ChatGPTでできることとは?ビジネスでの活用方法や便利な使い方を紹介
生成AIの利活用による業務効率化には、社会的な注目が集まっています。柔軟性の高い生成AIの登場により、利用方法が限定的だった従来のAIと比べあらゆる業務分野での活用が可能となったためです。
生成AIは生成物の種類により複数種類に分類されますが、特にその中でも活用シーンが幅広いと考えられるのがChatGPTをはじめとしたテキスト生成AIです。業種、業界を問わず、ビジネスパーソンに対してChatGPTをどのように活用するかが問われているといえるでしょう。
本記事では、ChatGPTでできることを説明し、業務での活用のヒントや事例をお届けします。自社での活用にお役立てください。
ChatGPTの概要
ChatGPT とは、OpenAI社の提供する生成AIサービスです。大規模言語モデル(Large Language Model、LLM)を基盤としており、チャットのような形式でAIとの対話ができます。文章(テキスト)をAIへの入力として、結果も文章として出力するためText2Textという種類に分類されます。
ChatGPTはWebサービスとして提供されており、Webブラウザやアプリから誰でも無料で利用を開始できます。生成AIの構築には機械学習というフェーズが必要ですが、Webサービスとして提供されているChatGPTについては、学習データをある時期までに限定して学習済みです。ユーザーはどんなことに答えてほしいか質問の文章(プロンプト)を考えて入力するだけで使えます。
ChatGPTのできることは幅広く、問い合わせ、文面の作成、要約、翻訳、アイデア出し、プログラミングなどを行えます。
このChatGPTができることをうまく利用することで、さまざまな業務を効率化することが可能です。
ChatGPTについてはこちらの記事 もご覧ください。
ChatGPTを使ってできること
ChatGPTを使ってできることについて、Web版を用いた実例をもとに説明します。あわせて、ChatGPTを利用する上でのコツについても記載していますので、参考にご利用ください。
質問への回答
ChatGPTは学習した内容の中から、質問に対して最も適切と考えられる回答を探して答えてくれます。
<ChatGPTへの入力>
プログラマーになるためには何を勉強すれば良いですか?200文字以内で答えてください。
<ChatGPTの回答>
プログラマーになるためには、プログラミング言語(Python、Javaなど)、データ構造とアルゴリズム、オブジェクト指向プログラミング、Web開発(HTML/CSS、JavaScript、フレームワーク)、データベース(SQL)、バージョン管理(Git)、そして実際のプロジェクトでの経験が重要です。
質問への回答の形式を指定して、必要な情報を整理して得ることも可能です。
<ChatGPTへの入力>
プログラマーとして働くために必要となる主な知識について、箇条書きで答えて下さい。
<ChatGPTの回答>
もちろんです。プログラマーとして働くために必要な主な知識は次のとおりです:
・ プログラミング言語: 1つ以上のプログラミング言語を熟知する必要があります。主要な言語にはPython、Java、C++、JavaScriptなどがあります。
・ アルゴリズムとデータ構造: 効率的なコードを書くために、基本的なアルゴリズムとデータ構造についての理解が必要です。
・ ソフトウェア開発の基礎: ソフトウェア開発のライフサイクル、バージョン管理システム(Gitなど)、テスト手法などについての知識が必要です。
・ データベース: データベースの基本的な原則とSQLを理解し、データの格納、操作、検索ができる必要があります。
・ Web 開発: Web アプリケーションの構築に必要な HTML、CSS、および JavaScript に加えて、Web フレームワーク(Django、React、Angular など)の知識が必要です。
・ コンピュータサイエンスの基礎: コンピュータの基本原則、オペレーティングシステム、ネットワーキング、セキュリティなどについての理解が必要です。
・ 問題解決能力: 複雑な問題に対処し、効果的な解決策を見つける能力が求められます。
・ コミュニケーションスキル: チームでの作業やクライアントとのコミュニケーションにおいて、明確かつ効果的に情報を伝える能力が重要です。
・ 持続的な学習: 技術の進化が速いため、新しい技術やベストプラクティスを学び続ける姿勢が必要です。
文面の作成
ビジネス上で発生するメールの文面についてもChatGPTに考えてもらうことが可能です。一般的な文例を示してくれるため、文面を調整して利用するとよいでしょう。
<ChatGPTへの入力>
請求書送付メールの文面
<ChatGPTの回答>
以下は請求書送付メールの一例です:
件名: 【請求書番号】に関するお知らせ
拝啓、お世話になっております。[会社名]の[お名前]でございます。
いつもお世話になり、ありがとうございます。この度は、下記の請求書を送付いたしますので、ご確認をお願い申し上げます。
請求書番号: [請求書番号]
請求日: [請求日付]
支払期日: [支払期日]
請求書の詳細は添付ファイルをご参照ください。何かご不明点やご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
また、弊社へのご支払い方法やお問い合わせ先については、請求書の記載をご参照ください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具、
[会社名] [お名前]
このような文面で請求書を送付することが一般的です。必要に応じて、請求書番号や請求日、支払期日などの詳細を適切に置き換えてください。
ChatGPTに入力する時に具体的な情報を指定することで、回答の文中に埋め込むこともできます。
<ChatGPTへの入力>
請求書送付メールの文面。請求書番号2024-03-24-001、支払期日2024/04/30
<ChatGPTの回答>
以下は請求書送付メールの文面の例です:
件名: 請求書送付のご案内
拝啓、お世話になっております。[会社名]の[お名前]でございます。
いつも大変お世話になっております。この度は、下記の請求書をお送りいたしますので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。
請求書番号: 2024-03-24-001
支払期日: 2024年4月30日(金)
請求書の詳細は添付ファイルをご参照ください。何かご不明点やご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
支払いがスムーズに行えるよう、ご協力をお願い申し上げます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具、
[会社名] [お名前]
このような文面で請求書送付メールを作成し、請求書の詳細を添付ファイルとして送付します。
要約
文章を要約することもできます。結果を利用しやすいよう出力形式を指定することも可能です。
<ChatGPTへの入力>
iPhoneとAndroidの仕様を比較して表で表示して下さい。
<ChatGPTの回答>
翻訳
日英、英日等の言語翻訳もChatGPTを使って行うことができます。その他、スペイン語、フランス語、ドイツ語等にも対応しています。
<ChatGPTへの入力>
下記を日本語と中国語に訳して。
It is true courage to live when it is right to live, and to die only when it is right to die.
出典:「武士道」を原文で読む (宝島社)紹介ページより
<ChatGPTの回答>
日本語:
「正しい生き方をすることができる時に生きること、そして正しい死に方をすることができる時に死ぬことが、本当の勇気です。」
中国語:
「在该活着时活着,只有在该去世时才去世,这才是真正的勇气。」
アイデア出し
一般的なアイデア、例をリストアップするなどの用途でもChatGPTは利用できます。
<ChatGPTへの入力>
ChatGPTに関する記事で記載すべき内容は?
<ChatGPTの回答>
ChatGPTに関する記事を書く際には、以下のような内容を記載すると良いでしょう。
- 概要と導入: ChatGPTが何か、OpenAIが開発した自然言語処理モデルであることを紹介します。その後、ChatGPTの用途や目的について説明します。
- 技術的な仕組み: ChatGPTの技術的な仕組みについて説明します。例えば、GPT(Generative Pre-trained Transformer)アーキテクチャを用いており、トランスフォーマーをベースとしたモデルであることなどを説明します。
- 学習データとトレーニング: ChatGPTの学習データについて説明し、そのトレーニングプロセスについて詳細に述べます。大規模なテキストコーパスを使用し、教師なし学習によってトレーニングされたことを強調します。
- 応用分野と用途: ChatGPTがどのような応用分野や用途で利用されているかを示します。例えば、チャットボット、テキスト生成、文章の要約、感情分析などが挙げられます。
- 利点と課題: ChatGPTの利点やメリットについて述べるとともに、課題や制限事項にも触れます。例えば、高い生成能力や柔軟性、多様な応用可能性がある一方で、意図しないバイアスや品質のばらつきなどが課題として挙げられます。
- 倫理的考慮事項: ChatGPTの利用に伴う倫理的な問題や懸念事項について議論します。例えば、偽情報や悪意ある利用、プライバシーの侵害などが挙げられます。
- 将来展望: ChatGPTやその他の自然言語処理モデルの将来展望について考察します。例えば、より高度な理解や対話能力の向上、さらなる応用分野の開拓などが期待されます。
- 参考文献: 使用した情報源や参考文献をリストアップします。これには、公式文書、研究論文、ニュース記事などが含まれます。
これらの要素を含めることで、読者にChatGPTに関する包括的な理解を提供することができます。
プログラミング
ChatGPTにプログラムを書いてもらうこともできます。プログラミング言語や具体的な処理を指定することで、適切なプログラムが提供されやすくなります。ただし、これらのプログラムが正確であることは保証されていません。必ず動作テストをして確認してください。
<ChatGPTへの入力例>
PythonでChatGPTのAPIにアクセスするメソッドを作成して
<ChatGPTの回答>
ChatGPTのAPIにアクセスするためのPythonメソッドを作成するには、requests
ライブラリを使用してHTTPリクエストを送信する方法があります。以下に、簡単な例を示します。
import requests
def chat_with_gpt(prompt, max_tokens=50, temperature=0.7):
endpoint = "https://api.openai.com/v1/chat/completions"
headers = {
"Content-Type": "application/json",
"Authorization": "Bearer YOUR_API_KEY" # ここにあなたのAPIキーを入力してください
}
data = {
"model": "text-davinci-002", # ChatGPTのモデル名を指定します
"messages": [
{
"role": "user",
"content": prompt
}
],
"max_tokens": max_tokens,
"temperature": temperature
}
response = requests.post(endpoint, json=data, headers=headers)
if response.status_code == 200:
return response.json()["choices"][0]["message"]["content"]
else:
return "エラーが発生しました: {}".format(response.text)
使用例
prompt = “今日の天気は?”
response = chat_with_gpt(prompt)
print(“ChatGPTの応答:”, response)
上記のコードでは、chat_with_gpt
という名前の関数を定義し、指定したプロンプトに基づいてChatGPT APIにリクエストを送信しています。必要な情報(APIキー、モデル名、プロンプトなど)を適切に設定してください。また、エラーハンドリングなどの追加の機能を実装することもできます。
音声入力や画像での入力にも対応し始めている
ここまでの例では、テキストによる入力でのChatGPTの利用について紹介しましたが、さらなる拡張として音声入力や画像での入力などにも対応しつつあります。
2024年3月24日時点で、ChatGPTのスマホアプリ版は音声での入力に対応しています。何か手元で作業しながらChatGPTを利用したい場合などには有力な手段となります。また、OpenAI社が提供するものではありませんが、ブラウザの拡張機能などを用いることでも音声による入出力を利用することが可能です。
画像を用いた入力については、GPT-4Vで可能になっていますが、こちらは有料のプランです。
なお、ChatGPTは2024年3月25日時点では画像や動画の出力には直接的に対応していません。ただし、OpenAI社の提供する画像生成モデル「DALL-E3」などに向けたプロンプト作成などには活用できます。
ChatGPTの業務での活用シーン
ChatGPTはその柔軟性の高さから、業務のさまざまなシーンで活用可能です。具体的な例を紹介します。
顧客へのメールの文面のベースを作成
ChatGPTを使って顧客とのメールの文面を作成することもできます。例えば、打ち合わせの日程調整メールを作成する場合、ビジネスメールの体裁はChatGPTが整えてくれるので、利用者は日程を調整するだけでOKです。
社内業務のサポート
社内の業務についてChatGPTに学習を行わせ、ChatGPTにあらゆる業務の手順や手続きの仕方をサポートさせる利用方法もあります。「経費申請の手続き手順は?」「XX部門への作業依頼書の書き方は?」といった業務のルールを自動的に応答してくれる仕組みとして利用できます。
企画・提案時のアイデア出し
企画や提案を作成するときのアイデア出しにもChatGPTは利用できます。一般例や社会的な規範などをChatGPTにあげさせることで、業務の効率化が図れます。例えば、販促キャンペーンを考える場合に「販促キャンペーンのアイデア」をあげさせ、一般例をカバーして比較検討に用いることができます。
FAQやマニュアル作成の効率化
カスタマーサポートなどの窓口業務では、よく聞かれる質問と回答などが存在する場合があります。これらをリストアップして、FAQとしてまとめる際にもChatGPTが活用できます。また、ChatGPT上に過去の質問例を蓄積して、回答のサポートに利用することも可能です。
ChatGPTの利用事例
国内の企業や組織におけるChatGPTなどの生成AIの利用事例を紹介します。いずれも自社内、組織内での活用事例です。
伊藤忠商事
大手商社の伊藤忠商事では、2023年7月より全社員4200名に向けて生成AIの本格的な利用を展開しています。2023年7月以前には「禁止はしていないが、通達は出していた」状態で、今回の本格展開ではAzure OpenAI Serviceによりセキュアな環境を確保し、社内で利用するビジネスチャットのUIと連携して生成AIを利用できるようになりました。
まずは議事録の作成や文章の要約、一部の調査業務などに利用し、生成AIに慣れ親しみ、今後の業務システムとの連携やビジネス展開に役立てる想定がなされています。
参照:伊藤忠商事が「社内版ChatGPT」を4200人に導入開始…“商社が使う生成AI”への期待
大和証券
大和証券株式会社は、2023年4月にChatGPTを導入したと報道発表しました。早期に全社員9000名に対して提供を展開する予定としています。Azure OpenAI Serviceを利用することで情報が外部に漏れないセキュアな環境を確保しており、すべての業務での利用を想定しています。
生成AIは大きな可能性を秘めており、迅速に活用開始することで新たな利用方法を模索する狙いがあるとのことです。
参照:大和証券、対話型AIの「ChatGPT」を導入し全社員約9,000人を対象に利用を開始
ベネッセ
教育大手のベネッセホールディングスは2023年4月よりほぼ全社員にあたる1万5000人を対象に自社専用の社内チャットAI「BenesseChat(旧BenesseGPT)」の提供を開始しました。Microsoft社の「Azure OpenAI Service」を利用してセキュアな基盤を用意し、GPT-3.5などを組み込んだChatGPT相当のサービスだとしています。
利用開始後2カ月の時点でとった社内アンケートでは、4割の社員が「ほぼ毎日使っている」と回答しており、広く普及していることがわかります。具体的には、下記の業務などで利用中です。
・議事録の要約
・ブレインストーミング
・メールのひな型作り
・契約書面の抜け穴探し
・アンケート結果の分析
・前任者が残したドキュメントから必要な情報を探す
参考記事:「自社版ChatGPT」をグループ全社導入 約1万5000人で2カ月使った手応えは? ベネッセに聞いた
横須賀市
ChatGPTの活用は自治体にも広まっています。神奈川県横須賀市は2023年4月にChatGPTの全庁的な活用実証実験を開始することを発表しました。
利用中のビジネスチャットにChatGPTのAPI連携を行うことにより、全職員が利用可能な環境を提供しています。具体的な活用の例として、下記の用途があげられています。
・文章作成
・文章の要約
・誤字脱字のチェック
・アイデア創出
ChatGPTへの入力情報が二次利用されない方式で使用し、また機密情報や個人情報は取り扱わない運用とすることでセキュリティの確保を図っています。
参照:自治体初!横須賀市役所でChatGPTの全庁的な活用実証を開始(2023年4月18日)
ChatGPT を利用する際に知っておかなくてはいけないこと
ChatGPTは利便性が高く、柔軟性も高いことからさまざまな用途での利用が期待できます。しかし、利用にあたっては注意点も存在しています。特に情報の取り扱い、外部への漏洩に関しては、事前に理解しておく必要があります。
必ずしも正しい回答をするとは限らない
ChatGPTなどの生成AIは、学習した内容から適正と思われる答えを出す仕組みです。この学習においては、学習の不足や学習元データの誤りなどが起こり得ます。
また、正しい・正しくないといった二元論で回答できない問題では、一般的な見解などを述べるか、情報に偏りが生じバイアスのかかった回答をする可能性があります。
情報セキュリティに関するリスク
ChatGPTへの質問(プロンプト)は当然ながらChatGPTに送信されます。これらのプロンプトに機密情報、個人情報が含まれる場合も、その内容をChatGPTが覚え、他者に開示する可能性があることには注意が必要です。専用の基盤を用意しないWeb版などのオープンなサービスの利用では、この問題が常に存在します。
情報漏洩や情報流出といった重大なセキュリティインシデントに繋がるリスクのため、所属組織のセキュリティポリシーに従った利用を意識しなければなりません。
ChatGPT (生成AI)によるコンテンツの著作権侵害の可能性
2024年3月時点で日本国内では、生成AIが学習をすることや、生成AIを利用することには違法性はないとされています。しかし、生成AIのアウトプットは著作権侵害をしている可能性があり、生成AIのアウトプットを利用する場合には十分な注意が必要です。
また、生成AIなどのAI活用については日本国内でも法整備の検討、調査などが行われている段階です。大幅に法的な扱いが変わることもあり得ることから、今後もこの分野に関しての情報をチェックしながらの利用が推奨されます。
ChatGPTの利用に潜むリスクとは
前項の注意点でも記載した通り、ChatGPTの利用にはリスクも存在しています。すでにChatGPTを利用していることによる情報の流出・漏洩などのインシデントが実際に存在しているため、リスク込みでの利用検討を行うことが重要です。
入力情報はサービスに送られている
広く一般向けにWebサービスとして提供されているChatGPTへの質問(プロンプトへの入力内容)はその仕組み上、ChatGPTおよび運営するOpenAI社にインターネットを経由して送信されます。質問内容に個人情報や機密情報などの重要な情報が含まれている場合には、ChatGPTおよびOpenAI社に情報を渡すことになることを知っておかなければなりません。
また、同様にChatGPTでは、質問に含まれる情報が他者への回答に利用される可能性があることもリスクに含まれます。
アカウント流出による情報漏洩
ChatGPTでの質問内容には利用者の情報が含まれており、サイバー犯罪などに利用できると考えている悪意あるユーザーが存在することを裏付ける事例も発生しています。
シンガポールのセキュリティ企業Group-IBによる2023年6月の報告※では、ChatGPTのアカウント情報10万件以上がダークウェブ市場で取り扱われていることが発表されました。これらの情報はインフォスティーラーと呼ばれるマルウェアにより収集されたとみられます。
※出典:日経クロステック
利用者のリテラシーが問われる
ChatGPTを企業で利用する場合には、利用者となる従業員のリテラシーも高めておく必要があります。
韓国のサムスンでは、従業員がChatGPTに入力した内容が他者に開示される可能性を認識しておらず、プロンプトに機密情報を入力してしまった情報流出事例が報じられています。エンジニアにより社内機密のソースコードがChatGPTに入力されたとされていますが、情報の拡散具合などについては不明です。
これによりサムスンは社内での生成AIツールの利用を禁止することを社内に通知する事態となっています。
企業でChatGPTを安全に利用するためのポイント
企業や組織内でChatGPTを利用する際、安全性を確保することが必須となります。本項では、ChatGPTを安全に利用するためのポイントを説明します。
外部への情報流出に考慮した基盤を用意する
企業や組織でChatGPTを利用する場合の最大のリスクが情報流出・漏洩です。
リスクでも紹介した通り、一般に公開されているWeb版のChatGPTはWebに接続できるあらゆるユーザーが利用する可能性があり、他者の質問に答えるための学習にプロンプトへの入力内容が利用されます。プロンプトの情報をChatGPTに覚えさせない設定も存在しますが過信はできません。
安全性を十分に確保するためには、「Azure OpenAI Service」などを利用して自社専用の基盤を用意することが一つの手段となります。コストは必要ですが、外部への情報流出のリスクを抑えることができるメリットは非常に大きいです。
利用ガイドラインの策定
組織内でのChatGPTの利用を許可する場合、従業員全員がChatGPTを利用する可能性が生まれます。この場合、すべての従業員がセキュリティを確保しながらChatGPTを利用できる必要があります。ITリテラシーが高い従業員ばかりであれば教育にも苦労しなくてすむかもしれませんが、そうとは限らない場合も多いでしょう。
全従業員が一定のセキュリティを守り、組織としてのガバナンスを行うためには、利用ガイドラインなどのルールを作ることも方法の一つです。機密情報や個人情報の定義などから改めて見直し、利用範囲を明確にすることでトラブルのリスクを下げることが可能です。
一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)の提供する「生成AI利用のガイドライン 」のひな型を活用することで効率的にガイドラインを策定できるためご活用ください。
企業で生成AIを利用するならAzure OpenAI Service
Azure OpenAI Serviceとは、Microsoft社が提供するクラウドサービス基盤「Microsoft Azure」上で、OpenAI社が開発しChatGPTで使われている大規模言語モデル「GPT-4」や、画像生成モデル「DALL-E」などを利用できるソリューションです。
ChatGPTよりも認証や保護の機能が充実しており、質問で入力したデータも外部に利用されることはありません。稼働率99.9%をSLAで保証しており、業務での利用にも耐えうる可用性も確保しています。Azureカスタマーサポートを利用できる点もメリットとなります。
Azure OpenAI Serviceを利用することにより、セキュアに生成AI技術を利用できる環境を得ることが可能です。企業での生成AI利用に適しています。
Azure OpenAI Service についてはこちらもご覧ください。
ChatGPTはさまざまな業務で活用することが可能
生成AIサービスChatGPTでは、質問への回答による業務のサポート、文面の作成、要約、翻訳、アイデア出し、プログラミングなどのテキスト出力をAIとの対話により得ることができます。幅広い業種・業界でさまざまな業務に利用することが可能です。例えば、各種文面のベース作り、企画のアイデア出しなどに利用し、業務効率化による工数削減などを見込むことが可能です。
ただし、ChatGPTの利用にはリスクも伴います。安全性を確保しながらChatGPTのメリットを得るためには、対策が必要です。企業や組織で生成AIを利用する場合には、Azure OpenAI Serviceなどでセキュリティを確保するとよいでしょう。
TD SYNNEXではAzure OpenAI Serviceの導入に関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
【ライタープロフィール】
コウヤマヒロシ
ライター兼ITエンジニア。メーカー系SIerで10年以上勤務し、その後フリーランスへ。プログラミングからプロジェクトマネジメントまでの経験あり。セキュリティ対策、IT職種解説、技術紹介など広くIT関連について記事作成を行っている。