Snapdragon(スナップドラゴン)は、アメリカの半導体メーカー「Qualcomm(クアルコム)」が開発しているスマートフォンやパソコン向けの高性能なCPUです。
Armとは、イギリスの企業Arm Ltd.が設計・ライセンスしているCPUの基本設計(アーキテクチャ)のことです。スマートフォンやタブレット、家電など、私たちの身の回りの多くの電子機器に使われています。
150年以上の歴史を持つ国立大学法人岡山大学は、岡山市中心部に拡がるキャンパスに10学部、7研究科、1プログラム、4研究所のほか、大学病院と附属学校園を有し、多分野での教育研究活動に邁進している。その学生と教職員約2万人の福利厚生事業を担っているのが岡山大学生協だ。組合員数は1万5,124名(令和7年4月現在)に及び、食堂やショップの運営、トラベルサービス、住まいの斡旋・管理などを主な事業とする。
岡山大学では2016年頃から新入生に対し、情報リテラシーや情報コミュニケーションにおける情報モラルの向上を目的に、パソコンやスマートフォンを実習に活用することで情報化社会に必要な知識と技術の習得を促進させている。岡山大学生協もその活動を全面的に支援してきた。岡山大学生協 ショップ部門 部長 上甲 一樹氏は、「大学の講義や学修においても個人用パソコンの持ち込みと活用を可能にする環境を整える指導方針が決まり、当生協でも2017年から学生にどのようなパソコンを販売すべきか模索を重ねてきました。
そうした中、マイクロソフト社から当時の Surface Pro をご紹介いただき検討したところ、大学の推奨仕様を満たしながらも、(価格は)十分にリーズナブルで、サポート内容も満足できるものだったため、取り扱いを開始することになりました」と振り返る。
岡山大学は2021年度の入学者から、個人用パソコン持ち込みを前提としたカリキュラムを行うノートパソコン必携化を開始。それを受け岡山大学生協でも Surface の販売強化に乗り出し、2025年度の入学者から、クアルコム社Snapdragon X CPUを搭載したArm版 Surface Pro (第11世代)を採用モデルとした。岡山大学生協パソコンサポートデスク 金田 直己氏は、「Surface Pro という2 in 1タイプのモデルはクラムシェル型ノートパソコンとタブレットの良さを兼ね備え、フルサイズのキーボードも取り外し可能なため1台で2形態の使い方ができる利便性があります。また、最新のAIを導入した Copilot+ PC としての条件も満たしたうえで、軽量さや薄さ、Snapdragon X CPUの最大メリットであるバッテリー持ちの良さなどが他のパソコンよりも優れています」と説明する。
Surface Pro を活用する上で、金田氏は特に Copilot の存在が大きいと話す。「ノートパソコン必携化以降、パソコンを使う学修では学生がこなすべき課題やタスクが急速に増えました。だからこそAIを活用すれば自身がやれることや表現できることが格段に増えていくことが実感できると思います。大学時代は時間のゆとりがあり、社会に踏み出す前の重要な準備段階でもあるので、Copilot に親しみAIの効率的な活用の仕方や注意すべきことなどを学び、自分の可能性を探る使い方を身につけてもらいたいと考えています」(金田氏)
一方、エンドユーザーである学生も Copilot や Copilot+ PC を使いこなしている。岡山大学大学院 環境生命自然科学研究科2回生 中井 拓人氏は、3年前から生成AIを使ってレポートを書くようになり、最近は修士論文に向けどのような記事や資料を参照すべきかを Copilot に相談しているという。Copilot+ PC のデバイスAI機能も日々活用しており、「私の専門は地理学で、研究を進める上で先行研究論文を大量に読む必要があり、自分が興味のあるキーワードを入れて調べていく作業を繰り返しています。
ある程度テーマが絞られたら、再び過去閲覧した論文を振り返るのですが、Copilot+ PC の専用機能であるリコールという機能を活用すれば Surface Pro 上で行った操作を自然言語で検索することができるため、履歴を見て辿るよりも効率的で扱いやすく感じます」と中井氏は話す。また、修士論文を書く際にも Copilot が大いに役立ったという。「バスの乗降者数を調べ、その傾向を視覚化する必要がありましたが、データは整理できたもののそれをうまく表現できなかったのです。Copilot に私の研究内容と目的を相談したところ、ヒートスポットという可視化する手法を提案し、Excel で集計する方法も教えてくれたので、それがヒントになり論文を進めることができました」(中井氏)
岡山大学 農学部 応用植物科学コース4回生 徳留 楓氏も、Surface Pro と Copilot が学修する上で不可欠な存在になっているという。「私の研究分野は国内でもあまり例がなく、主に英語の先行研究論文を大量に読み込まなければなりません。意味の分からない単語があると Copilot に問い合わせて読み進めていったので、あまり苦労せず研究に取り組むことができています」と徳留氏は打ち明ける。また就職活動中にも Copilot+ PC のAI機能の恩恵を感じたという。
「Copilot+ PC の機能である Windows スタジオエフェクトはWebカメラの映像やマイクの音声を改善してくれます。企業説明会や面接の際に背景を自然にぼかしたり、目線補正してくれるアイコンタクトという機能によりオンライン面接を受けられたりしたので、企業担当者に好印象を与えることができたように思います」(徳留氏)
岡山大学生協における Surface Pro の2025年度販売実績は、7月末時点で1,400台以上となった。なかでも1回生のシェア率は60%以上となり、全国の大学生協の中でも Surface の普及率はトップレベルにあるという。そのうちSnapdragon X CPUを搭載した Surface Pro (第11世代)は約1,300台で90%近くを占める。一部の学部では特殊なCADやアプリを活用している関係でArm版CPUは選択できないことを考慮すると、この利用率の高さは注目すべき値といえる。
それについて金田氏は、近年マイクロソフト社とクアルコム社がアプリケーション互換対応に尽力してくれた成果だと指摘する。
「当生協ではパソコンのスキルアップ講座を実施していますが、Arm版 Surface Pro にパソコン版LINEアプリの最新バージョンをインストールすると挙動がおかしくなるという問題が発生したことがあったのです。相談を受けたマイクロソフト社の技術支援サービスであるApp Assureチームの迅速な対応により、2週間程度で問題は解消。講義やサークルなどで活用場面が広がる前に無事間に合わせることができました。Window 11 24H2 バージョンに含まれる、Prismエミュレーターは、Qualcomm Snapdragonプロセッサ専用に最適化およびチューニングされているので、アプリ互換性の懸念は全く感じていません」と金田氏は評価する。
また、Surface Pro のメリットについて、中井氏は「4年間故障やトラブルもなく安定的に活用できています。一般のA4サイズパソコンより小型・薄型・軽量なので、参考書など満載したリュックに入れても負担にならずとても助かっています」と話す。
徳留氏も「私はグループで音楽活動を行っていてトロンボーンを担当していますが、大量の紙の楽譜を Surface に読み込ませ、キーボードを取り外して譜面台に置けるのは2 in 1タイプならではの利点です。タッチパネルで簡単に譜面をめくることもでき非常に便利です」と述べる。
そして、最後に金田氏は、大学生にとってAIのような新技術を積極的に活用することは未来への投資につながると強調する。「AIは進化の途上にありトライ・アンド・エラーは必要ですが、それを恐れて活用を見送るよりも先手を打ち試してみることで、対策や改善への経験が蓄積し、将来への貴重な知見になると思うのです。Surface は、様々な形状で利用できる柔軟性と拡張されたAIエージェントの先進性が最大の強みであり、ディスプレイの画素数も高く、インカメも高性能なので、学修のみならず就活にも有利に活用できます。そうした理由から、自分の潜在力に+αの創造力を出し切って活用ができるSnapdragon X CPU搭載 Surface を今後も岡山大学のみなさんに自信を持っておすすめしていきたいと考えています」(金田氏)