企業のITインフラは、データセンターだけでなく、工場、店舗、倉庫、支社など、さまざまな拠点へ広がっています。
一方、拠点が増えるほど、サーバーやアプリケーションの更新、障害対応、セキュリティ対策など、IT運用は複雑になります。
すべての拠点にIT担当者を配置することも容易ではなく、「限られた人員で、分散したIT環境をどう効率的に管理するか」は重要な課題です。
こうした分散環境の運用を、中央から標準化・自動化するための選択肢が、デル・テクノロジーズのDell Distributed Private Cloud(DDPC、旧Dell NativeEdge)です。
本記事では、DDPCでできることや主な活用シーン、既存仮想化基盤からの移行、導入を検討する際に確認しておきたいポイントについて解説します。
Dell Distributed Private Cloud(DDPC)とは
分散拠点を一元管理するフルスタック・ソリューション
DDPC(Dell Distributed Private Cloud)は、複数の拠点に分散したサーバー、ワークステーション、PCなどの対応Endpointを、中央のDell Automation Platformから管理できるソリューションです。
工場出荷時に準備された対応Endpointに加え、既存Dell機器や一部のサードパーティ製x86機器は、所定の要件を満たす場合に主にアプリケーション・オーケストレーション用途で利用できます。
工場の制御システム、店舗のPOSシステム、倉庫の在庫管理システムなど、これまで拠点ごとに個別運用していた環境に対して、標準化された構成と自動化された運用を適用できます。
DDPCでは、主に次のような運用を実現できます。
- 対応Endpointの安全なオンボーディング
- インフラとアプリケーションの集中管理
- ブループリントを利用したアプリケーション展開
- OS、ファームウェア、アプリケーションのライフサイクル管理
- 仮想マシンとコンテナの運用
- 複数拠点の状態、ポリシー、パフォーマンスの可視化
なぜ「分散型」なのか
複数拠点にサーバーを配置すると、拠点ごとにOSやアプリケーションの更新、障害対応、セキュリティ対策が必要になります。拠点数が増えるほど、作業のばらつきや運用負荷も大きくなります。
DDPCは、こうした分散環境の課題に対して、中央からの標準化と自動化で対応します。
現地作業を減らしながら、各拠点に同じ運用ルールを適用できるため、工場、店舗、支社、倉庫などを含む環境の効率的な運用に適しています。
Dell Automation Platformが支える統合運用
DDPCの運用を支えるのがDell Automation Platform(DAP)です。
DAPは、ポータル、カタログ、オーケストレーターを中核とする統合制御プレーンおよびオーケストレーション基盤で、検証済みブループリントをカタログから選択し、インフラやアプリケーションの展開、構成変更、ライフサイクル管理を自動化できます。
DDPC以外にもDell Private CloudやDell AI SolutionsなどでDAPが利用されますが、それぞれ対象となる環境や利用できる機能は異なります。
DDPCは、エッジや分散データセンター、SMB環境を対象としたソリューションとして位置付けられています。
- Dell Distributed Private Cloud:エッジ、分散データセンター、SMB環境向け
- Dell Private Cloud:コアデータセンターや大規模なリモート拠点向けのオープンなディスアグリゲーテッド・プライベートクラウド
- Dell AI Solutions:AIワークロード向けの検証済みソリューション
- Dell Automation Studio:カスタムBlueprintの設計や高度な自動化を支援する追加オプション
DDPCの主な活用シーン
分散拠点のインフラとアプリケーションを一元管理
DDPCは、次のような企業に適しています。
- 全国またはグローバルに工場、店舗、倉庫などを展開している企業
- 各拠点にサーバーやワークステーションを配置している企業
- 拠点ごとのIT担当者を最小限に抑えたい企業
- エッジAI、IoT、映像分析などを複数拠点へ展開したい企業
主なメリットは次のとおりです。
ゼロタッチ・オンボーディングで拠点展開を効率化
対応Endpointは、工場出荷時のセキュリティ機能と所有権バウチャーを利用して、Dell Automation Platformへ安全に登録できます。
電源とネットワークを準備したうえで、必要なネットワーク、DNS、認証などの前提条件を満たすことで、現地での複雑な初期設定を減らせます。
実際の作業範囲や現地対応の要否は、Endpoint、ネットワーク、アプリケーションの構成によって異なります。
標準化されたライフサイクル管理
OS、ファームウェア、アプリケーションの更新や構成変更を、拠点ごとに繰り返し実施するのではなく、中央のオーケストレーターから標準化して実行できます。
ブループリントによるアプリケーション展開
ブループリントには、アプリケーション設定、インフラリソース、ネットワーク設定、スクリプトなど、展開に必要な手順を定義できます。
これにより、複数の拠点へ同じ構成を再現性高く展開できます。
現場の運用負荷を軽減
現地に専門のIT担当者が常駐していない環境でも、中央から状態を確認し、標準化された手順で運用できます。
実際の作業範囲や現地対応の要否は、Endpoint、ネットワーク、アプリケーションの構成によって異なります。
小規模クラスターで仮想化と高可用性を実現
DDPCは、単一Endpointでの構成に加えて、複数Endpointによる高可用性(HA)クラスターにも対応します。
DDPC 4.2以降では、Distributed Private Cloud OS(DDPC OS)を搭載した対応Endpointと、外部ソフトウェアquorum witnessを利用して、2ノードHAクラスターを構成できます。


これらの機能により、支社、営業所、店舗、開発拠点など、従来は大規模な仮想化基盤を導入しにくかった場所にも、運用しやすい仮想化環境を展開できます。
VMware環境からの移行を検討する場合、DAP OrchestratorからVMware環境に接続し、対応条件を満たすVMをインポートできます。
VxRailを含む既存環境からの移行可否や具体的な手順は、利用中のバージョン、VM構成、ネットワーク、ストレージを確認した上で判断します。
DDPCの技術的な特徴
サプライチェーンから運用まで考慮したセキュリティ
工場出荷のDDPC対応Endpointでは、セキュリティ機能、所有権バウチャー、Secure Boot、署名済みOS、イミュータブルOS、Endpointとオーケストレーター間の相互TLS認証などを組み合わせ、ゼロタッチ・オンボーディングとゼロトラスト原則に基づく運用を支援します。
既存Dell機器やサードパーティ製機器では、同等のOS・セキュリティ機能が利用できない場合があります。
対応Endpointには、デル・テクノロジーズの製造工程で生成された所有権バウチャーが関連付けられます。
これにより、正しいEndpointであることを確認したうえで、オーケストレーターへの登録を行えます。
なお、対応する管理機能や物理インターフェースの動作は、オンボーディング前後やEndpointの構成によって異なります。
セキュリティ要件が厳しい環境では、対象モデル、OS、ネットワーク、周辺機器の構成を事前に確認することが重要です。
ゼロタッチ・オンボーディング
DDPCのEndpointは、次のような流れで運用環境へ追加できます。

DAPによる可視化と自動化
DAPでは、ポータルから資産、カタログ、ユーザー管理、オーケストレーターなどへアクセスできます。
検証済みブループリントを利用することで、複雑な手順を標準化し、インフラやアプリケーションを再現性高く展開できます。
また、DAPはSaaS型、オンプレミス接続型、オンプレミス非接続型などの導入モデルに対応します。
エアギャップ環境など、インターネット接続に制約がある環境では、導入モデルごとの要件確認が必要です。
ライセンスとハードウェア
デバイス単位のサブスクリプション
DDPCのソフトウェアはサブスクリプション形式で提供され、1年、3年、4年、5年の期間から選択できます。
料金にはソフトウェアとサポートが含まれ、変動するデバイス単位の料金が適用されます。SaaS構成では、DDPC Endpoint本体は別途購入します。
主なライセンスの考え方は次のとおりです。
- Standard:標準的なデバイス管理、単一ノードなどの構成向け
- Advanced:高可用性(HA)クラスター機能を利用する構成向け
*価格、サポート範囲、対応モデル、契約条件は、地域、構成、契約期間によって異なる場合があります。
幅広いEndpointの選択肢
DDPCは、用途や設置環境に応じて、さまざまなフォームファクターのEndpointを選択できます。
- コンパクトな拠点、キオスク、軽量な産業用途:Dell Pro Micro Plus(QBM1250)
- AI、映像分析、ワークステーション用途:Dell Precision 5860XL Tower、Precision 7960XL Tower/Rack
- 工場、屋外、通信拠点などの過酷な環境:対応モデルのPowerEdge XRシリーズ
- データセンター、支社、分散拠点:対応モデルのPowerEdge Rシリーズ、Tシリーズ
*対応モデルや構成は更新されるため、導入時には最新のDell Distributed Private Cloud Support Matrixをご確認ください。
*既存のDell機器や一部のサードパーティ製x86機器を、所定のOS要件とBrownfieldライセンスのもとで、アプリケーション・オーケストレーション用途に利用できる場合があります。ただし、工場出荷時に準備されたDDPC Endpointと同じOS・セキュリティ機能が利用できるとは限りません。
拡大するエコシステム
DDPCは、仮想化やコンテナだけでなく、AI、データ保護、外部ストレージ、ServiceNowなどのエコシステムと組み合わせて活用できます。
AIワークロード
DDPCでは、Dell Automation Platformの検証済みBlueprintを通じて、AI推論スタック、アクセラレーター、モデル提供コンポーネントなどのAIワークロードを展開できます。
対応GPU、NVIDIA AI Enterpriseなどのソフトウェア、SDK、ライセンス条件は個別に確認が必要です。
データ保護と外部ストレージ
VMのスナップショットに加え、対応構成においてPowerProtect Data ManagerへのVMバックアップを利用できます。また、PowerStoreやPowerVaultを外部ストレージとして利用できる構成もあります。
利用可能な接続方式や構成は、対象Endpointとクラスター構成に依存します。
パートナーエコシステム
ServiceNowをはじめとするサービス管理製品や、業界別のISVソリューションとの連携を検討できます。
利用可能なBlueprintや連携方式は、Dell Automation Platformのカタログおよび最新の製品資料でご確認ください。
DDPCが選ばれる理由
分散環境に適した自動化基盤
DDPCは、単にVMを動かすための仮想化ソフトウェアではありません。
分散拠点におけるインフラ、アプリケーション、セキュリティ、ライフサイクル管理を、中央から標準化・自動化するためのソリューションです。
特に次のような課題を持つ企業に適しています。
- 拠点ごとの手作業や設定差異を減らしたい
- 少人数のITチームで多数の拠点を管理したい
- 既存の仮想化環境から段階的に移行したい
- VM、コンテナ、AIアプリケーションを同じ運用基盤で扱いたい
- セキュアなサプライチェーンとゼロタッチ展開を実現したい
VMware環境からの移行を支援
VMware環境を利用している企業にとって、DDPCは分散拠点や小規模クラスターのモダナイゼーションを検討する際の選択肢になります。
VMware環境からは、DAP OrchestratorによるVMインポートなどを利用し、対象拠点やワークロード単位で段階的な移行を検討できます。ライブマイグレーション、HA、ロードバランシングは、主にDDPCクラスター内の機能として、構成やバージョンに応じて利用できます。

DDPCの導入を検討する際のポイント
このような企業におすすめです
- 工場、店舗、倉庫、支社など、複数の分散拠点を運用している
- 拠点ごとのIT管理を標準化したい
- 現地のIT担当者が限られている
- 小規模な仮想化環境に高可用性を追加したい
- VMware環境からの移行や、将来の選択肢を検討している
- エッジAI、IoT、映像分析などを複数拠点へ展開したい
デモ・検証環境で操作感を確認
DDPCは、ポータル、カタログ、オーケストレーターを利用して、構成に応じてEndpointの登録、クラスター作成、VMのインポート、アプリケーション展開などを行います。
導入を検討されるお客様には、デモやハンズオン環境を通じて、実際の運用イメージをご確認いただくことをおすすめします。
まとめ
Dell Distributed Private Cloudは、分散したインフラとアプリケーションを中央から安全かつ効率的に運用するためのフルスタック・ソリューションです。
ゼロタッチ・オンボーディング、Blueprintによる自動化、VMとコンテナの運用、HAクラスター、VMインポートを含むVMware環境からの移行支援、AIエコシステムとの連携を通じて、分散拠点の運用負荷を軽減し、将来のIT活用を支援します。
DDPCの導入検討をTD SYNNEXがサポート
DDPCの導入にあたっては、拠点数や既存環境、対象となるワークロード、ネットワーク構成などを踏まえて検討することが重要です。
TD SYNNEXでは、Dell Technologiesの認定ディストリビューターとして、パートナーの皆様に製品・技術情報を提供するとともに、導入に向けたご相談をサポートしています。
複数拠点の運用効率化、仮想化基盤の見直し、エッジAIの展開をご検討の際は、ぜひTD SYNNEXまでご相談ください。
参考資料