ハイブリッドクラウド時代における第三の選択肢
クラウドとオンプレミスのメリットを併せ持つ
ⅠTインフラの
「ハイブリッドサービス」を知る
企業によるDXの取り組みが活発化するなか、限りあるIT組織の人的リソースをITインフラの運用管理から、より戦略的なIT業務へと振り向けるべく、社内システムの基盤をパブリッククラウドへとマイグレートする動きが勢いを増しています。ただし、企業のあらゆるシステムのITインフラをクラウド化するのが正解であるとは限りません。ゆえに近年ではオンプレミスとパブリッククラウドが混在したハイブリッドクラウドの環境を構築し、運用するケースが一般化しています。そんな時代の中で、にわかに注目を集めているのが、オンプレミスとパブリッククラウドのメリットを併せ持つ「ITインフラのハイブリッドサービス」です。
4つの視点でとらえる「パブリッククラウド vs. オンプレミス」
オンプレミスとパブリッククラウドにはそれぞれメリット、デメリットがあり、ITインフラの環境としてどちらを選ぶかはインフラ上で何のシステム、あるいはデータを運用するかを勘案しながら慎重に判断しなければなりません。以下、4つの視点から、パブリッククラウドとオンプレミスのITインフラのメリット、デメリットについて確認します。
視点1 運用管理
パブリッククラウドとオンプレミスのITインフラの最大の違いは「ITインフラのリソースを自社の資産として調達して運用管理を行うかどうか」です。オンプレミス環境に導入するITインフラは、ユーザー企業が自社の資産として調達し、自己責任のもとで運用管理を行わなければならないのが通常です。一方のパブリッククラウドは、サービスプロバイダーが資産として持つITインフラをユーザーが必要な分だけ利用する方式です。ITインフラの運用管理はプロバイダーが責任をもって遂行するので、ユーザーは運用管理に人手を割く必要はありません。ただ、パブリッククラウドのITインフラは基本的に共用型です。そのため、運用管理のあり方についてユーザー固有のニーズを満たすことは難しいといえます。
視点2 パフォーマンス
オンプレミスのITインフラは、必要に応じてパフォーマンス(処理性能)を任意に高めていくことができます。一方のパブリッククラウドは通常、公衆回線であるインターネットを通じてサービスが提供されます。そのため、回線の混雑によって通信の遅延が発生したり、処理性能が低下したり、処理性能を高いレベルで一定に保つのが難しかったりすることがあります。そのため、ITインフラに対する処理性能の要件を満たすために、一定の通信性能が保証された特別な回線を通じてパブリッククラウドのITインフラと自社とを結ばなければならなくなることがあります。
視点3 セキュリティ
オンプレミスのITインフラは自社内の閉じた環境で運用管理が行えます。そのため、セキュリティレベルをコントロールしたり、自社独自のセキュリティポリシーを適用したりするのが容易なほか、業界内で順守が義務付けられている法規制やガイドラインにも対応しやすくなります。一方のパブリッククラウドでは、ITインフラレイヤのセキュリティはサービスプロバイダーによって確保され、有力プロバイダーのサービスであれば、その安全性は高いといえます。ただし、セキュリティに対するユーザー固有のニーズを満たすのはオンプレミスのITインフラよりも難しいといえます。
視点4 コスト
パブリッククラウドでは、資産としてITリソースを調達する必要がなく、必要なITリソースを調達する初期コストがオンプレミスに比べて少なくなります。また、パブリッククラウドの場合、ITインフラの運用管理に要する手間も不要になるほか、ITインフラに対する支出が「資産(投資)」ではなく「経費」として計上されます。結果として、自社のROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)が高められるメリットがあります。さらに「ITリソースを使った分だけ課金する」というパブリッククラウドの従量課金モデルには、ITコストを固定費から変動費へと変え、事業の拡縮に応じて費用を上下させられるという妥当性もあります。
第三の選択肢「ITインフラのハイブリッドサービス」とは
以上のとおり、パブリッククラウドとオンプレミスのITインフラには一長一短があり二者択一でサービスを選ぶのが困難なことがよくあります。そんな中で注目を集めているのが、オンプレミスのITインフラとパブリッククラウドの利点を併せ持った第三の選択肢「ITインフラのハイブリッドサービス」です。
これは、ベンダーが資産として有するITインフラをユーザー企業のオンプレミス環境に導入しながらも、ハードウェア単位ではなく、パブリッククラウドのように時間や重量単位でITリソースを使用可能にするサービスです。「サービスとしてのITインフラの提供」であることから、このサービスをAs a serviceモデルと呼ぶこともできます。ITインフラのハイブリッドサービスには、以下の4つのメリットがあります。
メリット 1
「運用管理」に
手間がかからない
メリット 2
自社の要求どおりの
「パフォーマンス」を
保てる
メリット 3
「セキュリティ」に関する
自社固有のニーズや
要因を満たせる
メリット 4
ITリソース調達の
初期「コスト」を小さくし、
ITインフラコストを
経費化できる
オンプレミスのITインフラをクラウドのように利用できる
主要なハイブリッドサービス
HPE GreenLake
「HPE GreenLake」は、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)が提供する『好きな場所で利用できる』『自社専有のクラウドサービス』『お客様の(クラウドファースト)戦略に対応』などの特長を持つ新たなサービスです。また、業界随一の管理ツールでエッジからパブリッククラウドまでマルチに管理可能なソリューションを提供しており、ますます複雑化するITインフラをエッジ、データセンター、コロケーション、パブリッククラウドに至るまで最適化し、シンプルにハイブリッドクラウド/マルチクラウドを導入、運用できるプラットフォームとして活用できます。
Dell APEX
「Dell APEX」は、デル・テクノロジーズが保有するストレージやサーバーなどのITリソースをユーザー企業のオンプレミス環境に設置し、従量課金で利用できるサービスです。クラウドサービスと同様の感覚で、管理コンソールを介してハードウェアとソフトウェアのプロビジョニングやスケールアップ、モニタリングなどを行うことが可能です。さらに、Dell APEXは、ITリソースをオンプレミスだけでなくパブリッククラウド環境にも展開できるという特長も有しています。
Lenovo TruScale
「Lenovo TruScale」は、レノボの製品をユーザー企業のオンプレミス環境に設置してクラウドのように利用できるサービスです。大きな特長は、課金方法や支払方法を複数のモデルから選択できる点にあります。例えば、予算どおりにITインフラのコストを計上したいユーザーに向けては「固定料金の支払い(Fixed Payment)」も可能にしています。
これらのサービスを使えば、ITインフラの設置場所こそオンプレミスとなるものの「運用管理を自社で行わなくてよい」「ITリソース導入の初期コストを小さく抑えられる」など、パブリッククラウドを使うのと同様のメリットが得られます。また、ITインフラの可用性のレベルやセキュリティレベル、稼働、定期点検・メンテナンスのスケジュールを自社でコントロールできるなど、オンプレミス環境のメリットも生かせます。これらのサービスを採用し、ITインフラの安心感と利便性を両立させてください。