機械学習とは?仕組みや代表的なアルゴリズム、活用例を紹介

機械学習は、AIを実現する主要な技術として、近年大きな注目を集めている研究分野の一つです。

機械学習とは簡単にいうと、コンピュータがデータをもとに人間のように学習し、判断や予測などのタスクを行うことを可能にする技術です。

機械学習を自社のビジネスに活用したいと考えているものの、具体的に何ができるのか理解しきれていない、という方は多いのではないでしょうか。
本記事では機械学習の概要や代表的なアルゴリズム、活用事例などについてわかりやすく解説していきます。

機械学習とは

機械学習とは、AIとコンピュータ・サイエンスの一分野で、データをもとに学習し、学習した結果に基づいて判断するという知的行動を、コンピュータ(機械)に行わせる技術です。

コンピュータはデータとアルゴリズムを使用して、データの持つパターンやルールを自動で学習し、学習した結果に基づいて予測や分類、最適化などを行います。

機械学習の活用範囲は、金融、製造、小売、医療など多岐に渡っており、今やあらゆる分野に機械学習が用いられているといっても過言ではありません。

AI(人工知能)との違い

AIとはartificial intelligenceの略で、人工知能とも呼ばれます。AIは、人間の知能や行動を模したコンピューターシステムの総称です。
一方、機械学習は、AIを実現する技術の一つです。

コンピュータが特定のデータから規則性や関係性を学習し、予測や判断を行う手法となります。
つまり、AIはコンピュータが人間の知的行動を再現するもの、という広い概念であり、機械学習はその実現手段、という関係になります。

ディープラーニングとの違い

ディープラーニングとは、機械学習の手法の一つです。機械学習は与えられた学習データに基づいてルールやパターンを学習しますが、その学習方法は複数存在します。

ディープラーニングは、ニューラルネットワークと呼ばれる、人工的な脳神経回路を模倣したモデルを用いて学習させる手法がベースとなっています。
ニューラルネットワークを複数重ねて多層化することで、より高度な学習を可能としたのがディープラーニングです。

ディープラーニングは、大量のデータから複雑なパターンを自動で見つけ出し、学習することができるという点において優れた手法です。

機械学習が重要視される背景

なぜ近年、機械学習はこれほど注目されるようになったのでしょうか。機械学習が重要視されている背景について説明していきます。

膨大なデータの処理が可能だから

機械学習は、従来のコンピュータでは解析できなかった大量のデータ(ビッグデータ)を扱うことを可能にしました。
その結果、これまで解析が難しかった購買データやSNSの投稿データなどのビッグデータを分析し、精度の高い予測結果や深い洞察を得ることができるようになりました。

機械学習を活用することで、企業は膨大なデータから新たな顧客ニーズや市場動向を把握し、ビジネスチャンスにつなげることができるようになったのです。

生産性向上が期待できるから

機械学習を活用したデータの自動解析や意思決定サポートによって、業務効率化を促進し、生産性を向上させることができます。
例えば、機械学習によって大量のデータを分析し、販売戦略の立案や企業リソースの最適化などを行うことで、迅速かつ的確な意思決定が可能となります。

また、従来これらの業務に割いていた人的リソースを他の業務に充てることができるため、企業全体の生産性の向上も期待できます。

機械学習の仕組み

機械学習は基本的に「学習データ」と呼ばれるデータをもとにモデルを訓練し、データ内のルールやパターンを学習します。
ここでは機械学習の代表的な学習方法である、教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3つについて説明していきます。

教師あり学習

教師あり学習とは、学習データに「正解」のラベルを付与して学習させる方法です。コンピュータは学習データから、入力と出力の関係を学習します。

例えば、複数の果物の写真を学習データとして与える際に、それがりんごなのかバナナなのか、という「正解」のラベルを一緒に与えるということです。

この場合、コンピュータは入力データにどのような特徴があったらりんごなのか、という入力と出力の関係を学習します。
教師あり学習は、主にデータの識別や、株価予測などの回帰を行う手法です。

教師なし学習

教師なし学習とは、正解のラベルが付与されていない学習データを与えて学習させる方法です。コンピュータは、学習データからデータ同士のパターンやルールなどの関係性を自動で導き、学習します。

教師なし学習は、主にデータのグルーピングや異常検知などに用いられ、人間がデータを見ただけでは気づかない類似性や法則性を導き、予測や分類を行います。

強化学習

強化学習とは、「エージェント」と呼ばれる学習主体が、制御対象となる「環境」と相互作用し、その結果に基づいて報酬を得ることで、報酬を最大化するように学習させる方法です。

エージェントは行動を選択し、その結果に対して報酬を受け取ることで、報酬を最大化するように学習します。行動の結果として得られる報酬をもとにエージェントは試行錯誤を繰り返し、知能を向上させていきます。

強化学習は、将棋やチェスをはじめとしたゲームやエレベータ制御、自動運転などさまざまな分野に活用されている手法です。
強化学習によって、コンピュータは人間を超える知能を身につける可能性があるといわれています。

機械学習の代表的なアルゴリズム

機械学習のアルゴリズムとは、データからパターンやルールを見つけ出し、予測や分類などを行うための手順や規則を定めたものです。
機械学習の代表的なアルゴリズムを紹介していきます。

決定木・ランダムフォレスト

決定木・ランダムフォレストは、分析したデータをもとに、自動的に樹形図を作成するアルゴリズムです。

各ノード(節点、頂点)には条件が設定されており、条件に応じて次のノードへと分岐していきます。最終的なノードは、データの分類や予測の結果となります。

決定木・ランダムフォレストは、樹形図によって分析モデルの解釈が容易であることが利点です。
顧客の属性や購買履歴などのデータから購買行動を予測するなど、マーケテイングや統計の分野で活用されています。

ニアレストネイバー法

ニアレストネイバー法とは、シンプルで直感的な機械学習アルゴリズムです。
ニアレストネイバー法は、新たに与えられたデータについて、これまで学習したデータの中から最も類似したデータを見つけて、新たなデータの分類や値を推測します。

類似性の高いデータを複数のグループに分類するクラスタリングなどに用いられ、実装が簡単で理解しやすい点がメリットです。

一方で、大量のデータを扱う場合には計算コストが高くなるおそれがあるため、利用する際には注意が必要です。

ニュートラルネットワーク

ニューラルネットワークは、人間の脳を模倣した機械学習のアルゴリズムです。
ニューラルネットワークでは、ニューロンと呼ばれる人工的な神経細胞を繋ぎ合わせて、複雑なネットワークを構築します。

画像認識や自然言語処理など、複雑なパターン認識やデータ分析に対して強みを持ちますが、訓練には大量のデータと計算を行うためのマシンリソースが必要となります。

サポートベクターマシン(SVM)

サポートベクターマシンとは、分類や回帰で利用される教師あり学習の一種です。
与えられたデータについて、最大マージンと呼ばれる境界で2つに分類するアルゴリズムで、2つのクラスを区別する境界線を見つけることに優れています。

少量のデータでも高い精度で学習をすることができますが、パラメータの選択などの設定には専門知識が必要となるほか、計算コストも高くなる場合があります。

k近傍法

k近傍法は教師あり学習のアルゴリズムの一種で、分類および回帰を行います。

k近傍法では、未知のデータが与えられると、学習したデータから類似性の高いk個の近傍点を見つけ、近傍点の多数決や平均値によってデータの分類や値の推測を行います。
k近傍法は実装が比較的容易であり、複雑な分類境界を扱うこともできます。

デメリットとしては、データの次元が増えると計算量が増大し、分析や予測が難しくなることが挙げられます。

k平均法

k平均法は、教師なし学習のアルゴリズムで、データの類似性に基づいてクラスタ分類を行います。

具体的には、与えられたデータについて、各クラスタの中心点(セントロイド)を計算し、データをその中心点に近いクラスタに振り分けます。
k平均法は、アルゴリズムがシンプルで理解しやすく、比較的高速に動作します。

一方で、適切なk値を見つけることが容易でないケースもあり、必ずしも最適なクラスタリング結果になるとは限らない点に注意が必要です。

機械学習によってできること

機械学習を活用すると、実際にどのような分析を行うことができるのでしょうか。
機械学習によってできることについて、以下に説明していきます。

回帰分析

回帰分析は、予測したい値をひとつ、または複数の変数を用いて予測する、機械学習の代表的な手法です。
回帰分析によって、株価予測や販売予測などのように、過去のデータに基づいた将来の値を予測することが可能となります。

二項分類

二項分類は、データを2種類の属性に分類する機械学習の手法です。
例えば、男性/女性やデータの正常/異常など、データを2つのカテゴリに分類する際に有効な方法となります。

自然言語処理

自然言語処理は、人間の会話や文章などの自然な言語を解析し、正確な意味を理解できるようにする手法です。
文章の分析、音声認識、チャットボットなど、人間の言語を扱うさまざまなタスクに活用されています。

自然言語処理の分野は近年特に技術の発展がめざましく、正確性は今後さらに改善されていくことが見込まれています。

次元削減

次元削減は、多次元のデータについて、データの特徴を残しつつデータを要約、圧縮する手法です。
例えば、身長と体重の値を持つデータの次元を削減し、体格という値のみで特徴を表すのが次元削減です。

多次元データの次元を削減し、低次元で表現することで、データの容量を圧縮し処理速度を上げられるだけでなく、データの大まかな傾向や特徴を把握しやすいという利点もあります。

クラスタリング

クラスタリングは、似た特徴を持つデータをグループ(クラスター)に分類する手法です。
データの類似性に基づいてコンピュータが自動的にグループ化を行うことが特徴です。

クラスタリングによって、大量のデータから有用な情報を抽出したり、効率的なグルーピングを行うことが可能となります。

異常検知

異常検知は、大量のデータから他とは異なる異常なデータを検出する手法です。
異常なデータは、機器の故障や、クレジットカードなどの不正使用など、さまざまな問題の兆候となります。

異常検知は、用途によって「故障検知」や「不正使用検知」などと呼ばれます。

物体検出

物体検出は、取り込まれた画像の中から物体の位置や個数、種類などを特定する技術です。
画像認識の一種であり、主に外観検査などに利用されています。

近年では機械学習技術の発展により、高い精度での物体検出が可能になっており、物体だけでなく、顔の検出などにも活用されつつあります。

機械学習の活用事例

ここまで、機械学習の種類やアルゴリズムについて解説してきましたが、機械学習は実際にどのようなシーンで利用されているのでしょうか。
機械学習の具体的な活用事例を紹介していきます。

大規模言語モデル

大規模言語モデルは、膨大なテキストデータとディープランニングの技術を用いて構築された、革新的な言語モデルです。

言語モデルとは、人間の作成した膨大な文章を学習させ、文脈を理解したり、自然なテキストデータを出力させたりする技術のことです。

近年めざましい発展を遂げている対話型AIの多くは、大規模言語モデルによって実現されています。

スパムや不正の検知

機械学習は、スパムメールや不正行為の検知にも利用されています。
スパムメール判定は、過去のスパムメールをもとに学習し、スパムメールと判定されたメールが届くと自動で迷惑メールフォルダに分類する機能などに用いられます。

また、過去の不正行為のデータにもとづき、不正な取引などを検知することも可能となります。

チャットボットによる問い合わせ対応

チャットボットとは、顧客からの問い合わせに会話形式で自動応対するシステムのことです。
機械学習を用いることで、コンピュータは顧客の質問を理解し、適切な回答をすることが可能となります。

チャットボットによって人件費の削減ができるだけでなく、24時間365日の対応が可能になるため、顧客満足度の向上にもつながることが期待できます。

売り上げや需要の予測

機械学習に過去数年分の売り上げ推移や顧客情報などを学習させることで、今後の売上予測や需要予測を行うことが可能となります。

これらの予測結果を、商品の仕入れや生産量の決定に利用することで、サプライチェーン全体の効率化を図ることができます。

ECでの商品レコメンド

ECサイトにおける顧客属性やサイト上の行動履歴を機械学習によって分析することで、ユーザごとに最適な商品のレコメンドを行うことができます。

精度の高いレコメンドができると、ECサイトの売上増加や、ユーザの満足度向上が見込めます。

タクシー配車の自動化

機械学習は、タクシー配車の自動化にも活用されています。

過去の配車データから需要の高い時間帯や場所を予測することで、顧客の待ち時間の短縮や、運転手の稼働の効率化が図れるため、最適なタクシー配車を実現することができます。

顔認証などの画像認識

顔認証は、人間の顔を認識し、個人の識別を行う技術です。

顔認証はスマートフォンやエントランスのロック解除など、さまざまな場面で用いられていますが、顔認証の画像認識にも機械学習が使われています。

Siriなどの音声認識

音声認識は、機械学習によって人間の音声をコンピュータが理解し、テキストデータに変換する技術です。
Siriなどの音声アシスタントや、音声入力システムなどに音声認識が活用されています。

近年はディープラーニングの技術の発展により、より精度の高い音声認識や、自然な会話が可能となっています。

機械学習を活用してビジネスに役立てよう(まとめ)

この記事で解説してきたように、機械学習の技術はさまざまな分野で活用されています。
機械学習を有効に取り入れることで、人手不足の解消や業務の生産性向上など、多くのメリットを得ることができます。

ぜひ、機械学習の仕組みや活用方法について理解し、機械学習をビジネスの現場に役立てていきましょう。

<著者プロフィール>
羽守 ゆき
慶應義塾大学を卒業後、大手IT企業に就職。システム開発、営業を経て、企業のデータ活用を支援するITコンサルタントとして10年超のキャリアを積む。官公庁、金融、メディア、メーカー、小売など携わったプロジェクトは多岐に渡る。現在もITコンサルタントに従事するかたわら、ライターとして活動中。

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