Azure OpenAI Serviceをクラウド技術オタクが実際に触ってみた~その特徴と使い方をわかりやすく解説
皆さん、こんにちは!
OpenAI や ChatGPTは目にしない日がないくらい大人気のキーワードですね。
その一方でChatGPTから入力する内容は勝手に使われてしまうため、情報が漏洩する危険性が高く、一般企業で導入するのは時期尚早だという声もありますが実際のところはどうなのでしょうか?というお問合せも数多くいただいております。
企業でChatGPTをセキュアに利用したい、というご要望にお応えするサービスとしてMicrosoftから「Azure OpenAI Service」が提供されています。
今回はChatGPTの特徴からAzure OpenAI Service の利用を開始するまでを簡単にご紹介いたします。
最初にご利用に関する注意点です。
- 業界用語等は微調整(ファインチューニング)による精度向上策が必要です
- 特に注意書きが無い場合は2021年9月までの学習データを使用しています
- ご利用にあたっては、知的財産および法的な課題は法律の専門家に確認してください
なお、Azure OpenAI Service の利用申請方法は後述いたします。
ChatGPTについて
人工知能を使ったアプリケーションの一種で私たちが普段会話するようにプロンプトと呼ばれる入力画面を通じてチャット形式でコンピュータと会話するサービスです。これまでにもチャット形式の対話サービスは多くありましたが、ChatGPTは言葉と文脈を理解し回答を自動生成するものです。人間が普段対話するように回答するので、自然言語処理性能が高いのが特徴です。不適切生成がされないよう考慮されていますが、完全性は担保されていないのが特徴です。
そのためChatGPTといっても、OpenAI財団(General OpenAI とも呼ばれます)ChatGPTとMicrosoft ChatGPT (Bing版とAzure版)があり、トレーニングデータは両社で異なるものを採用しています。OpenAI財団ChatGPTは大量のオンライン テキストデータから学習され、Web上の記事、ブログ、ウィキペディア、公開電子書籍などが含まれます。Microsoft ChatGPTは、Microsoftが所有するテキストデータセットから学習されています。具体的な内容は非公開です。
なおOpenAI財団はAIの研究・管理・開発を行う組織で利用者のデータを新たな開発へ使用することを表明しており、主に研究者と開発者が直接利用することを想定しています。そのためサポート体制は弱く、サービスとしてSLA設定がないため企業で使用するには不向きとされています。
一方、Microsoft はサービス提供SLAが設定され、利用者のデータをChatGPTの研究開発に使用しないことを表明しており企業向けに最適なOpenAIのサービスと言えるでしょう。
Azure OpenAI Service は有効なAzure サブスクリプションを保有する利用者(利用企業)へ対して「責任あるAI使用に関するMicrosoftの原則について」の理解を義務づけています。そのためAzure OpenAI Service については個別に利用申請が必要です。
責任あるAI使用に関するMicrosoftの原則
https://www.microsoft.com/ja-jp/ai/responsible-ai?rtc=1&activetab=pivot1:primaryr6
2023年6月19日現在、利用制限は伴いますが無料で且つ日本語で利用できる ChatGPT プロンプトサービスは次の通りです。
https://www.bing.com/?cc=jp (Microsoft Bing版)
学習データは2021年9月までのものを使用しており、この時点以降の出来事や最新の情報については知りません。会話対象が専門(業界)用語を使うものや、個別のデータを参照するものはファインチューニング(微調整)と呼ばれる学習が必要ですが、無料版ではファインチューニングはご利用いただけません。
Azure OpenAI Studio を使用した Azure OpenAI GPT-3.5 turbo 使用例
例文 「TD SYNNEX株式会社でポテトチップスを購入することができますか?」
Azure OpenAI 回答例 「TD SYNNEX 株式会社は IT 製品や関連商品を取り扱っている企業であり、食品の販売は行っていません。ポテトチップスを購入する場合は、食品販売店やスーパーマーケット、オンラインストアなどを利用することをおすすめします。」
参考:Azure OpenAI Studio での開発者向けサンプルソース(コード)表示例 (Python)
ChatGPT以外のサービス (Azure OpenAI)
Azure OpenAI DALL-E (ダリ)
Azure OpenAI DALL-E (ダリ)は OpenAI財団が開発した画像生成モデルで、アディアの可視化やクリエイターに開発者などの利用を想定しています。
テキストの説明に基づいて新しい画像を生成することができます。主な特徴は次の通りです。
- 画像生成(高解像度)の柔軟性:与えられたテキストの説明に基づいて独自の画像を生成します。
- 画像の編集や変形:DALL-E は生成された画像をさらに編集や変形することも可能です。
- トレーニングデータの利用:多数の画像を用いた様々なカテゴリやスタイルの画像を生成します。
- APIとして提供:開発者は自社のアプリケーションやサービスにエンタープライズレベルで組み込むことができます。
Azure OpenAI Studio を使用したDALL0E 2 プレイグラウンド使用例
例文 「A Japanese cloud presales engineer working from home sometimes talks to cats.」
参考訳:在宅勤務をしている日本人クラウドプリセールスエンジニアは時々猫と会話します。
Azure OpenAI Codex(コーデックス)
Azure OpenAI Codex(コーデックス)は自動的にプログラミングコードを生成するAzure OpenAIサービスです。主な特徴は次の通りです。
- 自動コード生成:利用者は簡単なテキストの説明や質問を入力するだけでCodexが適切なコードを生成します。
- 複数のプログラミング言語のサポート:様々なプログラミング言語に対応しています。PythonやC#など主要なプログラミング言語に対して、コードの生成や質問への回答を行うことができます。
- インテリジェントなコード補完:Codexはコードの自動補完機能を提供します。
例として Python コード自動生成のため自然言語を英語で投入します。(日本語はブログ説明用)
# 文字列を反転する Python 関数を作成します。 この関数は、時間と空間の複雑さの観点から最適なソリューションである必要があります。
# 関数への入力例: abcd123
# 関数への出力例: 321dcba
自動コード生成結果は L.5 – L.10 に示されます。
この結果を入手するに必要な問合せトークン数は81でした。
Azure OpenAI Studio Codexで生成可能な対象:
会話から問題の解決を要約する、財務レポートからの重要なポイントの集計(抽出)、記事の要約(抽出)、製品名のアイデアの生成、メールを生成する、製品の説明(箇条書き)を生成する、リスティクル スタイルのブログを生成する、ジョブの説明を生成する、クイズを生成する、テキストの分類、意図の分類と検出、未定義のカテゴリへのクラスター化、感情を側面で分析する、テキストからエンティティを抽出する、非構造化データの解析、テキストの翻訳、SQLへの自然言語、Pythonへの自然言語(前述)、SQLクエリを説明する、質問応答、分析情報を生成する、思考推論の連鎖、チャットボット等。
Azure OpenAI Service の始め方
1) Azure 事前準備(有効なサブスクリプション開設)
すでに Microsoft Azure を利用するためのサブスクリプションアカウントはお持ちでしょうか?
お持ちでない場合、当社でも取り扱っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
お持ちの場合、Azure OpenAI アカウント申請をお願いいたします。
(アカウント申請についてご不明な点等ありましたら弊社でもサポートいたしますのでお問い合わせください。)
2) Azure OpenAI アカウント申請
Azure OpenAI へのアクセスを申請するには、https://aka.ms/oai/accessの登録フォームに入力してください。
3) Azure OpenAI GPT-4.0申請
Azure OpenAI にアクセスできる環境から登録フォームに入力してください。
Azure OpenAI Service と Azure Cognitive Services の特徴
Azure OpenAI Service は Azure AI サービスのAzure Cognitive Services カテゴリに位置するサービスです。そのため、音声認識、画像認識(識別)、言語(理解/翻訳)、意思決定支援などの利用ニーズには Azure OpenAI Service ではなく Azure Cognitive Services の利用あるいは併用が可能です。
今後の注目ポイント
Microsoft は Azure OpenAI Service の拡充計画を先ごろ開催されたBuild2023で発表しており、個人的に興味深い内容を理由とともにご紹介いたします。
Azure OpenAI Service プラグイン
Azure OpenAI Service を既存システムへ組み込む際に開発が短縮される利点があります。
(多くのプラグインが各社から提供表明が増えており、今後はプラグイン選定も必須条件となりそう)
例:PDF 読込プラグイン(PDF ファイルの格納場所やパラメーターを指定)により、大量のPDFファイル要約することができ、Azure Cognitive Search 併用による漠然としたファイル検索が実現します。
想定シナリオ:(時期と対象メーカーを思い出せなくても)「数年前 NVMe SSD が搭載されたノートPCのPDF販売資料と要約が欲しい」
操作メカニズム:Azure Cognitive Search で該当コンテンツをデータソースから抽出し、Azure OpenAI で要約し、ユーザ画面へ返答します。
導入効果:社内のあらゆるデジタルデータの利用が急速に進みます。
まとめ
今回はOpenAI、ChatGPT などのキーワードから現状どのように提供されているのか、Azure OpenAI での利用シナリオをご紹介いたしました。今後も新サービスが登場してまいりますので、いち早く皆様へご案内できるよう努めてまいります。
[著者プロフィール]
TD SYNNEX 株式会社 | 斉藤 之雄
アドバンスドソリューション部門 ソリューションビジネス開発本部 プリセールス&エンジニアリング部 マルチクラウドチーム (Azure Solutions Architect Expert, Azure DevOps Engineer Expert)
マイコン少年時代から関東電子(TD SYNNEX前身)を利用するなどソフトウェア、ハードウェアともに昔をよく知る。コンピューター業界は1996年から異種混在環境における再販ビジネスの技術営業からキャリアを開始し、特に導入支援や教育プログラムの立ち上げは定評を有する。国内大手電気通信事業者では社内クラウドコミュニティの主要メンバーとし全国SEへ対するリスキリングプログラム推進活動を実践した。2022年4月TD SYNNEX入社以来、CoE(センターオブエクセレンス)プロダクトの日本市場展開や AI/ML (人工知能/機械学習)サービスを中心とするプリセールス活動を行っている。愛猫家、社会福祉士でもある。