【法人向け】パソコンやIT周辺機器の廃棄処分方法は?ITADも解説
IT資産管理の一環として、パソコンなどのIT周辺機器の廃棄処分は非常に重要です。パソコンも長期使用により劣化するため、いずれ処分しなければならない時がきますが、法人が所有しているパソコンには機密情報が多く含まれていることもあるため、処分に際しては様々なルールが定められています。
この記事では、IT周辺機器の適切な廃棄処分方法について、ITAD(IT Asset Disposition)も含めて詳しく説明します。
法人がパソコンを廃棄する際のルール
法人が自社で所有するパソコンを処分する場合、法令で以下のルールが定められています。なお、コンシューマ―向けモデルのパソコンであっても、法人が所有したものを廃棄する場合は対象となる点には注意が必要です。
産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度に沿って処理する
まず、法人が事業で使用したパソコンは、廃棄物処理法に基づき「産業廃棄物」として扱われるため、法人は、自己の責任で適切にパソコンを処理する義務があります。
一般家庭がパソコンを処分する場合と異なり、自治体に処分を委託することができないため、基本的には、産業廃棄物処理業者やメーカー、リサイクル業者などに委託することになります(各業者の特徴などについては後述)。
そして、上記のような外部の業者にパソコンの処分を委託する場合、法人は、産業廃棄物管理票(マニフェスト)という専用の伝票を交付することが義務付けられています。産業廃棄物管理票は、法人が、産業廃棄物が適正に処理されていることを確認するための仕組みであり、5年間保存しておかなければならないため、注意しましょう。
リサイクル(再資源化)が義務付けられている
また、法人のパソコンは、資源有効利用促進法に基づいて、「指定再資源化製品」としても扱われるため、メーカーが回収してリサイクルすることが義務付けられています。
なお、一般家庭用のパソコンは、小型家電リサイクル法の適用対象となり、一部の家電量販店などでもパソコンの回収が可能であるのに対して、法人のパソコンは小型家電リサイクル法の対象にあたらず、メーカーに適切に引き渡す必要があるため、注意しましょう。
法人所有のパソコンを廃棄する方法
法人が所有する使用済みとなったパソコンの廃棄は、メーカーや産業廃棄物処理業者、リサイクル業者などに依頼することになります。そこで以下では、各業者の特徴や注意点について解説します。
メーカーに依頼する
メーカー(もしくは、代行する一般社団法人パソコン3R推進協会)に依頼する場合
【特徴】
- メーカーには回収とリサイクルが義務づけられているため、製造メーカーの責任の下に回収や再資源化を行ってくれる
【注意点】
- データの消去は自分で行う必要がある※
- パソコンメーカーによって回収できる製品が限定される
※メーカーでは不要となったパソコン、サーバーなどのデータを消去のうえで買い取るサービスを行っている場合もあります。処分予定のパソコンが買取対象かどうか、メーカーに問い合わせてみるとよいでしょう。
産業廃棄物処理業者に依頼する
【特徴】
- 廃棄物処理法等の法令に基づき、適切な廃棄処分を行うことが目的
- 複数のメーカーのパソコンや周辺機器もまとめて廃棄することができることが多く、効率的である
【注意点】
- 対応範囲や料金に差がある
- 技術面やセキュリティ面で業者によって信頼性が大きく異なるため、情報漏洩対策も含め、慎重に判断する必要がある
リサイクル業者に依頼する
【特徴】
- パソコンの再利用や部品の再資源化行うことを重視
- 再利用により環境への負荷を減らすことができる
- 複数のメーカーのパソコンをまとめて廃棄できる
【注意点】
- 技術やセキュリティ面で業者によって信頼性が大きく異なるため、情報漏洩対策も含め、慎重に判断する必要がある
法人所有のパソコンを廃棄する時の注意点
法人所有のパソコンには機密情報が含まれていることが多いため、廃棄する際には、特に以下の4点には注意が必要です。
パソコン内のデータの完全な消去
まず、最も重要なのはパソコン内のデータを完全に消去することです。データ漏洩を防ぐためには、専門のデータ消去ソフトを使用してハードディスクを完全に初期化することが推奨されます。
もしデータ消去ソフトで十分な安全性が確保できない場合には、ハードディスクを物理的に破壊する方法も検討すべきでしょう。これにより、機密情報が外部に漏れるリスクを最小限に抑えることができます。
資産管理シールの剥離・資産台帳の更新
次に、パソコンに貼られている資産管理シールなどを剥がすことが重要です。法人のパソコンには企業のロゴや資産管理シールなどが貼られているケースが多いですが、どの企業で使用されていたのかという情報だけでも、情報漏洩のリスクは高まります。
また、廃棄したパソコンの情報は、資産台帳から速やかに削除し、棚卸などの際に混乱が生じないように注意しましょう。
廃棄時のルールの確認と遵守
さらに、前述したような廃棄時には関連する法的規制を確認し、遵守しましょう。日本では「資源有効利用促進法」や「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」制度など、廃棄物に関する法律や規制が存在します。
自社の内部規定やポリシーなどと照らし合わせて、事前に廃棄の流れを確認しておきましょう。
廃棄方法の選定
最後に、パソコンの廃棄方法を選定する際には、料金だけでなく、データ消去の可否や手段などもしっかりと確認し、悪質な業者を避けることが重要です。
前述のとおり、パソコンの処理に関しての責任は廃棄を依頼する法人側にあるため、廃棄方法についても慎重に判断することが重要です。
IT資産の適正処分を意味する「ITAD」とは?
ITAD(読み:アイタッド、Information Technology Asset Dispositionの略称)とは、IT資産の適正処分、ないしは、そのようなサービスを提供する事業者の総称です。
ITADの取り組みが普及することで、コンプライアンスの遵守や環境保護につながると考えられており、特に以下の3点が重要とされています。
コンプライアンスとガバナンス
日本におけるIT資産の処分に関する法律は、情報管理に関するもの(個人情報保護法など)と環境保護に関するもの(廃棄物処理法など)の大きく2つに分けることができます。
まずは、IT資産の処分を依頼する側とされる側がこれらの法律を遵守し、コンプライアンスとカバナンスを徹底することがITADの推進には不可欠です。
情報管理セキュリティ及びサスティナビリティ
IT資産の処分には、運搬・保管・データ消去などの過程で様々な業者が関係するため、適切な情報管理と環境への配慮が求められます。そのため、ITADの推進においては、情報セキュリティや環境ポリシーの策定やそれに応じた組織体制の整備が重要です。
ROI(投下資本利益率)
ITADでは、ROI(投下資本利益率)、つまり、投下した資本に対してどれだけの利益が出るかという点も重要視されています。リセールバリューだけでなく、処分や廃棄が必要な場合には、あらかじめそれらの費用も念頭に置いた投資判断を行うことで、より効果的にITADを推進できるという考えです。
TD SYNNEXのIT機器買取サービス
TD SYNNEXでは、ITADに準拠したIT機器の買取サービスを実施しており、企業や官公庁が使用したパソコン等の再利用・再資源化が可能です。
買取対象はパソコンだけでなく、タブレットPC、スマートフォン、サーバー、ネットワーク機器など多岐にわたり、また、データ消去はNIST800-88 Rev.1推奨方式(米国国立標準技術研究所で定められた消去方法)に基づき、確実かつ安全に行われます。
買取査定は無料なので、まずは以下のURLからお問い合わせください。
IT資産は正しく廃棄処分して、資源を有効に活用しましょう
IT資産管理の一環として、IT機器の廃棄処分は、企業にとってとても重要な課題です。法人が事業で使用したパソコンを廃棄する場合には、データ保護と環境保護の観点から、法律にしたがって適切に処理する必要があり、また、近年では、持続可能な社会の実現に向けてITADという概念も提唱されています。
適切な廃棄方法を選択することは、無用な法的リスクを回避できるだけでなく、資源の有効活用にもつながることから、IT機器の廃棄処分は、信頼できる業者にお願いしましょう。
【著者プロフィール】
河瀬季/かわせ・とき
モノリス法律事務所 代表弁護士
小3でプログラミングを始め、19歳よりIT事業を開始。
ベンチャー経営を経て、東京大学法科大学院に入学し、弁護士に。
モノリス法律事務所を設立し、ITへの知見を活かして、IT・ベンチャー企業を中心に累計1,075社をクライアントとしている。