
SaaSの開発費用は1千万円以上!?安く開発するコツや費用目安を紹介
SaaS開発費用は規模や機能によって大きく異なり、数百万円から数億円まで幅広い投資が必要となります。これからSaaSビジネスを立ち上げる企業担当者にとって、開発費用は大きな課題です。
この記事では、開発方法別のSaaS開発費用、開発後にかかるコスト、費用を抑えてSaaS開発するコツをまとめています。既存のソフトウェアをSaaS化する際の費用についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
SaaSの開発費用は作成方法によって異なる
SaaSの開発方法は大きく分けて2つあります。1つはフルスクラッチでの開発、もう1つはノーコードツールを使用した開発です。
それぞれに特徴があり、選択する方法によって開発費用は大きく変わってきます。
フルスクラッチで作成する方法
フルスクラッチでの開発は、要件定義から設計、実装まですべてを一から行う方法です。この方法では、自社のニーズに完全にマッチしたSaaSを開発できます。なお、開発には専門のエンジニアチームが必要で、プロジェクトマネージャー、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、デザイナーなど、複数の専門家の協力が不可欠です。
特に近年は、クラウドネイティブな開発アプローチが主流となっています。これは、マイクロサービスアーキテクチャやコンテナ技術を活用し、クラウド環境に最適化された設計を行う手法です。クラウドネイティブ開発により、スケーラビリティの確保や運用コストの最適化、継続的なサービス展開が可能となります。
なお、開発期間は通常数ヶ月から1年間で、期間に伴い人件費も高額になります。
一方で、フルスクラッチ開発はカスタマイズ自由度も高く、複雑な業務フローにも対応できる点が大きなメリットです。また、独自のユーザーインターフェースを実現でき、他社との差別化も図れます。
ノーコードツールを使用する方法
ノーコードツールを使用した開発は、プログラミングの知識がなくても、視覚的な操作でアプリケーションを作成できる方法です。代表的なツールとしてkintoneがあり、ドラッグ&ドロップの操作で業務アプリケーションを構築できます。
ノーコード開発の最大のメリットは、開発期間の短縮とコストの削減です。専門的な技術者がいなくても、業務に詳しい担当者が直接システムを構築できます。
ただし、プラットフォームが提供する機能の範囲内でしか開発できず、複雑な処理や独自のUIの実装には制限がある点に注意しましょう。
SaaSの開発費用目安

SaaSの開発費用のほとんどが人件費であり、開発期間が長いものほど開発費用は高くなります。
ここでは目安として、システム開発会社Walkersが提示する開発コストの相場を参照して説明します。
フルスクラッチで開発する場合の費用目安
フルスクラッチでSaaSを開発する場合の費用目安は以下のとおりです。
初期費用 | 700万〜1,500万円 |
運用費用 | 4万〜20万円/月額 |
なお、SaaSに持たせる機能の複雑さによっても開発費用や開発期間は異なります。
機能の複雑さ | 開発費用の目安 | 開発期間の目安 |
最低限の機能のみを実装したSaaS | 300万〜500万円 | 2〜5ヶ月 |
基本的な機能を実装したSaaS | 500万〜1,400万円 | 5〜8ヶ月 |
複雑な機能を実装させたSaaS | 1,400万〜2,800万円 | 8ヶ月〜10ヶ月 |
複雑な機能や処理実行機能を持たせたSaaS | 2,800万〜数億円 | 10ヶ月以上 |
【参照】【シミュレーション付き】SaaS開発費用の相場まとめ【2024年最新版】 | Walkersメディア
基幹システムレベルの機能を実装させたSaaSは10億円以上かかることもあるため、あくまで目安として捉えておきましょう。
ノーコードツールで開発する場合の費用目安
ノーコードツールでSaaSを開発する場合の開発費用は250万〜600万円程度が目安で、運用コストも月額5万円程度と比較的安価です。
機能の複雑さ | 開発費用の目安 | 開発期間の目安 |
最低限の機能のみを実装したSaaS | 50万〜150万円 | 1〜2ヶ月 |
基本的な機能を実装したSaaS | 150万〜350万円 | 2〜3ヶ月 |
複雑な機能を実装させたSaaS | 350万〜650万円 | 3〜7ヶ月 |
複雑な機能や処理実行機能を持たせたSaaS | 非推奨 | 非推奨 |
【参照】【シミュレーション付き】SaaS開発費用の相場まとめ【2024年最新版】 | Walkersメディア
なお、複雑な機能や並行した処理を実装する場合はノーコードツールでの開発はおすすめできません。
複雑なシステムを作りたいならフルスクラッチでの開発が必要です。
費用面と実装させたい機能のバランスを考慮して、開発方法を選択しましょう。
SaaSの開発後にかかる費用

SaaSの開発が完了した後も、様々な運用コストが継続的に発生します。これらの費用を事前に把握し、適切な予算計画を立てましょう。
アプリの運営費用
サーバー費用やインフラ維持費など、基本的な運営費用が必要です。ユーザー数によって必要なリソースは変動し、それに応じて費用も変化します。
リリース初期 | フルスクラッチ開発:2万〜5万円 ノーコード開発:1万〜2万円 |
ユーザー数10万人以内 | 月額5万〜10万円 |
ユーザー数10万人以上 | 月額10万〜30万円 |
【参照】【シミュレーション付き】SaaS開発費用の相場まとめ【2024年最新版】 | Walkersメディア
追加機能の開発
SaaSのリリース後にそのまま放置していると、ユーザー離れの原因となります。SaaS市場はライバルも多く、日々操作性がよく機能が充実したソフトウェアがリリースされているためです。競合への優位性確保、またユーザーの利便性向上のためにも追加機能開発は必須です。
追加機能を開発する際はもちろん追加の開発費用が発生します。追加する機能によって費用は異なりますが、目安として100万円以上かかる場合が多いでしょう。
集客
優れたSaaSを開発しても、ユーザーに認知され、利用してもらうための施策が必要です。広告費用や営業活動にかかる経費など、集客のための予算も検討しておきましょう。
SaaS開発でのコストを回収して黒字にするにはどの程度の顧客が必要かを計算し、そのうえで集客の方法を選んで集客費用の明確を立てるようにしましょう。
リリース
特にモバイル対応のSaaSを開発する場合、各プラットフォームへの対応が必要です。
iOS・Androidのストア登録料やアプリ内課金の手数料なども考慮に入れる必要があります。
Apple Store | 年間99$(約14,850円 ※2024年12月5日時点) 【参照】メンバーシップの選択 – サポート – Apple Developer サービス手数料売上高の30% |
GooglePlay | 初回:25$(約3,750円 ※2024年12月5日時点) サービス手数料:売上高の15%(年間収益が100万$までの場合) |
さらに重要な点として、アプリ内課金を実装する場合は、各プラットフォームに対して売上の15〜30%の手数料を支払う必要があります。そのため、価格設定の段階でこれらの手数料も考慮に入れた利益計算をしておきましょう。
カスタマーサービスの人件費
SaaSでは、サービスの品質維持のためにカスタマーサポートは必要不可欠な要素です。以下のような対応ができる体制を整えておきましょう。
● 機能や使い方に関する問い合わせ対応
● 技術的なトラブルシューティング
● ユーザーからのフィードバック収集と分析
● システムアップデート時の告知と説明
● カスタマイズや追加機能のリクエスト対応
特にSaaSは解約を阻止する意味でも、迅速かつ質の高いサポート体制が必要です。カスタマーサポート担当者の人数はユーザー数や問い合わせ数に合わせて変動しますが、サービス初期から適切な人員を用意しておく必要があります。
既存ソフトウェアをSaaS化する場合

既存ソフトウェアをSaaS化する場合の費用は、アプローチによって変動します。
SaaS化のアプローチとしては、大きく 「リフト&シフト(最小限の移行)」 と 「モダナイゼーション(クラウド最適化)」 があります。
まず、オンプレミスで動作するアプリケーションを クラウドのIaaS環境に移行する(リフト&シフト) ことで、クラウド上での動作を実現します。
その後、マルチテナント対応やスケーラビリティ強化などの最適化(モダナイゼーション) を行い、クラウド上でより使いやすく、柔軟に利用できる仕組みに作り変えます。

リフト(マイグレーション)は、既存のソフトウェアの性能や要件を変更せずに、そのままクラウド環境へ移行する手法です。システムの基本的な構造や機能を維持したまま移行できるため、比較的リスクが低く、短期間での展開が可能です。
一方、シフト(モダナイゼーション)は、クラウドネイティブの技術を活用してアプリケーションを現代化するアプローチです。マイクロサービスアーキテクチャの採用やコンテナ技術の活用など、クラウド環境に最適化した構造へと改変していきます。
この方法では初期の開発コストは高くなりますが、長期的には運用効率の向上やスケーラビリティを確保できる点がメリットです。
そしてこれらの手法を組み合わせた「リフト&シフト」では、まず既存システムをクラウド基盤に移行(リフト)し、その後段階的にクラウドネイティブ化(シフト)を進めていきます。
初期投資を抑えながらも、計画的なモダナイゼーションを実現できるため、移行リスクとコストを抑えながらのSaaS化が可能です。
以下は、既存のソフトウェアをSaaS化する際に、クラウドネイティブで開発した場合と、リフト&シフトで移行した場合の費用感・所要期間・人員を比較した一例です。
<一般的なソフトウェアをSaaS化する場合の比較>
※クラウドテクノロジープロバイダーのデンタルシステムズ株式会社による算出
クラウドネイティブ | リフト&シフト | |
開発期間 | 半年~1年以上 | リフト:1日程度 シフト:段階的に実施 |
費用 | 1,000万円以上 | シフト開始前まではクラウド費用のみ |
必要な人員 | 10名以上 | 2〜3名 |
【参照】kit.ASP
上記のように、リフト&シフト方式では、リフト後に段階的にアプリケーションの更改を実施するため、コストを抑えながらクラウド移行の準備期間を確保することが可能になります。
なお、TD SYNNEXのSaaS化支援サービス「ISV Solution Factory」では、既存ソフトウェアにおけるオンプレミス環境のアセスメントや、リフト&シフトの支援を提供しています。
貴社ソフトウェアのリフト&シフトに必要な期間やおおよその費用感をお知りになりたい際は、こちらのページからお気軽にお問い合わせください。
SaaSの開発費用を抑えるコツ

SaaS開発費用を効率的に管理し、抑制するためのポイントをご紹介します。
シンプルなアプリの場合はノーコードツールを検討する
単一機能または基本的機能のみを実装したSaaSを開発する場合は、ノーコードツールも検討しましょう。ノーコードツールでの開発であれば費用を大幅に削減できるだけでなく、開発期間も大幅に短縮することができます。
また、IT専門家がいない組織でも開発しやすく、かつ業務に精通した人員が直接アプリケーション開発に携わることができるため、業務フローに則したアプリケーションを開発することができます。
オフショア開発を試す
近年の日本国内におけるIT人材不足を背景に、オフショア開発が注目を集めています。特にベトナムをはじめとする東南アジア諸国は物価が安く、開発費用を抑えられる点が魅力です。
また、技術力の高い若手エンジニアが多く、品質の高い開発サービスが利用できる点もメリットです。
補助金を活用する
SaaS開発においては、複数の補助金を活用することで開発コストを大幅に削減できる可能性があります。主な補助金には以下のようなものがあります。
補助金名称 | 特徴 |
ものづくり補助金 | 革新的なプロダクトや事業を創出する事業者に対しての補助金 |
新事業進出補助金 | 2025年より公募開始される中小企業の新事業創出、構造転換のための補助金 |
小規模事業者持続化補助金 | 中小企業や個人事業主の事業発展のための補助金 |
IT導入補助金 | 指定のITツールを導入する場合に利用できる補助金 |
それぞれの補助金において申請条件や日程が異なるため、詳細は公式ホームページより確認し、当てはまる場合は補助金を申請すると良いでしょう。
開発する機能を限定する
開発コストを効率的に管理するためには、機能の優先順位付けが重要です。
システムの複雑さは開発期間に影響し、開発が長期化すれば費用も増加していきます。そのため、サービスの本質的な価値を提供するために必要不可欠な機能を見極め、段階的な開発計画を立てることが重要です。
例えば、初期リリースでは必須機能に絞り、その後のユーザーフィードバックを基に機能を拡充していくなど段階的な開発も検討しましょう。
既存ソフトウェアのSaaS化なら『TD SYNNEX ISV SOLUTION FACTORY』

既存ソフトウェアのSaaS化を検討している場合は、『TD SYNNEX ISV SOLUTION FACTORY』がおすすめです。
『TD SYNNEX ISV SOLUTION FACTORY』を活用することで、開発コストや負担を最小限に抑えながら、既存ソフトウェアをSaaS化を実現することができます。
TDS MigrateによるSaaS化を支援

TDS Migrateは、オンプレミス環境からクラウド化への移行をサポートします。まずは既存ソフトウェアの現状を評価し、クラウド移行計画を策定、実施します。『TD SYNNEX ISV SOLUTION FACTORY』では様々なパブリッククラウドプロバイダーの取り扱いがあり、より効率的かつクライアントニーズに適うソリューションの提案、実施が可能です。
また、移行に伴うセキュリティ要件の定義や実装、段階的な移行プロセスの管理など移行に関わるステップを総合的に支援します。
TDS Optimize/ModernizeによるSaaSの最適化

『TD SYNNEX ISV SOLUTION FACTORY』では、単純なクラウド移行サポートだけでなく、クラウド化後の最適化支援も実施可能です。TDS Optimize/Modernizeでは、システムパフォーマンスや効率向上、セキュリティ強化、運用プロセスの改善までSaaS事業を成功させるための支援を提供します。
ISV企業がSaaSビジネスにおいて他者への優位性を獲得し、継続的に事業成長を実現できるようサポートします。
マーケティング支援機能も利用可能
『TD SYNNEX ISV SOLUTION FACTORY』は、SaaSビジネス成長に欠かせないマーケティングの支援も提供しています。事業の認知拡大やリード生成やナーチャリング、チャネル開拓など幅広い支援が可能です。
例えば、リード獲得に欠かせないウェビナーの共同開催やイベント集客や運営など、新たな顧客を獲得するための施策を実務的にサポートします。SaaSビジネスについての知見が深い『TD SYNNEX ISV SOLUTION FACTORY』なら、ターゲット設定からマーケティング施策の実行にいたるまで、ワンストップで支援が可能です。
ソフトウェアビジネスの変革をお考えの企業様は、ぜひ TD SYNNEX ISV SOLUTION FACTORYにご相談ください。経験豊富な専門家が、貴社ソフトウェアのSaaS化の実現に向けて、最適なソリューションをご提案します。
詳細な情報や具体的な支援内容についてはTD SYNNEX ISV SOLUTION FACTORY公式サイトをご覧ください。
まとめ
SaaS開発費用は開発の方法や実装する機能の複雑さなどによって変わります。フルスクラッチ開発の場合は300万〜数億円、ノーコードツールを用いる場合は50万円〜が相場です。ノーコードツールを用いた方が費用や開発期間は圧縮できますが、その分実装できる機能の複雑さやカスタマイズの自由度に差が出るため、SaaS事業の検討段階では、フルスクラッチでの開発を前提とした予算計画を立てるケースが主流です。
また、既存ソフトウェアをSaaS化するという手法であれば、1から開発する場合と比較して、費用や開発期間を抑えてSaaS事業をスタートすることができます。記事で紹介したSaaS開発費用も参考に、戦略的にSaaSビジネスの計画を立て、実行へ移しましょう。