マネージドKubernetesとは?メリット・デメリット、主要なサービスについて解説

複数のコンテナを複雑に連携させたアプリケーションを展開するときには、Kubernetesが便利です。しかし、Kubernetesの運用には専門スキルが必要であり、サーバー管理もコストがかかります。マネージドKubernetesは、煩雑になりがちなKubernetesの運用を軽減してくれます。本記事では、マネージドKubernetesの概要やメリット、代表的なサービスなどを解説します。

Kubanetesとは

Kubernetes(通称K8s)は、コンテナ化されたアプリケーションのデプロイメント、スケーリング、および管理を自動化するためのオープンソースシステムです。Googleによって開発され、2018年、Cloud Native Computing Foundation最初の「卒業プロジェクト(Graduated Project)」に認定されました。

Dockerは、コンテナを作成、実行するためのツールですが、複数コンテナを連動させて管理するような用途には向いていません。そういう面では、Kubernetesのようなオーケストレーションサービスは有効で、アクセスに応じたスケールアップ、スケールダウンや自動復旧など、アプリケーション運用に適した機能を多数搭載しています。

しかし、Kubernetesの運用には専門的な知識が必要で、運用者に高い技術力が求められます。そこで登場するのがクラウドベンダーによって提供されるマネージドKubernetesです。

Kubernetesについてはこちらの記事もご覧ください。
https://jp.tdsynnex.com/blog/cloud/kubernetes/

コンテナについてはこちらの記事もご覧ください。
https://jp.tdsynnex.com/blog/cloud/what-is-container-2/

マネージドKubernetesとは

マネージドKubernetesとは、クラウドで提供されているKubernetesのことです。通常、Kubernetesを構築するには以下の3つがあります。

  • オンプレミス環境のサーバー上で構築する
  • クラウドサーバー上に構築する
  • クラウドサービスとしてマネージドKubernetesを利用する

マネージドKubernetesの最大の特徴は、サーバーを管理せずにKubernetesを運用できる点にあります。サーバーを運用するにはOSやミドルウェアのアップデート、セキュリティなど多くのタスクが発生します。マネージドKubernetesならば、こういったコストを考えずに開発に専念できるでしょう。

マネージドKubernetesのメリット

マネージドKubernetesを利用するメリットはどのようなものがあるでしょうか。1つずつ見てみましょう。

  • 簡単なセットアップとデプロイメント
  • スケーラビリティと柔軟性の向上
  • セキュリティとアップデートの管理
  • 監視とログ管理の容易さ
  • コスト効率の向上
  • ドキュメンテーションとサポートの充実

簡単なセットアップとデプロイメント

マネージドKubernetesサービスを利用すると、従来は時間がかかっていたクラスターのセットアップが数クリックで完了します。たとえば、Google Kubernetes Engine (GKE)の場合、ウェブコンソール上からクラスターを簡単に作成し、ノードの数やリソースのサイズを設定できます。

また、コンテナイメージをレジストリにアップロードした後、Kubernetesのデプロイコマンドを使うだけでアプリケーションを即座にデプロイ可能です。

スケーラビリティと柔軟性の向上

マネージドKubernetesは、アプリケーションの負荷に応じて自動でノードを追加・削除するオートスケーリング機能を提供しています。たとえば、オンラインショッピングサイトがセール期間中にトラフィックの急増を検知すると、クラスターは自動的にリソースを増強して負荷に対応し、セール終了後にはリソースを削減してコストを節約できます。

セキュリティとアップデートの管理

マネージドKubernetesは、セキュリティパッチや新しい機能のアップデートを自動的に適用します。たとえば、Azure Kubernetes Service (AKS) では、Microsoftがクラスターのセキュリティを維持し、最新のKubernetesバージョンへのアップデートも自動で行われます。これにより、セキュリティの専門知識がなくても、安全な環境でアプリケーションを運用可能です。

監視とログ管理の容易さ

Amazon Elastic Kubernetes Service (EKS) などのマネージドKubernetesは、Amazon CloudWatchやAWS X-Rayのような統合監視ツールを提供します。これにより、クラスターのリソース使用状況やアプリケーションのパフォーマンスをリアルタイムで監視し、ログを分析して問題を迅速に特定できます。

コスト効率の向上

マネージドKubernetesを使用すると、必要なリソースのみを使用して課金されるため、コストを削減できます。たとえば、スタートアップ企業が開発環境を構築する際、最低限のリソースで開始し、ビジネスが成長するにつれてスケールアップすることで、初期投資を抑えながら成長フェーズに合わせた拡張が可能です。

ドキュメンテーションとサポートの充実

マネージドKubernetesサービスでは、ユーザーがKubernetesに関する疑問や課題に対応するため、初心者向けのガイドから上級者向けの高等テクニックに関する情報までを幅広く提供しています。

また、クラウドプロバイダのサポートチームは、技術的な問題や疑問にチャットやメールで対応し、クラスターの運用やトラブルシューティングに関する専門的なアドバイスを提供してくれます。

マネージドKubernetesの利用方法

マネージドKubernetesの利用方法は、クラウドプロバイダが提供するサービスを使うのが一般的です。以下に主要なサービスを紹介します。

主要なクラウドプロバイダが提供するサービスの紹介

Google Kubernetes Engine(GKE)

Google Kubernetes Engine(GKE)は、最大15,000ノードまで自動スケーリングするコンテナオーケストレーションサービスです。注目すべきは「Autopilotモード」で、ユーザーはインフラの管理や設定の心配をせずにコンテナを実行できます。また、リソース使用率を最大化しつつ運用コストを削減することも可能です。

StandardエディションとEnterpriseエディションの2種類があり、後者では複数のチームやクラスターの管理、セキュリティ、ガバナンスの機能が強化されています。開発チームはGKEを使用することでインフラの複雑さを軽減し、アプリケーションの迅速なデプロイと管理に注力できます。

Microsoft Azure Kubernetes Service (AKS)

Microsoft Azure Kubernetes Service (AKS)は、Azure DevOpsやGitHub Actionsなどのツールと連携し、コードからクラウドへのシームレスなパイプラインを構築し、アプリケーションのライフサイクル全体を簡単に管理できます。主な機能にはエンタープライズレベルのコンテナオーケストレーション、自動管理、デバッグ、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)などが含まれており、効率的な開発をサポートしてくれます。

さらにMicrosoftは、組み込みのガードレール、インターネットセキュリティベンチマーク、Azure Policy、Azure Active Directoryなどのセキュリティ機能を活用して、堅牢なアプリケーションおよびコンプライアンス構築に役立ちます。Microsoft Visual Studio や Visual Studio Code の拡張機能も提供されており、開発環境との高い親和性も特徴です。

Amazon Elastic Kubernetes Service (EKS)

Amazon Elastic Kubernetes Service(Amazon EKS)は、Kubernetesクラスターのスタート、運用、スケーリングを容易にするAWS(アマゾン ウェブ サービス)のマネージドサービスです。EKSは、EC2(Elastic Compute Cloud)、VPC(Virtual Private Cloud)、IAM(Identity and Access Management)、EBS(Elastic Block Store)など、ほかのAWSサービスとシームレスに統合されています。そのため、より柔軟で拡張性の高いアプリケーションを構築可能です。

また、運用環境にあわせて柔軟な構成を選択できるのもEKSの強みの1つです。さらに、AWSのEKS Anywhereを利用することで、オンプレミスのデータセンターでもKubernetesを運用することができ、要件に合わせたKubernetes環境を構築可能です。

マネージドKubernetesの選び方

マネージドKubernetesの導入を検討しているのであれば、すでに利用中のクラウドベンダーから選択するのが無難です。クラウドベンダーには、ログ監視やリソース管理サービスなど、複数のサービスが展開されており、組み合わせることで拡張性を高めています。よほどコスト面で制約がある、使いたい機能が特定のマネージドKubernetesにある場合を除き、利用中のクラウドベンダーを選択するほうがトータルメリットは大きいでしょう。

マネージドKubernetesを運用する際の注意点

最後に、マネージドKubernetesを運用する際の注意点を解説します。

  • マネージドサービスには制約や制限事項がある
  • クラウドベンダーによって提供するバージョンに差異がある場合がある

マネージドサービスには制約や制限事項がある

マネージドサービスは、利用者の運用コストを可能な限り削減できる一方で、サービスの設定やポリシーはクラウドベンダーが許可した範囲でしか運用できません。また、マネージドサービスはリソースに対する制限(例:APIレート制限、ノード数やポッド数の最大値など)が設けられていることが多く、大規模なアプリケーションでは性能限界に直面する恐れがあるでしょう。

クラウドベンダーによって提供するバージョンに差異がある場合がある

同じマネージドKubernetesでも、クラウドベンダーによって提供されているバージョンが異なる場合があります。クラウドベンダーごとにサポートしているKubernetesのバージョンが異なるからです。そのため、アプリケーションやシステムを設計する際、使用するKubernetesのバージョンに対して互換性があるのかを検討する必要があります。

また、クラウドベンダーごとに提供する独自ツールやAPIなどに依存すると、なかなか他のベンダーに乗り換えることが難しくなる、いわゆる「クラウドロックイン」が発生します。乗り換えによって手戻りが大量に発生するくらいなら、同じクラウドベンダーで運用を続けることになる可能性を考慮するべきでしょう。

まとめ

マネージドKubernetesなら、サーバーを管理せずにコンテナ化されたアプリケーションを運用できます。また、プロダクトの成長フェーズに合わせてスケールアップできるため、コストを最適化しながら開発に専念できます。マネージドKubernetesを提供しているクラウドベンダーはいくつかありますので、本記事を参考にしながら自社にあうサービスを検討してみてください。

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[著者プロフィール]
Y.Kuroda
MLエンジニア&Web開発者&ITライター。MLエンジニアとして働きながらとSEOの知見を活かした記事を執筆しています。ライター業務を効率化するWebサービス『MOJI-KA』を開発・運用中です。

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