分散データベースとは何か?その特徴を解説
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はじめに
データベースは、現代の情報システムにおいて不可欠な要素となりました。企業や組織は大量のデータを収集、管理、分析する必要があり、そのために信頼性の高いデータベースが必要です。分散データベースとは、データを複数のコンピュータシステムに分散して配置するデータベースのことで、可用性やパフォーマンス、グローバルなデータアクセスなどの利点があるが、一方で、複雑さやコスト、セキュリティなどの欠点があると言われています。本記事では、YugabyteDB という新しい分散データベースは複雑さやコスト、セキュリティがシンプルという特徴についてご紹介します。
データベース (RDBMS/SQL) とは?
まず、データベースとは何かを理解しましょう。データベースは情報を効率的に格納、検索、操作できるソフトウェアのことを指します。
データベースとは、大量のデータを整理して管理するためのシステムです。データベースには、商品の在庫情報や顧客の個人情報など、さまざまなデータが保存されます。
データベースを操作するためのソフトウェアがデータベース管理システム(DBMS)です。DBMSには、データの登録、更新、削除、検索などの機能を備えています。
RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)とも呼ばれる形態が一般的です。これは、データベースを表(テーブル)で管理するDBMSの一種です。表は、行(レコード)と列(フィールド)で構成されています。行はデータの単位であり、列はデータの種類を表します。
SQL(Structured Query Language)は、RDBMSを操作するためのデータベース言語です。SQLには、データの登録、更新、削除、検索などの処理をするための文が用意されています。また、一枚岩のような構造となっているので、モノリシック・データベースと呼ばれています。
具体的な例を挙げて説明すると、以下のようになります。
商品データベースでは、商品の名称、価格、在庫数などのデータを表で管理する。
顧客データベースでは、顧客の名前、住所、電話番号などのデータを表で管理する。
データベースは、さまざまなアプリケーションで利用されています。例えば、オンラインショッピングサイトでは、商品データベースを利用して商品情報を検索したり、顧客データベースを利用して顧客の注文履歴を管理したりしています。
分散データベース (NoSQL, NewSQL) とは?
分散データベースとは、複数のコンピュータにデータを分散して保存するデータベースです。従来の中央集権型のデータベースとは異なり、データの読み書き処理を複数のコンピュータで並列処理することで、大規模なデータや高負荷の処理にも対応することができます。
NoSQL は、従来の SQL データベースとは異なるアーキテクチャを持つ分散データベースです。NoSQL は、データの構造やデータの扱い方に制約が少なく、柔軟にデータの保存や処理を行うことができます。そのため、非構造化データや膨大なデータの保存や処理に適しています。
NewSQL は、NoSQL の柔軟性と SQL データベースの強力な機能を組み合わせた分散データベースです。NewSQL は、ACID トランザクションや SQL による複雑なクエリーをサポートすることで、NoSQL の弱点であるデータの一貫性や性能の課題を解決しています。
分散データベースのメリット
- 大規模なデータや高負荷の処理に対応できる
- データの可用性や耐障害性を向上できる
- コストを削減できる
分散データベースのデメリット
- 複雑な設計や運用が必要
- データの一貫性や性能に課題がある場合がある
分散データベースは、大規模なデータや高負荷の処理を必要とするシステムに適しています。例えば、ソーシャルメディア、ECサイト、ゲームなどのシステムで利用されています。
YugabyteDB の紹介(従来のデータベース/RDBMS との違い特徴)
YugabyteDBは、分散型SQLデータベースです。従来のデータベース/RDBMSと比べて、以下の3つの特徴があります。
スケーラビリティ
YugabyteDBは、ノード数を増やすことで、データ量や処理能力を拡張できます。そのため、急激なデータ量の増加にも対応できます。
可用性
YugabyteDBは、ノードに障害が発生しても、データの損失やダウンタイムを最小限に抑えることができます。これは、データの冗長化や自動フェイルオーバーなどの機能によって実現されています。
SQL互換性
YugabyteDBは、PostgreSQLとCassandraと互換性があります。そのため、PostgreSQLやCassandraで開発されたアプリケーションをそのまま利用できます。
これらの特徴により、YugabyteDBは、以下の用途に適しています。
- 大規模なデータ処理
- 24時間365日稼働が必要なシステム
- 既存のアプリケーションの移行
具体的な例としては、ソーシャルメディア、eコマース、物流、製造業などのシステムが挙げられます。
以下に、YugabyteDBの特徴を表でまとめます。
特徴 | 従来のデータベース/RDBMS | YugabyteDB |
---|---|---|
スケーラビリティ | CPUやメモリなどを増やす必要がある | ノード数を増やすだけで拡張可能 |
可用性 | 障害が発生するとデータが失われる可能性がある | 障害が発生してもデータの損失やダウンタイムを最小限に抑えられる |
SQL互換性 | 独自のSQLを使用する | PostgreSQLやCassandraと互換性がある |
【構築面】
スケーラビリティ:
分散データベースは複数のノードにデータを分散させることで、データベースの容量や処理能力を柔軟に拡張できます。これにより、大量のデータやトラフィックに対しても高いパフォーマンスを維持できます。
レプリケーション:
YugabyteDBでは、データの自動レプリケーションがサポートされています。データは複数のノードにコピーされ、障害が発生した場合でもデータの可用性が保証されます。これにより、高い耐障害性を実現できます。
これら主要特徴をもとに、モノリシック・データベースと YugabyteDB に対するクライアントからのアクセスについての比較をアニメーションで確認しましょう。
【運用面】
シンプルなクラスタ管理:
YugabyteDBは、自己管理型のクラスタを提供しています。ノードの追加や削除、データの再配置などの管理作業が簡単であり、運用の負荷を軽減します。
トランザクションのサポート:
YugabyteDBは、分散トランザクションをサポートしています。これにより、複数のデータベース操作をまとめて一貫性のある状態で実行できます。また、ACIDプロパティを満たすことでデータの整合性を保証します。
水平スケーリング:
YugabyteDBは、負荷に応じてスケールアウトやスケールインを行うことができます。これにより、運用中のデータベースのパフォーマンスやコストを最適化することができます。
分散配置したモノリシック・データベースと YugabyteDB に対する構築/運用面をアニメーションで確認しましょう。 モノリシック・データベース3段階の構築が必要です。1) Active インスタンス、2) Standby インスタンス、3) HA制御ソフトウェアインスタンスで完成です。
これはデータベース アプリケーションの運用でも同様に3段階の確認が必要となるためYugabyteDBよりも煩雑です。
分散配置したモノリシック・データベースと YugabyteDB に対するDR構成の比較をアニメーションで確認しましょう。
モノリシック・データベース3段階の構築が必要です。1) Active インスタンス、2) DR制御ソフトウェアインスタンスを含む中間サイト/インスタンス、3) Standby インスタンスで完成です。これはデータベース アプリケーションの運用でも同様に3段階の確認が必要となるためYugabyteDBよりも煩雑です。
【セキュリティ面】
データの暗号化:
YugabyteDBでは、データの暗号化がサポートされています。データが保存される際に暗号化され、データの保護を強化します。
アクセス制御:
YugabyteDBは、ロールベースのアクセス制御を提供しています。ユーザごとに異なる権限を設定することで、データへの不正アクセスを防止します。
【運用面】
バックアップとリストア:
YugabyteDBは、自動的なバックアップとリストア機能を提供しています。定期的なバックアップを作成し、データの復元や災害対策を容易にします。
【コスト面】
オープンソース:
YugabyteDBはオープンソースのデータベースであり、学習および小規模環境は無償で利用できます。これにより、初期ライセンスコストを削減できます。
大規模分散サイトやサポートが必要な場合は有償版もあります。
ハードウェアの最適化:
分散データベースは、複数のノードでデータを分散させることで、ハードウェアの利用効率を最大化します。これにより、ハードウェアコストを削減できます。お客様が普段使用しているハードウェア構成を自由に選択できます。また、ハードウェア運用が不要な SaaS 版である YugabyteDB Managed 提供もあります。
スケーラビリティによるコスト削減:
分散データベースは、スケーラビリティに優れており、必要に応じて容量や処理能力を追加できます。これにより、将来の成長に柔軟に対応できるため、コスト効率が向上します。
まとめ
以上が、分散データベース(YugabyteDB)の構築面、運用面、セキュリティ面、コスト面における利点の概要です。これらの要素により、YugabyteDBはスケーラビリティ、可用性、柔軟性、セキュリティ、コスト効率の面で優れた選択肢となります。
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[著者プロフィール]
TD SYNNEX 株式会社 | 斉藤 之雄
アドバンスドソリューション部門 ソリューションビジネス開発本部 プリセールス&エンジニアリング部 マルチクラウドチーム (Azure Solutions Architect Expert, Azure DevOps Engineer Expert)
マイコン少年時代から関東電子(TD SYNNEX前身)を利用するなどソフトウェア、ハードウェアともに昔をよく知る。コンピューター業界は1996年から異種混在環境における再販ビジネスの技術営業からキャリアを開始し、特に導入支援や教育プログラムの立ち上げは定評を有する。国内大手電気通信事業者では社内クラウドコミュニティの主要メンバーとし全国SEへ対するリスキリングプログラム推進活動を実践した。2022年4月TD SYNNEX入社以来、CoE(センターオブエクセレンス)プロダクトの日本市場展開や AI/ML (人工知能/機械学習)サービスを中心とするプリセールス活動を行っている。愛猫家、社会福祉士でもある。
TD SYNNEX 株式会社 | 金子 哲也
アドバンスドソリューション部門 ソリューションビジネス開発本部 プリセールス&エンジニアリング部 マルチクラウドチーム (Azure Solutions Architect Expert、Azure Administrator Associate)
学内情報システム管理・教育に関わったことがきっかけで、コンピュータ製品販売に魅力を感じ、1999年に外資系ITベンダーに入社。メガバンクデータセンタ駐在サポートエンジニアとして、システム安定稼働に努めた。データ肥大化にともなうストレージ機器の稼働に関心をもったことから、国内IT商社にてストレージ製品のリモートサポートを展開した。その後イベント参加がきっかけでデータ活用にはクラウドインフラが必須になると強く意識することになった。2019年6月にTD SYNNEXに入社。Azureクラウドを中心とした拡販の活動を行っている。休日は妻と子供2人で外出して過ごす。