LCM(ライフサイクルマネジメント)とは、IT資産の調達から導入、運用、廃棄までを一元管理する仕組みのことです。
情報システム部門では、テレワークや端末の多様化が進み、IT資産の管理負担が増加しています。
このような課題を解決する手段として、専門知識を持った事業社がLCMをアウトソーシングで代行・支援するLCMサービスが注目されています。
本記事では、LCMの基本的な仕組みから、LCMサービスを導入するメリット、活用事例、サービス内容などの選定ポイントなどをわかりやすく解説します。
LCMとは

LCMとは、ライフサイクルマネジメント(Life Cycle Management)の略で、IT機器を調達してから導入、運用、そして廃棄するまでの全プロセスを一元管理する仕組みのことです。
単に購入と処分を繰り返すというだけではなく、各フェーズで発生するコストやセキュリティ、運用業務を可視化し、最適化することを目的としていますが、LCMを担当する企業の担当者には大きな負担がかかってしまいます。
そこで、LCMを代行・支援してくれるLCMサービスを活用して、このプロセスをアウトソーシングすることで、情報システム部門の負担軽減と企業のIT投資の費用対効果向上をはかることができます。
LCMサービスが必要とされる背景
企業が保有するデバイスの種類や台数が増加しているため、情報システム部門は手いっぱいな状況になりがちです。
PCやタブレット、スマートフォンなどの端末だけでなく、それらを介した非接触認証やライセンスの更新、修理履歴など、管理すべき項目は膨大です。
また、テレワークの普及により、運用ルールやセキュリティレベルの保持が難しくなっています。
社員がオフィス外で使用する端末は、更新、セキュリティパッチ適用、ソフト配布などのルール保持が困難になるケースが多く見受けられます。
デバイスを廃棄する際にはセキュリティ面に注意が必要です。
データの完全消去は単なるフォーマットでは不十分であり、復元可能な状態のまま放置してしまえば重大な情報漏えいリスクにつながります。
LCMサービス提供者は、磁気消去や物理的破壊など、確実に処理する手法を心得ているため、安全性を担保することができるのです。
情報システム部門に人手や専門知識が不足している場合でも、専門知識やスキルを持つ外部のLCMサービスにアウトソーシングすることで、セキュリティリスクを抑えながら適切かつ効率的にIT機器を管理・運用できます。
LCMサービスで管理する4つのフェーズ

LCMサービスは、調達、導入、運用・保守、撤去・廃棄の4フェーズをたどります。
ここではそれぞれのフェーズを解説します。
調達フェーズ
最初の調達フェーズでは、業務内容や使用環境に応じたIT機器の選定が行われます。
単に購入するだけでなく、リースやレンタルといった調達形態を含め、コストや運用期間、管理負荷のバランスを考慮した最適な手段を選定します。
たとえば、複数拠点を持つ企業では、端末の一括配送や納品スケジュールの調整も含めて計画されます。
導入フェーズ
導入フェーズでは、調達した機器をすぐに業務に使える状態へ整える「キッティング」作業が行われます。
OSや業務アプリのインストール、ネットワークやセキュリティ設定のほか、ツールなどを用いた自動構成も行います。
マスターイメージの作成により、大量展開時でも一貫性のある設定を短時間で適用できます。
▼キッティングについて詳しく知りたい方は、以下の関連記事を参考にしてください。
運用・保守フェーズ
機器の利用開始後は、日常的な運用やトラブル対応を担うフェーズに移ります。
具体的には、ヘルプデスクによる問い合わせ対応、修理受付、代替機の手配などが含まれます。
リモートワークや出張利用が一般化する中、全国対応や24時間体制のサポートが求められることもあります。
サポートがあることで、端末の稼働率を下げずに業務に集中できます。
撤去・廃棄フェーズ
機器の使用終了後は、法令に則った安全な撤去・廃棄が求められます。
法人向けPCの処分の場合、廃棄物処理法や資源有効利用促進法に準拠する必要があります。
LCMサービスでは、専門の回収業者による端末の引き取りや、データ消去ツール・物理破壊装置による確実な情報抹消を実施しています。
また、消去証明書の発行に対応しているサービスもあるほか、状態の良い端末はリユース・リサイクルに回すことで、SDG’sにも貢献します。
LCMサービスのメリット

次にLCMサービスのメリットを解説します。
コストの削減につながる
LCMサービスでは、業務に合わせた端末を手配するため、過剰スペックや未使用ライセンスを削減し、支出を抑制できます。
また、複数拠点や大量発注時には一括調達によるスケールメリットがはたらき、端末や周辺機器の購入単価を下げることも可能です。
さらに、自社での資産管理担当者を置くよりも、アウトソーシングによって人件費や教育コストを抑えられるため、経費削減につながります。
コア業務に集中できる
IT資産の調達から廃棄までをLCMサービスに任せることで、情報システム部門はキッティングやトラブル対応、廃棄時のデータ消去といった定型業務から解放されます。
そのため、戦略策定やDX推進といった、より付加価値の高い業務に専念でき、担当者の業務満足度も向上します。
人的リソースが限られる中小規模の組織ほど恩恵は大きく、運用負荷の見直しが生産性向上につながりやすいと考えられます。
LCMサービスのデメリット・注意点

LCMサービスはメリットも大きいものの、一部デメリットもあります。
ここではLCMサービスのデメリットを解説します。
アウトソーシングに伴う導入・運用コストが増える
LCMサービスはトータル支援がメリットですが、それに応じて初期導入時の設計・調整費用や、継続利用に伴う月額費用が発生します。
短期的には、社内で管理を行うよりコストが高くなってしまうケースもあります。
導入前には自社のIT機器台数や利用期間を踏まえて、トータルでの費用を見積もる必要があります。
社内にIT資産管理のノウハウが蓄積されにくい
LCMサービスを活用している間は、社内にIT資産管理のノウハウが蓄積されにくく、機器トラブル時の初期対応や軽微な調整など、自力で対応するスキルが育ちにくくなります。
そのため、将来的に内製運用への移行を検討していても、時間がかかる可能性があります。
LCMサービスの選定ポイント
次に、LCMサービスを選ぶ際のポイントを解説します。
セキュリティ対策の有無
まず、自社のセキュリティポリシーを満たせるかがポイントです。
端末廃棄時のゼロ消去対応や盗難への対策など、情報漏えいリスクを最小限に抑えられる仕組みが必要です。
たとえば、公的認証取得済みの消去ツールを導入しているかという点も、重要な判断材料となります。
サービス内容
LCMはワンストップで調達やキッティング、運用、廃棄までのライフサイクル全工程を一貫してカバーしていることが望ましいです。
調達では購入・レンタル・リースといった多様な方式に対応し、キッティングでマスターイメージ作成や予備機収納などまでサポートされるとなおよいです。
廃棄時にはデータ消去からリユース・リサイクルまで対応可能かチェックしましょう。
パッケージ内容が自社ニーズと一致しないと、無駄な費用や抜け漏れが発生する可能性があります。
サポート
24時間365日対応が必要か、あるいは平日昼間で十分か、自社運用と照らし合わせて選びましょう。
問い合わせ手段が電話、メール、チャットと多様であると利便性が高まります。
大規模トラブル時にはオンサイト対応やリモートによる復旧支援があることが望ましいです。
さらにSLA(サービスレベルアグリーメント)で初動対応時間や解決期限が明示されているかも重要です。
SLAとは、サービス提供者と利用者間で、提供するサービスの品質やレベルを定めた契約のことで、全国に拠点がある場合には、早くて安定した対応が求められます。
信頼性
LCMサービスの導入にあたっては、IT資産管理をしてもらうため、提供企業を信頼できるかが重要です。
たとえば、IT運用管理の専門知識を持ったスタッフや、ベンダー認定エンジニアが在籍しているかどうかは重要なポイントです。
こうした人材が対応することで、トラブル対応や設計・構築の精度が大きく向上し、安心して任せることができます。
また、導入実績の件数や、業種・規模別の具体的な事例が公開されているかも確認しておきたい点です。
さらに、サービスの継続利用率や顧客満足度といった指標も、信頼性を測るうえで有効です。
たとえば、長期契約率が高い企業は、サービス品質や対応力が継続的に評価されている証ともいえるでしょう。
中小企業の場合は、自社と同規模の企業への導入実績があるかどうかを確認することで、無理なく導入・運用できるサービスであるかの判断材料になります。
LCMサービスの活用例

大企業では、従業員数が数千人、数万人規模となることが多く、それに伴い1人1台の端末を管理するだけでも膨大な工数が発生します。
PCの選定から調達、初期設定、配布、運用中のトラブル対応やアップデート、そして廃棄時のデータ消去やリサイクルまで、各工程に対応するためには、情報システム部門に相当なリソースが必要です。
本来、戦略業務に注力すべき情シスの時間が、日常的な運用対応に割かれてしまうケースも少なくありません。
LCMサービスはすべての企業にとって有効ですが、特に導入効果が高いのは次のような企業です。
- 管理する端末が膨大な企業
- 支社などの拠点が複数ある企業
- リモート、ハイブリッドの働き方をしている企業
管理する端末が膨大な企業
まず、管理する端末数が膨大な企業では、端末ごとの運用履歴やソフトウェアのバージョン管理、障害対応の記録などが複雑化しやすくなります。
膨大な情報を人力で管理することは非効率であり、ミスや漏れが発生するリスクも高まります。
LCMサービスを活用すれば、台帳管理や定期メンテナンスなどを自動化・最適化できるため、精度と効率が大幅に向上します。
支社などの拠点が複数ある企業
全国や海外に支社・拠点を持つ企業にとっても、LCMは効果が高いです。
端末の選定基準やセキュリティポリシーを統一しながら、各拠点でのキッティングや保守対応、廃棄手続きまでを一貫して行える体制が整うことで、拠点間のIT運用品質のばらつきを防げます。
リモート、ハイブリッドの働き方をしている企業
リモートワークやハイブリッドワークを採用している企業では、端末の配布や初期設定、更新・修理・回収といった業務を物理的制約なしに行える体制が必要です。
LCMサービスを活用すれば、在宅勤務者に対してもゼロタッチでの端末展開が可能になり、セキュリティや管理品質を損なうことなく柔軟な働き方を支援できます。
(まとめ)LCMサービスで適切にIT資産を管理しつつ情シスの負担を減らそう

LCMは、IT資産の管理業務を効率化し、情シス部門の負荷を大きく軽減するだけでなく、コストの最適化やセキュリティ強化にもつながる方法です。
端末の数が多い企業や、拠点が複数ある企業、テレワークを導入している企業にとっては特に高い効果が期待できます。
サービス選定時には、自社の運用体制や課題に合ったベンダーを見極めることが重要です。
TD SYNNEXでは、PCのキッティングサービス(Autopilotゼロタッチ展開、クローニング)や使用後のリユース・リサイクルなど、機器の導入から処分までのLCMサービスをワンストップで提供しております。
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[筆者プロフィール]
佐々木
テクニカルサポート出身のITライター。Windows Server OS、NAS、UPS、生体認証、証明書管理などの製品サポートを担当。現在は記事制作だけでなく、セキュリティ企業の集客代行を行う。