用いられる |
SATA接続での性能を向上させる通信制御コントローラの仕様に、AHCI(Advanced Host Controller Interface)があります。SSDにAHCI を適用する場合、SATAが汎用的で、価格も比較的安価であることがメリットとなりますが、SATA自体の性能がボトルネックとなり、それ以上に伝送速度を上げることができません。
PCI-e
PCI-e とは、PCI Express(Peripheral Component Interconnect Express)の略称です。コンピュータの拡張バスおよび拡張スロットの標準仕様のひとつであるPCI(Peripheral Component Interconnect)バス・スロットの後継のシリアル伝送インターフェースで表3に示す規格が策定されています。
年 | 規格(リビジョン) | 伝送速度/レーン | 備考 |
---|---|---|---|
2002年 | PCI Express 1.1 | 2.5Gbps | |
2007年 | PCI Express 2.0(Gen2) | 5Gbps | |
2010年 | PCI Express 3.0(Gen3) | 8Gbps | |
2017年 | PCI Express 4.0(Gen4) | 16Gbps | |
2017年 | PCI Express 5.0(Gen5) | 32Gbps | |
2019年 | PCI Express 6.0(Gen6) | 64Gbps | |
2022年 | PCI Express 7.0(Gen7) | 128Gbps | 2025年策定予定 |
元々、CPUやメモリ(RAM)など他の装置と通信するための接続規格として、ビデオカードなどの接続方式として広く普及しており、更に、SSDなどの高速ストレージ向けに派生し、NVM-e(Non-Volatile Memory Express)などの新たな規格が策定されています。
SSDのフォームファクタの種類
フォームファクタとは、サイズや形状、物理仕様のことです。内臓SSDには、先述のインターフェースの他、内蔵するための筐体仕様として、次のような種類があります。
2.5インチ
従来のHDDと同じ形状で、インターフェースも同じ「Serial ATA」が採用されています。そのため、最も汎用的で、ほとんどのデスクトップパソコンやノートブックパソコンに適合します。また、2.5インチSSD向けに作られた接続端子の規格のひとつにU.2があります。U.2はSATA やPCI-eといったインターフェースに対応していますが、用途はサーバーなどに限られています。
1.8インチ
ノートパソコンなどに用いるために小型化されたフォームファクタです。インターフェースは「Micro SATA」が採用されています。
mSATA
1.8インチのMicro SATAよりも、更に小型化されたフォームファクタです。インターフェースは、フォームファクタ名と同じ「mSATA」が採用されています。
M.2
「Serial ATA」タイプと、「PCIe(PCI Express)」タイプのインターフェースが採用されています。1.8インチや2.5インチのSSDのようにケースに入っているのではなく、専用のスロットに搭載されます。M.2については、次章で更に詳しく解説します。
M.2 SSD
M.2 SSDは、データ転送に関しては従来技術を採り入れつつも、接続端子に新しい規格を採用することにより、高速なデータ転送を実現しています。マザーボードのスロットに直接差し込む基盤の形をしており、サイズ、端子の形状、インターフェースに、異なる種類がありますので、それぞれ解説します。
サイズについて
代表的なものに、M.2 type2280、M.2 type2260、M.2 type2242の3種類があります。寸法が名称となっており、それぞれ幅が22mmで、長さがそれぞれ80mm、60 mm、42 mmとなります。つまり、type2280であれば、幅が22mmで長さが80mmと分かります。この3種類に限らず、幅と長さの種類としては、細かくは、幅4種類(12mm, 16mm, 22mm ,30mm)、長さ8種類(16mm, 26mm, 30mm, 38mm, 42mm, 60mm, 80mm, 110mm)があります。しかし、これら全種類が流通しているわけではなく、最も主流なのは、主にデスクトップパソコンに使用されているtype2280で、ノートパソコンや産業用途などの小型化が求められる製品には、M.2 type2242が多く使用されています。
形状について
端子の形状には、B KeyとM Key、B&M Keyの3種類あります。M.2の端子は、0.5mmのピッチで75のポジションに対して、連続した8つのピンが欠けた状態の最大67のピンを持ち、その端子をマザーボードにさすことにより接続されます。この欠くピンの場所によってKey IDが決まります。75ポジションのうち12~19番目のピンを欠く形状のものをKey IDがB、59~66番目のピンを欠く形状のものがKey IDがM、B&M Keyは12~19および59~66番目のピンを欠いた形状を表しています。表3にあるように、このKey IDによって対応するインターフェースが決まります。
Key ID | 欠くピンの位置 | 対応インターフェース |
---|---|---|
B | 12 – 19 | PCIe × 2, SATA, USB 2.0 and 3.0, Audio, PCM, IUM, SSIC, I2C |
M | 59 – 66 | PCIe x4/SATA |
インターフェースについて
M.2では、Serial ATAタイプと、PCIe(PCI Express)タイプのインターフェースが採用されています。Serial ATAタイプは、M.2登場初期から、従来のインターフェースであるSATAを踏襲するのに採用されているインターフェースです。PCIe(PCI Express)は、拡張スロットに接続するインターフェースで、Serial ATAよりも高速伝送を実現しています。M.2 SSDに対応するインターフェースは、前項の端子の形状によって決まり、その組み合わせは、表4のようになります。
Key ID | インターフェース | レーン数 |
---|---|---|
B Key | Serial ATA | ― |
M Key | PCI Express | 4レーン |
B & M Key | Serial ATA PCI Express | ― 2レーン |
SATA接続する場合は、B Keyのソケットを、PCI Express接続する場合は、M Keyを、両方の接続をする場合は、B & M Keyを選択する必要があります。
SSDのメリット
SSDは同じ外部記憶装置であるHDDと比較する次のようなメリットがあります。
データの読み込みや書き込み速度が速い
HDDは磁気ヘッドを移動させ、円盤型の記憶媒体を回転させるという物理的な動作を伴いながら磁気的に信号の読み書きを行います。ヘッドがディスク上を移動する時間をシークタイムと言い、HDDではデータアクセスの遅延が発生します。一方、SSDは物理的な動作なしに半導体素子に電気的にデータの記録、読み出しを行うため、HDDよりシークタイムが短く、高速に読み書きすることができます。
また、SSDなどの高速ストレージ向けに、NVM-eなどの新たな規格が策定されているため、高速にデータ伝送することができます。
衝撃に強い
HDDは、高速で回転する円盤(ディスク)やモーター、盤上を移動する読み書き装置(ヘッド)といった機械部品があるため、振動に弱く、それらの機械的な可動部分が損傷しやすい構造になっていますが、SSDは、半導体素子に対して、直接電気的に書き込み、読み出しするため、機械的な可動部分がなく、耐衝撃性に優れています。
消費電力が少ない
HDDはデータを読み書きしていない、アイドリング状態であっても、プラッタが回転しており電力を消費しています。そのため、稼働時とあまり消費電力が変わりません。SSDは、電気的に読み書きを行うため、何も行われていないときには、はほとんど電力を消費しません。一方で、使用し始めると、電力が消費されますが、機械を駆動する必要がないため、HDDよりも少ない消費電力で動作します。
小型化できる
SSDは、HDDのようにデータの読み書きに必要となる機械的な構造が必要ないため、小型化、薄型化、軽量化が可能です。ノートブックパソコンの小型化、薄型化、軽量化が進んだ背景のひとつには、SSDの1.8インチ、mSATA、M.2などの小型化されたフォームファクタの存在があります。
SSDのデメリット
SSDは、HDDと比べて多くのメリットがありますが、メリットばかりではなく、以下の点には注意も必要です。
価格がHDDより高い
現在のところ容量あたりの単価はHDDの素材である磁気ディスクよりもSDDに用いられている素材のフラッシュメモリの方が高額なため、同世代の同じ容量の製品を比較すると、SDDはHDDよりも価格的には割高になっています。しかし、2023年現在、価格は下落傾向にあり、購入しやすくなっています。
フラッシュメモリが劣化する
SSDの素材であるフラッシュメモリは書き込みを行うごとに素子が劣化するため、同じ容量の場合、HDDに比べると書き換え寿命が短くなっています。しかし、この欠点を補うため、SSDには「ウェアレベリング」と呼ばれる制御を行い、素子への書き込み動作を分散させるという対策が施されています。
用途に合わせたSSDの容量の選び方
容量が大きくなればそれだけ値段も高くなりますので、用途に応じた適切な容量を選択することが必要です。ここでは、用途に合わせた選び方を解説します。
メール・ネットサーフィン
パソコンは、メールと、SNS、ネットサーフィンなどのインターネットのサービスを利用するくらいといったユーザは、OSと関連するアプリケーションがインストールできればよいので、容量としては、128GB程度あれば、問題なく使用できます。Microsoft Officeも、閲覧や修正を中心に利用する程度であれば、利用できます。
オフィスなどのアプリケーション
オフィス用のアプリケーションを日常的に使用し、作成したドキュメントのデータの保存も必要だという方は、128GBでは容量が足りなくなってきますので、256GB以上の容量が必要になってきます。
Web制作・DTP
テキストデータではなく、イメージデータを扱うWeb制作や、DTPに利用される場合は、アプリケーションやデータの容量も大きくなりますので、512GB以上が必要になります。
ゲーミング・動画編集
ゲーミングや動画編集で利用する場合には、イメージデータ以上に、動画ファイルは容量が大きくなりますので、1TB以上の容量が必要です。
どの利用スタイルにも共通して言えることですが、それ以上にデータ保存が必要になってくる場合には、クラウドサービスや、外付けハードディスクで補うことも可能です。
まとめ
メリットの多いSSDですが、HDDと比べると、価格が高いことが最大の課題でした。しかし、その差も以前ほどのものではなくなり、SDDのメリットを考えるとお買い得な選択となってきました。実際、既に、ストレージの主役は、HDDからSDDに移り変わっています。
HDDに代わる製品として登場した経緯もあり、SDDには多くの種類が誕生しており、その選択も難しく感じられる方もおられると思います。パソコン本体の仕様と用途を確認の上、仕様と用途に合致した選択をすることが大切です。
SSDには、大きくは、インターフェース(SATAとPCIeとそれらから派生して誕生した端子やコントローラ)と、筐体仕様(2.5インチや1.8インチ、mSATA、M.2など)の規格があります。
小型化、高速化進んだ最も新しいフォームファクタであるM.2 SSDをとっても、サイズや端子の形状、インターフェース仕様に、さまざま種類があり、組み合わせがあります。
SSDは、2023年現在、価格が下落傾向にあり、更にお求めやすくなっています。用途に合わせて、本稿を参考に最適なSSDを選択してください。
SSDのご購入を検討するときには、下記のサイトもご覧ください。
https://www.rakuten.ne.jp/gold/synnexstore/
[ 筆者プロフィール ]
峯 英一郎
ITコンサルタント。
大手SIer(約18年勤務)を経て、ソフトウェア会社の経営に従事。お客さまの価値最大化につながる新しい受託開発のあるべき姿を追求し続けている。