生産性向上
セキュリティ

Carbon Black App Control導入で製造工場の
セキュリティ強化と運用工数削減を両立

セイコーエプソン株式会社

導入プロダクト

Carbon Black App Control

業種製造業・メーカー
事業内容オフィス・ホーム向けおよび商業・産業用プリンターを中核に、プロジェクター、水晶・半導体デバイス、産業用ロボット、ウオッチなどの事業を展開
設立1942年
従業員数連結74,619名/単体12,311名(2026年3月31日現在)
生産性向上
セキュリティ
ネットワーク/セキュリティ

オフィス・ホーム向けおよび商業・産業用プリンターを中核に、プロジェクター、水晶・半導体デバイス、産業用ロボット、ウオッチなど多岐にわたる製品やサービスをグローバルに展開するセイコーエプソン株式会社。

近年、多くの企業が高度化するサイバー攻撃への対策を経営の最優先課題の一つとして掲げる中で、同社もまた例外ではない。特に世界各地に広がる製造工場のセキュリティ確保は、事業継続に直結する。
同社では、工場環境における安全かつ効率的なセキュリティ対策を実現するため、Carbon Black App Controlを導入している。

そこで今回は、Carbon Black App Control導入以前の課題から導入プロセス、運用方法、得られた効果について、セイコーエプソン株式会社 経営管理・DX本部 情報セキュリティ統括センターの北原 健 氏、小瀬 雅子 氏、吉川 陽一 氏、髙橋 拓也 氏にお話を伺った。

製品を導入した理由

課題

解決策・成果

工場特有の多様な環境が抱えていたセキュリティ面の課題

―― まずは、工場のセキュリティにおいてどのような課題があったのか、詳しくお聞かせください。

小瀬様:きっかけは、長年工場で利用してきた従来型のアンチウイルス製品がメーカーサポート終了を迎えるタイミングでした。しかし、単に最新版に入れ替えればいいという話ではなく、工場特有の根深い問題がありました。

最大の課題は、工場の製造ラインを制御するために多様なOSが現役で稼働していたことです。一般的なオフィス環境ならOSのアップデートは当然ですが、工場の制御用PCは特定のハードウェアや専用ソフトを動かすためだけに最適化されている。つまりOSを変えることは、製造ラインそのものの動作保証を失うことを意味します。しかし、世の中のセキュリティ製品を調べると、多くがそのような環境をサポート対象外としていました。

北原様:もう一つ、OSの問題に加えて、運用上の業務負荷にも課題がありました。次々に出てくる新たな脅威に対応するには、ウイルス定義ファイルの更新が必須です。しかし、工場内の端末はインターネットから隔離されているため、定義ファイルを更新するには担当者が一台ずつ手作業でアップデートをかけなければなりません。

―― 一台ずつ手作業ですか。それは膨大な工数がかかりますね。

小瀬様:そうですね。ある工場では約700台のPCがありましたが、1台15分ほどかけて更新作業をして回ると、すべて完了するまでに丸1週間かかっていました。それなのに、ようやく全台終わったと思ったら、また新しい定義ファイルの更新をしなければならないという状況で……。更新作業に時間をかけてしまうと、必然的に防御の空白期間が生まれてしまいます。この点にも強い危機感がありました。

北原様:また、誤検知や過検知の問題も工場の製造ラインへの影響を考えると看過できないポイントです。製品によっては工場に導入されている特殊な制御プログラムを未知の挙動として過剰に検知し、製造ラインを止めてしまうリスクがあると考えていました。もしそうなれば、その損失額は膨大なものになりかねません。

このような背景から「工場の多様な環境に対応できる」「運用工数を削減できる」「製造ラインを止めない」といった課題を同時にクリアできるEDR製品の選定を進めましたが、当時は選択肢も限られており、なかなか要件を満たしきれず……。

そんな中で唯一、課題を解決できそうと思えたのがCarbon Black App Control(以下、App Control)でした。インターネット環境のあるオフィスではCarbon Black EDRを先行して導入していましたが、インターネットに接続できない工場にはApp Controlを導入することになりました。

セイコーエプソン株式会社 経営管理・DX本部
情報セキュリティ統括センター

北原 健 氏

製造ラインを止めない。現場の懸念を払拭するための海外工場での導入検証

―― 従来と異なるセキュリティ製品を工場へ導入するには、相当なハードルがあったと推察します。どのようにして現場の理解を得たのでしょうか。

小瀬様:正直なところ、初めは現場からの抵抗感があったのは事実です。製造現場はどうしても変化を避けたがる傾向にありますので。そこで私たちはApp Controlの機能を活用して、着実に安全を証明しながら進む3段階の導入ステップを現場に提示しました。

―― そのステップについて、詳しく教えてください。

小瀬様:まずは第1ステップとして「インストールのみのモード」を使いました。ここではソフトを入れるだけで、一切の検知や遮断を行いません。目的は、ソフトを入れたせいでPCに負荷がかからないかを証明することです。工場のPCのリソース消費が少ないことを、実際に使ってみて示しました。

第2ステップは「検知のみのモード」です。実際のスキャンは行いますが、たとえ不審なファイルを見つけてもブロックはしません。「このプログラムはマリシャス(悪意がある)と判定されましたよ」と管理者へ通知を出すだけです。

この第2ステップが重要でしたね。不審なファイルとして検知されても、工場の稼働に必要なものはホワイトリストに追加すれば、製造ラインを止めずに済むという説明を丁寧に行いました。最後の第3ステップで、ようやく実害のあるものだけを止める「ブロックモード」へ移行する流れを示したことで、誤検知や過検知のリスクが低いことを理解してもらいやすかったと感じます。

―― これらの導入検証は、海外の工場で実施したと伺いました。 

北原様:そうですね。これは製造拠点の多くが海外にあるためです。私たちはグループ全体を統制する立場にありますが、現地の協力なしにはグローバルなセキュリティは完成しません。だからこそ、海外の主要工場で先行して評価を行いました。実際に運用する現場で「これなら工場の稼働を邪魔せずに守ってくれる」という実感を先に持ってもらった形です。 

同様の製品の中には「怪しければ即ブロック」という防御に重きを置いた製品もありました。しかしApp Controlなら、モニターしながら慎重にチューニングできる。製造ラインを止めないために試行錯誤できる柔軟性が、海外の製造拠点での安心感を醸成する大きな要因となったと思います。

セイコーエプソン株式会社 経営管理・DX本部
情報セキュリティ統括センター

小瀬 雅子 氏

運用負荷を最小化する“ブラックリスト的”な運用によって課題を解決

―― App Control導入後、運用において工夫されている点はありますか。

小瀬様:App Controlは本来、ホワイトリスト方式(許可したプログラム以外は動かさない)の製品です。しかし、実際の工場では使っているプログラムを頻繁に入れ替えたりするので、過去にさまざまなセキュリティ製品を検討する中でもホワイトリストの運用は難易度が高いと感じていました。

そこで自社の環境に最適な運用方法について社内で議論を重ねた結果、発想を転換してApp Controlをブラックリスト的に使うことにしたのです。

―― 具体的にはどういうことでしょうか。

北原様:App Controlが持つ、レピュテーション情報を活用しています。データベースを照会し、「明らかに悪意がある」と判定されているファイルだけを自動的に止める設定にしています。一方で、工場の稼働に必要なプログラムや、まだ評価が定まっていないグレーなものについては、いきなり止めずにモニターに留めるという方法ですね。

いわば、薄くセンサーを張るようなイメージです。ホワイトリストの運用で究極の安全を目指すのではなく、まずは致命的なリスクだけを確実に摘み取るという現実的な方法を採用しています。

現在に至るまでApp Controlは約20拠点6,000台弱のPCに導入していますが、安定した運用が続いている状態です。しっかりセキュリティを確保しながらも、導入前の課題であった定義ファイル更新のための膨大な手作業は完全になくなっていますし、誤検知によって製造ラインが止まるといった事態は発生していません。

小瀬様:また、以前は工場内の端末に関して得られる情報が限定的で、ブラックボックス化していました。現在ではApp Controlを導入したことで、各端末のOSバージョン、CPU、メモリ、インストールされているソフト、ファイルのハッシュ値までが可視化できるようになっています。

例えば、ある端末で不審な動きがあった際、ハッシュ値などの多様な情報を使って素早く調査することが可能になりました。

ITとOTの境界の監視強化、SOCとの連携 ―― 今後の展望とは

―― 現在はSOCとも連携されているそうですね。 

髙橋様:数年前からSOCでの監視体制を構築しています。IT領域に関してはかなり高度な監視ができるようになってきましたが、一方で工場のOT領域はまだ完全にはカバーできていません。

現在はITとOTを分離していますが、今後はその境界の監視をさらに強化し、OT領域もSOCの監視対象に含めていきたいと考えています。オペレーションも自動化を進め、初動対応までは手をかけずに行える状態を目指しているところです。

吉川様:App Controlも、これまで優先順位の関係で導入を保留していた未導入の端末へ拡大していきたい考えです。工場のPCすべてに一度に導入すると製造オペレーションにも影響することもあり、リスクベースで優先度を付けて導入してきましたが、昨今の脅威の拡大などを見ると、よりセキュリティ強化を行わなければならないという意識が強まっています。

―― 製品メーカーやTD SYNNEXへのご要望があれば、教えてください。 

小瀬様:メーカーさんには「古いバージョンのサポートを長く続けてほしい」と強くお願いしたいですね。工場のPCは、一度ラインに組み込むとソフトウェアのバージョンを上げるだけでも大変な手間とリスクが伴います。最新版への更新を強いるのではなく、古い環境でも使い続けられる、あるいはバージョンアップなしでも守り続けられるサポート体制を提供していただけるととても助かります。

海外メーカー製品の導入においては、やはり英語でのコミュニケーションによる行き違いに苦戦するケースもありましたが、TD SYNNEXさんがサポートに入ってくださってからはコミュニケーションが格段に取りやすくなったと感じています。

北原様:日本ならではの困りごとや課題感などを、メーカーさんにフィードバックする橋渡し的な役割にもますます期待しています。

―― 最後に、App Controlを活用した工場のセキュリティ対策を検討中の企業へ、アドバイスをお願いします。

北原様:App Control はPCのリソースを消費しないのでスペックの低いOSであっても動作に影響を与えることがなく、パフォーマンスがよいという点は強調しておきたいですね。これは工場のセキュリティ対策として非常にメリットが大きいと思います。

小瀬様:App Controlのようなホワイトリスト方式の製品を工場に導入するとなると、「運用が大変そう」というイメージを持たれるかもしれません。しかし私たちがブラックリスト的な活用で十分な効果を得ているように、製品のポテンシャルをそれぞれの現場に合わせて使いこなすという視点を持てば、きっと課題解決に役立つ使い方が見つかるのではないでしょうか。

左:セイコーエプソン株式会社 経営管理・DX本部
情報セキュリティ統括センター

髙橋 拓也 氏

右:セイコーエプソン株式会社 経営管理・DX本部
情報セキュリティ統括センター

吉川 陽一 氏

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